前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 前回「次の注目決算」の筆頭に挙げたゼットスケーラー(旧レポートでは「ズームスケーラー」と表記)が、米国時間9月3日引け後に2026年度第4四半期決算を発表した。前回時点の会社ガイダンス(売上高8億7,500万〜8億7,800万ドル、非GAAP EPS1.08〜1.09ドル)に対し、実績は売上高8億9,820万ドル、非GAAP EPS1.19ドルといずれも上回った。市場予想(LSEG集計)の売上高8億7,700万ドル・EPS1.09ドルも上回るサプライズとなったが、株価反応は時間外で一時+6.8%まで買われたのち伸び悩み、+1.4%程度での推移にとどまった。 出典: GlobeNewswire、StockTitan
  • 新たにシエナとルルレモンの決算が加わった。シエナは大幅増収増益にもかかわらず株価が急落し、前回のブロードコム・HPEに続き「好決算でも下落」の事例が3日連続で発生した。一方ルルレモンは、AI関連企業とは異なり実際に需要そのものが弱く、通期見通しの下方修正という従来型の「業績悪化」パターンで株価が急落した。 出典: The Motley Fool、StockTitan
  • 前回懸念された「AIサーバーの低マージン化」はシエナでも特に問題視されておらず、株価下落の主因は一過性要因(関税還付)の剥落によるわずかな粗利率低下と、既に高値圏にあった株価評価そのものにあるとされた。

昨日と同じこと(継続)

  • AI関連の設備投資・データセンター需要の強さは前回のブロードコム・HPEに続き本日も確認された。シエナの受注残は前四半期比8億ドル増の85億ドルに達し、ゼットスケーラーも生成AIの脅威対策需要を成長ドライバーとして挙げている。
  • 「好決算でも株価が上がらない、あるいは下落する」という数字と反応のねじれは、前回のブロードコム・HPEから本日のシエナへとそのまま継続している。

要因の連続性

  • 継続要因: AI関連インフラ需要の拡大は、前回のブロードコムのAI半導体売上(+221%)・HPEのクラウド&AI事業(+25.4%)に続き、本日はシエナの受注残急増(85億ドル、前四半期比+8億ドル)とゼットスケーラーのARR成長(+25%)の両方で中心的な牽引役だった。急ピッチな株価上昇による期待値の高さも継続要因で、シエナは予想を大幅に上回る決算にもかかわらず株価が急落した。
  • 新規要因: シエナでは、サプライチェーン制約(部材供給とリードタイム)が成長の主な制約になっているとの経営陣説明が新たに加わった。またルルレモンでは、関税還付という一過性要因が粗利率・EPSを押し上げる一方、既存店売上高の落ち込み(全体-9%)という本業の弱さが露呈し、AI関連企業とは無関係な消費関連の需要減速という新しい論点が加わった。
  • 解消した要因: 前回懸念されていた「AIサーバーの低マージン化」は、シエナの調整後営業利益率が22.5%(過去最高)に達したことでさらに後退した。ただしシエナのQ4ガイダンスでは粗利率が前四半期よりわずかに低下する見通しが示されており、関税還付という一過性の押し上げがなくなる分の低下であって、AI事業の構造的なマージン悪化ではないとされる。

1. 本日のハイライト

米国時間9月3日(水)に、ゼットスケーラーとルルレモンが引け後、シエナが寄り前に決算を発表した。日本時間ではいずれも9月3日夜〜9月4日にかけての発表にあたる。

企業 会計期間 売上高/EPS(実績) 予想比 株価反応
ゼットスケーラー FY2026 Q4(5〜7月) 売上8.98億ドル/非GAAP EPS1.19ドル 売上+2.4%上振れ(LSEG予想8.77億ドル)、EPS+9.2%上振れ(予想1.09ドル) 時間外一時+6.8%、その後+1.4%程度に縮小
シエナ FY2026 Q3(5〜7月) 売上16.7億ドル/調整後EPS2.11ドル 売上+1.4%上振れ(Zacks予想16.5億ドル)、EPS+21%上振れ(Zacks予想1.74ドル) 寄り前-9.1%、取引時間中に一時-9.5%、終値ベースで-10.36%
ルルレモン FY2026 Q2(8月2日締め) 売上24.1億ドル/EPS2.92ドル 売上-2.0%下振れ(コンセンサス24.6億ドル)、EPS+63%上振れ(コンセンサス1.79ドル、ただし一過性要因除くと実質未達に近い) 時間外-17.3%(100.69ドル)

出典: StockTitan、Yahoo Finance、24/7 Wall St.

2. 個別決算

ゼットスケーラー(ZS)

2026年9月3日発表の2026年度第4四半期(2026年5月1日〜7月31日)決算は、売上高8億9,820万ドル(前年同期比+25%、前年同期は約7億1,900万ドル)、非GAAP EPS1.19ドル(前年同期0.89ドル)、GAAP純損失340万ドル(前年同期は1,760万ドルの損失)。年間経常収益(ARR)は37.7億ドル(同+25%)で、StreetAccount集計の予想37.5億ドルを上回った。純新規ARRは2億4,600万ドル(同+24%)。市場予想はLSEG集計で売上高8億7,700万ドル・非GAAP EPS1.09ドルとされ、いずれも上回るサプライズとなった。 出典: GlobeNewswire、StockTitan

非GAAP営業利益率は24%と過去最高を更新(通期では23%)。フリーキャッシュフローは四半期6,080万ドル(売上高比7%)、通期では7億7,910万ドル(同23%)。今年5月に買収したセキュリティ企業Red CanaryはARRに1億4,100万ドルを追加した。非GAAP実効税率は「One Big Beautiful Bill Act」への対応で23%から21%に引き下げられた。 出典: GlobeNewswire

ガイダンスは2027年度第1四半期が売上高9.35億〜9.39億ドル(前年比約19%)、非GAAP EPS1.15〜1.16ドル。通期(FY2027)は売上高39.08億〜39.38億ドル(同16.6〜17.5%)、ARR43.96億〜44.26億ドル、非GAAP営業利益9.24億〜9.32億ドル、フリーキャッシュフロー率23.0〜23.5%と、いずれも市場予想を上回る内容だった。 出典: StockTitan

株価反応は「サプライズなのに反応が鈍い」パターンとなった。時間外取引では発表直後にピークで+6.8%まで買われる場面があったが、その後伸び悩み、180.23ドル(+1.4%程度)での取引に落ち着いた。出来高は平時の3.4倍に達した。 出典: StockTitan

シエナ(CIEN)

2026年9月3日寄り前発表の2026年度第3四半期(2026年5〜7月期)決算は、売上高16.7億ドル(前年同期比+37%)、GAAP純利益2億6,640万ドル(GAAP希薄化後EPS1.83ドル)、調整後EPS2.11ドル(同+215%)。市場予想はZacks Investment Research集計(アナリスト7〜9人平均)で売上高16.5億ドル・EPS1.74ドルとされ、売上は+1.4%、EPSは+21%上回った。調整後営業利益率は22.5%と過去最高を記録した。 出典: Yahoo Finance、StockTitan

受注残(バックログ)は前四半期比8億ドル増の85億ドルに達し、経営陣は年度末までに100億ドルを超える見通しを示した。調整後粗利率46.4%のうち約70ベーシスポイントは一過性要因である関税還付によるもので、恒常的な水準ではない点に留意が必要。 出典: Investing.com

ガイダンスは2026年度第4四半期が売上高17.5億ドル(プラスマイナス5,000万ドル)、調整後粗利率45%(プラスマイナス50bp、今期比でわずかに低下)、調整後営業利益率約20%。通期2027年度は売上高83億〜84億ドル(前年比30%以上の成長)、営業利益率25〜27%を見込む。 出典: StockTitan

株価反応は明確な「数字と反応のねじれ」となった。決算発表を受けて寄り前取引で354.16ドルから322.10ドルへ-9.1%下落。その後の通常取引でも下げが続き、米東部時間午後1時30分時点で-9.5%、終値ベースでは-10.36%まで下落した。要因は、Q4ガイダンスで粗利率がわずかに低下する見通しであること、株価が既にPER120倍程度と高水準にあり、今後5年間で年75%の増益を織り込んでいたことなどが挙げられている。 出典: The Motley Fool

ルルレモン(LULU)

2026年9月3日引け後発表の2026年度第2四半期(2026年8月2日締め、13週間)決算は、売上高24.1億ドル(前年同期比-4%、定量ベース-5%)、GAAP希薄化後EPS2.92ドル(前年同期3.10ドル)。市場コンセンサス(集計機関非開示、24/7 Wall St.集計)は売上高24.6億ドル・EPS1.79ドルとされ、売上は-2.0%の下振れ、EPSは見かけ上+63%の上振れとなったが、EPSには1株あたり0.86ドルの一過性要因(関税還付および関連受取利息、税引後)が含まれており、これを除く実質ベースでは市場予想に近い水準にとどまった。 出典: StockTitan、24/7 Wall St.

既存店売上高は全体で-9%(定量ベース-10%)と大きく落ち込み、うち米州が-12%、インターナショナルが-3%(定量ベース-6%)。粗利率は60.5%(前年同期比+200bp)だったが、このうち560bp分は関税還付1億3,450万ドルによる押し上げで、これを除けば実質的に粗利率は悪化している。 出典: StockTitan

通期見通しは大幅に下方修正され、売上高は103.5億〜105億ドル(前年比-5〜-7%、従来110億〜111.5億ドルから引き下げ)、EPSは9.48〜9.73ドル(従来10.95〜11.15ドルから引き下げ)。第3四半期の売上高見通しも22.9億〜23.2億ドル(前年比-10〜-11%)と厳しい内容だった。 出典: StockTitan

株価は時間外取引で17.3%急落し100.69ドルまで下げた。既存店売上高の減速が続いていることに加え、通期見通しの下方修正が投資家の失望を招いたとみられる。 出典: Investing.com

3. 経営陣が語ったこと

ゼットスケーラーのCEOジェイ・チョードリー氏は「AIは当社の歴史の中でも最も重要な機会の一つだ」と述べ、生成AIエージェントによる脅威への対策と、AIエージェント・モデルの安全な導入の両面で自社が独自の立場にあると強調した。 出典: GlobeNewswire

シエナのCEOゲイリー・スミス氏は「並外れた業界の需要環境」に支えられていると説明し、AI関連ワークロードの増加によりデータセンター内外での高速・低遅延の光通信ニーズが高まっていると述べた。CFOマーク・グラフ氏は、バックログ増加の主因は需要ではなく供給制約とリードタイムにあるとし、需給バランスの回復は2028年より前にはならないとの見通しを示した。 出典: Investing.com

ルルレモンの暫定共同CEO兼CFOメガン・フランク氏は「困難な環境下で慎重なアプローチを取っている」と述べ、製品強化と販売促進の両面から対応する方針を示した。暫定共同CEO兼会長のアンドレ・マエストリーニ氏は、9月に就任予定の新CEOヘイディ・オニール氏を歓迎するとコメントした。 出典: 24/7 Wall St.

4. 業界トレンド

  • AI関連インフラ投資の拡大は、前回のブロードコム・HPEに続き、シエナ(受注残85億ドル、前四半期比+8億ドル)とゼットスケーラー(ARR+25%)でも確認され、企業向けIT・通信インフラの高成長が続いている。
  • 一方で市場の目は厳しさを増している。シエナは大幅な増収増益にもかかわらず、Q4ガイダンスの粗利率がわずかに低下する見通しと、既に高水準にあった株価評価を理由に1割超下落した。ゼットスケーラーも予想を上回るサプライズを出したが、株価上昇は一時的な+6.8%から+1.4%程度まで縮小しており、「AI関連インフラ企業は完璧な決算でなければ株価が持たない」という前回来の傾向がさらに強まっている。
  • 対照的にルルレモンの決算は、AIテーマとは無関係な純粋な消費関連の需要減速を映し出した。既存店売上高が-9%と落ち込み、関税還付という一過性要因がなければ粗利率も悪化していたとみられ、企業向けAIインフラ投資の勢いと、個人消費(とくに裁量的な衣料品支出)の弱さという二極化が、同じ日の決算群からうかがえた。

5. 次の注目決算

  • オラクル(Oracle): 米国時間9月10日引け後に2027年度第1四半期(2026年6〜8月)決算を発表予定。クラウドインフラ(OCI)向けのAI関連需要と設備投資額が焦点になるとみられる。 出典: StockTitan
  • 9月前半は主要企業の決算がいったん一巡し、オラクルの発表までは比較的閑散な期間が続く見通し。AI関連インフラ投資の強さが個別企業を超えて業界横断で続くかどうか、オラクルの結果が次の試金石になる。