前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 米・イラン軍事衝突がさらに一段エスカレート(3日間で2度目の拡大局面): トランプ大統領は「大規模かつ強力な」新たな空爆をホルムズ海峡周辺のイラン標的へ実施したと表明した。これに対しイランはヨルダンの米軍基地へミサイル攻撃で報復し、クウェート・ヨルダン・バーレーンが警戒態勢を敷き迎撃にあたった。ホルムズ海峡を通過する船舶数は前週水曜の23隻から10隻へ急減しており、前回報告した「タンカーへの直接攻撃」からさらに、米軍基地への直接攻撃・報復の応酬という新たな段階に進んだ。 出典: The National、Yahoo Finance
- 金・銀が一転して急反発、2日連続の下落から切り返し: 金は前回4,328.43ドルから4,387.80ドル(+1.36%)、銀は前回64.07ドルから65.33ドル(+1.98%)へ反発した。朝方はイラン情勢の再エスカレーションを受けてドルが強含み、金は一時4,281.70ドル前後(2週間ぶり安値圏)まで下落する場面があったが、その後ドル・米長期金利の上昇が一服し、週内の米雇用統計発表を控えたポジション調整も加わって、NY市場終盤にかけて急速に切り返した。 出典: Trading Economics(金)、Yahoo Finance
- 原油の上昇ペースが大幅に鈍化、高値圏でのもみ合いへ: WTIは前回90.65ドルから90.58ドル(±0%圏)、ブレントは前回95.19ドルから95.26ドル(+0.07%)とほぼ横ばいとなり、前回の5%超の急伸から一服した。ホルムズ海峡の緊張自体は続いているが、供給不安はすでに前回までの急伸である程度価格に織り込まれたとみられる。 出典: Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)
- 天然ガスが8週間ぶり高値、LNG輸出再開が新たな支援材料に: 天然ガスは前回2.94ドルから3.00ドル(+3.29%)へ上昇した。コーパスクリスティ(Cheniere Energy)とフリーポートのLNG輸出設備がメンテナンスから復帰し、主要9基地への供給量が8月の日量17.2Bcfdから9月初旬に18.3Bcfdへ増加、猛暑継続による冷房需要の高さも支えとなった。一方で生産量は日量111.5Bcfdと過去最高水準にあり、上値は抑えられている。 出典: Trading Economics(天然ガス)
- カカオがさらに4%超下落、アイボリーコーストの生産者価格引き下げが正式確定: カカオは6,290ドル/トン(-4.28%)へ続落した。アイボリーコースト農業相ブルーノ・コネ氏は2026/27年産メインクロップの生産者価格(ファームゲート価格)を、前年の2,800CFAフラン/kgから57%引き下げた1,200CFAフラン/kgに正式設定したと発表し、前回報告した「据え置き」方針が公式に確定した。輸出港への搬入量は8月30日時点で214万トン(前年比+19%)、ICE在庫は2年ぶりの高水準にあり、供給不安の後退が続いている。 出典: Trading Economics(カカオ)
昨日と同じこと(継続)
- ホルムズ海峡の実質的な緊張状態は継続し、地政学リスクプレミアムが原油価格の下支えとして働き続けている。
- 銅は6.52ドル/ポンド(前日比+0.14%)と、8月25日につけた最高値6.7ドルからの調整持ち合いを維持。対イラン紛争の余波による硫酸供給不安と、対米関税前倒し需要が引き続き価格を支えている。
- 黒海供給網の混乱は継続しているが、本日は小麦・トウモロコシとも利益確定売りにやや押された。
要因の連続性
- 継続要因: ホルムズ海峡の地政学リスク、9月FOMC利上げ観測(66〜70%程度)とドル高、黒海供給網の混乱はいずれも前回に続き作用している。
- 新規要因: (1) ヨルダンの米軍基地へのミサイル攻撃・迎撃という、イラン・米国間の直接的な軍事応酬の新たな段階、(2) 米雇用統計発表を控えたポジション調整とドル・長期金利の伸び悩みが、金・銀の反発材料として新たに加わった、(3) コーパスクリスティ・フリーポートのLNG輸出設備の稼働再開という天然ガスの新規支援材料、(4) アイボリーコーストの2026/27年産ファームゲート価格57%引き下げの正式発表。
- 解消した要因: 前回まで2日連続で続いていた金・銀の下落基調は、本日の反発により目先は後退した(ただしFRBのタカ派観測自体が解消したわけではない)。
1. 価格サマリー(2026年9月2日(水)NY市場終値時点、日本時間では2026年9月3日早朝に相当)
| 商品 | 価格 | 前日比 |
|---|---|---|
| 金(オンス建て) | 4,387.80 USD/oz | +1.36% |
| 銀(オンス建て) | 65.33 USD/oz | +1.98% |
| WTI原油(期近) | 90.58 USD/バレル | +0.39% |
| ブレント原油(期近) | 95.26 USD/バレル | +0.64% |
| 天然ガス(ヘンリーハブ期近) | 3.00 USD/MMBtu | +3.29% |
| 小麦(シカゴ期近) | 755.75 セント/ブッシェル | -1.08% |
| トウモロコシ(シカゴ期近) | 518.50 セント/ブッシェル | -0.58% |
| 大豆(シカゴ期近) | 1,295.50 セント/ブッシェル | -0.86% |
| 砂糖(ICE期近) | 18.71 セント/ポンド | +1.91% |
出典: Trading Economics(金)、Trading Economics(銀)、Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)、Trading Economics(天然ガス)
2. 商品別動向
金・銀
金は4,387.80ドル(+1.36%)、銀は65.33ドル(+1.98%)で取引を終えた。朝方はイランへの新たな米軍空爆とイランによるヨルダンの米軍基地へのミサイル報復を受けてドルが強含み、金は一時4,281.70ドル前後(2週間ぶり安値圏、当日安値)まで下落した。しかしその後、ドル・米長期金利の上昇が一服し、週内発表の米雇用統計を控えたポジション調整も加わって急速に切り返し、当日高値は4,398.20ドルに達した。9月FOMCでの利上げ確率は66〜70%程度まで織り込まれており、地合いの重しは残る。 出典: Trading Economics(金)、Yahoo Finance
原油
WTIは90.58ドル(+0.39%)、ブレントは95.26ドル(+0.64%)とほぼ横ばいで、前回の急伸から一服した。米国はホルムズ海峡周辺のイラン標的へ「大規模かつ強力な」新たな空爆を実施したと表明し、イランはヨルダンの米軍基地へミサイルで報復、クウェート・ヨルダン・バーレーンが警戒態勢を敷いた。ホルムズ海峡を通過する船舶数は前週水曜の23隻から10隻へ急減し、供給途絶懸念は依然として根強い。Emirates NBDのダニエル・リチャーズ氏は「湾岸の海上輸送路への脅威が意識される限り、原油価格にはリスクプレミアムが乗り続ける」との見方を示した。 出典: The National
天然ガス
天然ガスは3.00ドル(+3.29%)と、約8週間ぶりの高値をつけた。コーパスクリスティ(Cheniere Energy)とフリーポートのLNG輸出設備がメンテナンスから復帰し、主要9基地への供給量が8月の日量17.2Bcfdから9月初旬に18.3Bcfdへ増加。中部から東部にかけての平年を上回る気温予報が冷房・発電向け需要を支えている一方、生産量は日量111.5Bcfdと過去最高水準にあり、上値は限定的とみられる。 出典: Trading Economics(天然ガス)
農産物
小麦は755.75セント(-1.08%)、トウモロコシは518.50セント(-0.58%)、大豆は1,295.50セント(-0.86%)といずれも小幅反落し、黒海情勢の緊張継続にもかかわらず利益確定売りがやや優勢となった。一方、砂糖は18.71セント(+1.91%)と、2025年4月以来の高値圏で堅調を維持している。カカオは6,290ドル/トン(-4.28%)へ続落し、アイボリーコーストの増産観測とファームゲート価格57%引き下げの正式発表が重しとなった。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(大豆)、Trading Economics(砂糖)、Trading Economics(カカオ)
3. 急変動の特集
本日新たに±3%超の値動きをした商品はカカオ(-4.28%)のみで、いずれも前回特集した商品のフォローとなる。
- 金・銀(前回特集のフォロー): 前回まで2日連続で下落していたが、本日は一転して急反発した(金+1.36%、銀+1.98%)。もっとも日中の値幅は大きく、朝方は地政学リスクによるドル高で2週間ぶり安値(4,281.70ドル)まで売られた後、ドル・長期金利の伸び悩みで切り返しており、方向感が定まったとは言えない。 出典: Trading Economics(金)、Yahoo Finance
- 原油(前回特集のフォロー): 前回の5%超の急伸から一服し、WTI・ブレントともほぼ横ばいで高値圏を維持した。ホルムズ海峡の緊張自体は解消しておらず、通行船舶数の急減という新たな悪材料も出ているため、供給不安が完全に後退したわけではない。 出典: The National
- カカオ(前回特集のフォロー): ガーナに続きアイボリーコーストでも供給不安の後退を示す材料が重なった。ファームゲート価格が前年の2,800CFAフラン/kgから1,200CFAフラン/kg(57%減)に正式設定されたことは、規制当局が来シーズンの安定供給を見込んでいることを示唆する。輸出港搬入量の増加・ICE在庫の積み増しと合わせ、供給不安後退の流れが続いている。 出典: Trading Economics(カカオ)
4. 強気派 vs 弱気派
原油
- 強気: Emirates NBDのダニエル・リチャーズ氏は、湾岸の海上輸送路(ホルムズ海峡)への脅威が意識され続ける限り、原油価格には「リスクプレミアムが乗り続ける」との見方を示した。Capital.comのカイル・ロッダ氏も、米・イラン間の戦闘再燃が原油価格を押し上げ、株安・世界的な国債利回り上昇を招いていると指摘している。 出典: The National
- 弱気: 米エネルギー情報局(EIA)は8月時点の月報(Short-Term Energy Outlook)で、ホルムズ海峡経由の出荷減少が当面の世界在庫を圧迫するとしつつも、2026年第3四半期のブレント平均価格を85ドルと、現在の水準より低く見込んでいる。さらに2027年には生産回復に伴い平均69ドルまで緩やかに下落すると予測しており、目先の急伸とは対照的な中期見通しを示している。 出典: EIA Short-Term Energy Outlook
金・銀
- 強気: ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、各国中央銀行による継続的な金購入が価格の構造的な下支え要因になっているとのデータを示している。本日の急反発自体も、地政学リスクの高まりに対する逃避需要の根強さを裏付ける材料といえる。 出典: FXStreet
- 弱気: FXStreetのテクニカル分析では、金のRSIは50ラインを割り込み、MACDも大きくマイナス圏(-30.53)にあるとされ、下向きの勢いが強いことを示唆している。9月FOMCでの利上げ確率が66〜70%まで織り込まれる中、金利上昇局面では上値の重さが意識されやすいとの指摘がある。 出典: FXStreet
穀物
- 強気: 黒海地域での軍事的緊張継続が小麦・トウモロコシの供給懸念を下支えしており、砂糖もエルニーニョによる天候不安を背景に高値圏を維持している。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(砂糖)
- 弱気: 国際穀物理事会(IGC)はかねて2025/26年の世界小麦生産量を過去最大規模と算出しており、中期的には供給過剰という構造要因が残っているとの見方がある。本日の小麦・トウモロコシ・大豆の反落も、こうした潤沢な供給観測を背景とした利益確定売りの側面がある。 出典: Trading Economics(小麦)
5. 地政学・物価関連ニュース
米・イラン軍事衝突は3日間で2度目のエスカレーション局面を迎えた。米国がホルムズ海峡周辺のイラン標的へ新たな空爆を実施したのに対し、イランはヨルダンの米軍基地へミサイルで報復し、クウェート・ヨルダン・バーレーンが警戒態勢を敷いて迎撃にあたった。ホルムズ海峡を通過する船舶数は前週水曜の23隻から10隻へ急減しており、原油供給への懸念は根強い。エネルギー価格の高止まりは電気代・輸送コストを通じたインフレ圧力として意識されており、9月FOMCでの利上げ確率(66〜70%程度)を押し上げる一因にもなっている。一方でアイボリーコーストのファームゲート価格引き下げやガーナの増産修正など、カカオを中心に食料側の供給不安はやや後退する動きも見られ、エネルギーと食料で明暗が分かれつつある。 出典: The National、Yahoo Finance
6. テクニカル分析
金: 4,300〜4,311ドル付近が強気・弱気の分岐点となるピボット水準とされ、本日はこの水準を回復して4,387.80ドルまで反発した。上値のレジスタンスは4,450ドル(8月20日安値)、その上に200日移動平均線がある4,530ドル付近。下値のサポートは4,300ドル(8月安値)、4,225ドル(8月6日安値)。RSIは日中50ラインを割り込む場面があり、MACDもマイナス圏にあるなど、反発したとはいえ下向きの勢いが完全には消えていない状態。あくまで目安となる水準で、断定的な売買判断ではない。 出典: FXStreet
銀: レジスタンスは65.64ドル・66.87ドル・67.75ドル、サポートは62.98ドル・61.51ドル・60.84ドルとされる水準。本日終値65.33ドルは最初のレジスタンス65.64ドルに接近しており、これを上抜けられるかが目先の焦点となる。 出典: Trading Economics(銀)
WTI原油: 数週間続いていたレンジ(三角保ち合い)を上放れたとされ、フィボナッチ38.2%押しにあたる87.50ドル付近が直近の支持帯として意識される。短期的なレジスタンスは94.91ドル付近で、本日終値の90.58ドルはこの間で高値圏の推移が続いている状態。モメンタム系指標は総じて強含みだが、買われすぎ圏には達していない。断定的な売買判断ではなく、あくまで目安となる水準。 出典: Trading Economics(WTI)
天然ガス: 50%フィボナッチ・リトレースメント水準である2.97ドル付近が上値の壁として意識されていたが、本日終値の3.00ドルはこの水準を上抜けた。RSIは50ラインを回復し上向きに転じているが、依然として過去数か月のレンジ上限に近く、記録的な生産水準を踏まえると伸び悩みやすいとされる水準。 出典: Trading Economics(天然ガス)
小麦: 移動平均線ベースでは200日移動平均線を上回って推移しており、黒海情勢を受けた上昇トレンドの中にある。本日の反落は、このトレンド内での一時的な利益確定売りの範囲にとどまるとみられるが、あくまで「〜とされる水準」の参考情報であり断定的な売買推奨ではない。 出典: Trading Economics(小麦)
投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): 直近公表分(2026年8月28日時点)では、金の投機筋ネットロングは24.33万枚(243.3K)となっている。本日の急反発を含む直近数営業日の値動きはこの時点の集計には反映されておらず、次回更新でポジションの変化が確認される見込み。 出典: Investing.com(CFTC Gold Speculative Positions)

