前回からの変化

前回(2026-10-08、前日)のレポートとの比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 規制の話題が、前回の米国(OCC免許)と韓国から、EUのステーブルコイン規制の執行へ移った。ESMAは認可を受けていない資産参照型トークン(ART)と電子マネートークン(EMT)に関するサービスを行うべきでないとして、3か月の猶予を示した(CoinDesk)
  • 前回は国際送金網(Swift)の台帳とトークン化預金が中心だったが、本日はトークン化株式(Securitize)、カストディ(スタンダードチャータード)、中央銀行との連携(カザフスタン)が加わった
  • ビットコインは前回の8万3,583ドル前後から8万1,768ドルへ、イーサリアムは2,572ドル前後から2,447.78ドルへ下落した

昨日と同じこと(継続)

  • 銀行・金融機関が暗号資産やトークン化資産の取り扱いに参入する流れは続いている。前回のウェルズ・ファーゴとPayward(クラーケン親会社)の協議も、同じ流れの中にある
  • 当局が議会の立法を待たず、既存の権限で個別に整備する流れも続いている

要因の連続性

  • 継続要因: 当局が既存の権限で個別に判断する流れが前回に続いて働いている(前回の米OCCに続き、本日はEUのESMA)
  • 新規要因: ESMAが具体的な期限(3か月)を示したことが新たに加わった。市況では、1時間で4億8,000万ドルの清算とビットコインETFからの数か月ぶりの大規模な資金流出が報じられた(CoinDesk: Bitcoin price today)
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは8万1,768ドルで、24時間では2.00パーセント安だった(CoinDesk: Bitcoin price today)。イーサリアムは2,447.78ドルで、24時間では4.53パーセント安である(CoinDesk: Ethereum price today)。数値は10月8日のサイト表示によるもので、取得時刻は確認できていない。ページは、ビットコインが8万1,000ドルを下回った際に1時間で4億8,000万ドルの清算が起き、原油高と中東情勢の緊張が背景にあると説明している。

社会実装・インフラへの採用

Securitize、米大手12社のトークン化株式

  • 誰が・何を: トークン化の大手Securitizeが、Apple、NVIDIA、Tesla、Microsoft、Amazonなど米大手12社の株式をトークン化し、Solana(ソラナ)上で取引できるようにした。各トークンは実際の株式1株と1対1で裏付けられ、配当などの株主権を保つ。決済にはステーブルコインのUSDCを使う(CoinDesk)
  • 段階: 提供開始。同社の既存のSolana基盤で取引を始め、今後はニューヨーク証券取引所(NYSE)の24時間デジタル取引基盤と、OKXと取引所運営会社の合弁OKXICEでの取引を計画している。いずれも規制当局の承認に左右される
  • 技術・トークンの使い方: 株式を裏付けとするトークンがSolana上で動き、ステーブルコインのUSDCが決済に使われる。Securitizeは約45億ドルのトークン化資産を発行済みとされる

スタンダードチャータード、シンガポールでカストディ拡大

  • 誰が・何を: 英銀スタンダードチャータードが、選別した暗号資産、ステーブルコイン、トークン化した実物資産(RWA)のカストディ(顧客資産の保管・管理)を、シンガポールの機関投資家向けに広げる。同行の資産保管子会社Zodiaを通じて、UAE、ルクセンブルク、香港に続く展開とされる(CoinDesk)
  • 段階: 規制当局の承認待ち。対象資産や開始時期は未発表である。個人向けではなく機関投資家と認定投資家の法人顧客が対象
  • 技術・トークンの使い方: 暗号資産そのものの保管・移転を扱う。同行はトークン化ファンドやETF、貴金属を効率的に保有・移転したい需要が増えていると説明した

カザフスタン国立銀行とTether

  • 誰が・何を: カザフスタン国立銀行、Tether、アラタウ市当局が、自国通貨テンゲ建てのステーブルコインと、実物資産のトークン化の枠組みを探る覚書を結んだ。研究、用途の特定、パイロット案の作成、アラタウ市でのトークン化の試行の順に進める(CoinDesk)
  • 段階: 構想・提携発表(調査段階)。報道は、この合意が発行を決めたものではないとしている
  • 技術・トークンの使い方: Tetherの基盤「Hadron」が検討されている。Tetherのトークン(USDT)が使われるとは明示されていない

Cardano Foundation、Veridianを分社化

  • 誰が・何を: Cardano Foundationがデジタル身分証明の事業Veridianをスイスの独立企業として分社化し、100万株の大半をCardano上の新規格「CIP-0113」でトークン化した。この規格は、移転制限や資産の凍結・押収といった規制要件を発行者が組み込めるプログラム可能なトークン規格である(CoinDesk)
  • 段階: 発行済み(企業自身の株式のトークン化)。2027年に戦略的投資家を探す計画

各国の法改正・規制

EU

  • ESMAは10月8日、認可を受けていない資産参照型トークン(ART)と電子マネートークン(EMT)に関するサービスを、認可済みの暗号資産サービス事業者は行うべきでないと示し、3か月以内(2027年1月8日ごろ)に取り扱いをやめるよう求めた。新規取引と新たなサービスは直ちに止め、既存の保有分は売却や出金などに限る。根拠は、MiCA(暗号資産市場規則)が定める準備金、償還、開示のルールである。影響を受けるのは、EU域内の認可事業者と、その顧客である(CoinDesk)。段階は、当局による要請(ガイダンス)で、次の段階は猶予期限の到来である。日付は報道の「3か月」からの算出であり、正確な期限は一次情報での確認が必要

日本・米国・その他

  • 日本については、今回の調査では新たな制度の動きを確認できなかった。米国は、法改正としては新たな動きを確認できなかった(Bitfinex関連のビットコイン移動は下の業界トピックで扱う)

特集: 新しいビジネスの形

他社が第三者として株式をトークン化する

直近2週間の特集のうち、10月2日の「預託機関型トークン化」(米国の証券保管振替機構が中心)とは担い手が異なる。今回は、民間のトークン化事業者が、発行企業とは別に株式を裏付けにしてトークンを出すモデルである。

  • 仕組み: 事業者が実際の株式を保管し、その1株に対して1個のトークンを発行する。トークンはブロックチェーン(今回はSolana)上で動き、ステーブルコインのUSDCで決済する。配当は保有者に配分される(CoinDesk)
  • 誰がどう稼ぐのか: 収益源は取引手数料や発行・管理の手数料とみられる(報道に金額の記載がなく、これは見方である)。投資家は、株式市場の取引時間外でも売買でき、少額から持てる利点がある
  • 既存のやり方との違い: 通常の株式は取引所の営業時間に縛られ、決済に日数がかかる。トークンは24時間売買でき、決済がオンチェーンで完結する可能性がある。NYSEの24時間デジタル取引基盤でも扱う計画
  • 課題・リスク: トークンが表すのは「証券的権利」で、発行企業が関与する形とは違い、企業の株主としての直接の所有権とは限らない。報道は、企業が直接トークン化を採用すれば直接所有に変えうるとする。取引所での取引は規制当局の承認に依存する
  • 具体例: Securitize(Apple、NVIDIA、Tesla、Microsoft、Amazonなど12社)

業界トピック

米政府につながるウォレットが、2016年のBitfinexハッキングで押収したビットコイン12,267枚(約10億ドル)を動かした。取引所への入金は確認されず、売却ではなくウォレットの整理に近い動きだと報じられている。押収したビットコインは2025年3月の大統領令により、戦略的ビットコイン準備金に組み入れ、売却しないとされる(CoinDesk)。新たな大規模ハッキングは、今回の調査では確認できなかった。