前回からの変化

前回(2026-10-07、前日)のレポートとの比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 米国の話題が、前回の「規則案の撤回」から、暗号資産企業が銀行免許を取りに行く動きへ移った。レインの申請は新規である(CoinDesk)
  • 前回は日本の金融庁を扱ったが、本日は韓国のトークン化規則案を新たに扱う(Ledger Insights)
  • 前回「2027年前半の計画」と紹介した銀行側のトークン化預金に加え、国際送金網のSwiftでは4行が実取引を終えた段階にある(CoinDesk)
  • ビットコインは前回の8万5,634ドル前後から8万3,583ドル前後へ、イーサリアムは2,699ドル前後から2,572ドル前後へ下落した

昨日と同じこと(継続)

  • 米国で、銀行と暗号資産事業者の境界を当局が個別に整える流れが続いている(前回のFinCEN・CFTCに続き、本日はOCC)
  • 銀行側がトークン化預金で対抗する構図は継続している(前回の特集の続き。コミュニティ銀行は関心を示すが急がないとの調査もある。Ledger Insights)

要因の連続性

  • 継続要因: 議会の立法を待たず、当局が既存の権限で個別に判断する流れが前回に続いて働いている
  • 新規要因: 業界団体のICBAがOCCを提訴しており、免許の付与そのものが法的な争点になっている。市況では、ビットマインが購入を止める計画との報道が加わった
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは8万3,583ドル前後で、24時間では2.4パーセント安だった(CoinDesk: Bitcoin price today)。イーサリアムは2,572ドル前後で、24時間では4.6パーセント安である(CoinDesk: Ethereum price today)。取得は10月8日朝(日本時間)で、サイトの表示に基づく。ページには、債券市場の売りと中東情勢への懸念で清算が5億ドル超に膨らんだとの記述があり、どちらも5パーセント未満の下落である。

社会実装・インフラへの採用

Swiftのブロックチェーン台帳

  • 誰が・何を: 国際送金網のSwiftが構築するブロックチェーン台帳で、HSBC、スタンダードチャータード、DBS、シティの4行が実取引を終えた。24時間365日の国境を越えたトークン化預金の移転を担う調整の仕組みで、従来は最大2営業日かかった決済が数分で済んだと報じられている。スイスのTaurus共同創業者は、銀行側に許可制台帳・ウォレット・トークン化の3層が必要と述べた(CoinDesk)
  • 段階: パイロット(限定的な実取引)。台帳は既存の決済の取り決めを置き換えない
  • 技術・トークンの使い方: 移転されるのは銀行預金をトークン化したもので、暗号資産のトークンが使われるとは明示されていない

PolygonとTRON、USDT送金の連携

  • 誰が・何を: Polygon Labsは決済基盤「Open Money Stack」をTRONに対応させた。事業者は銀行振込・デビットカード・現金で入金してTRON上のUSDTを受け取り、銀行口座へ出金できる。TRON上のUSDTは940億ドル超で、第2四半期の送金の約93パーセントが個人間送金という(CoinDesk)
  • 段階: 提供開始の発表。米48州の送金業ライセンスを使うが、決済事業者自身の免許義務は残る
  • 技術・トークンの使い方: ステーブルコインのUSDTそのものが使われる

米大手行の動き

  • ウェルズ・ファーゴが暗号資産取引所クラーケンの親会社Payward(ペイワード)と、取引の流動性の確保で協議中と報じられた(10月5日。構想段階。CoinDesk)

各国の法改正・規制

米国

  • OCCの免許審査: 決済企業のレインは、ニューヨークに置く子会社「Rain National Trust Bank」の全国信託銀行免許をOCCに申請した。デジタル資産と米ドルの受託管理、ステーブルコイン発行者の準備金の管理、機関投資家向けのステーブルコインの発行・償還が目的で、外部の保管会社への依存を減らす狙いがある。申請はOCCの承認と意見募集を経る段階にある。サークル、リップル、ビットゴー、フィデリティは2025年12月に条件付き承認を受け、サークルは2026年7月に最終承認を得た。一方、ICBAはOCCに暗号資産企業へ免許を出す権限はないとして提訴している(CoinDesk)。影響を受けるのは、暗号資産企業、既存の銀行、カストディの利用者である

韓国

  • 金融委員会(FSC)は10月2日、トークン化証券の発行と小口投資に関する規則案を公表した。不動産の賃料収入や音楽の収益に対する権利を表す信託受益権トークンも対象である。台帳には証券預託決済院(KSD)と2社以上の口座管理機関の参加が必要で、台帳の利用に直接の手数料は課せない。意見募集は11月11日まで、施行は2027年2月4日の予定で、FSCの議決、立法審査、閣議承認を経る。発行者、投資プラットフォーム、台帳運営者に影響する(Ledger Insights)。段階は規則案の意見募集中である

特集: 新しいビジネスの形

暗号資産企業が「信託銀行」になる

直近2週間の特集(10月2日の預託機関型トークン化から、10月7日のトークン化預金まで)とは別のテーマである。

  • 仕組み: 米国の「全国信託銀行」は、預金の受け入れや融資を行わず、資産の受託管理(信託業務)に特化したOCC監督の免許である。取得すると、州ごとの免許に頼らず全米で業務ができ、準備金の保管や発行・償還を自前で行える。レインの場合、顧客の暗号資産と米ドルを預かり、ステーブルコイン発行者の準備金を管理する(CoinDesk)
  • 誰がどう稼ぐのか: 収益源は受託管理の手数料や、機関投資家向けの発行・償還の手数料とみられる(報道には金額の記載がなく、これは見方である)。外部の保管銀行に払っていた費用と依存を減らせる利点もある
  • 既存のやり方との違い: これまでは提携銀行に口座や保管を頼る必要があった。免許を持てば、自社で準備金を管理でき、規制上の位置づけも明確になる。サークルは最終承認まで約7か月かかった
  • 課題・リスク: 承認は未確定で、意見募集が必要である。ICBAの提訴が示すように、銀行側は同じ義務を負わない者に銀行の特権を与えるものだと反発している。結果次第で事業計画が変わりうる
  • 具体例: サークル(最終承認済み)、レイン(申請中)。これらはドルに連動する決済用ステーブルコインの運営基盤となる

業界トピック

本日は、前日〜実行時点で新たな大規模ハッキングは確認できなかった。市況面では、ビットマインの購入停止の計画や、イーサリアムのレイヤー2であるAbstractの停止が弱気材料として報じられている(CoinDesk: Ethereum price today)。