前回からの変化
前回(2026-10-09、前日)のレポートとの比較である。
変わったこと(変化・新規)
- 規制の話題が、前回のEU(ESMAのステーブルコイン要請)から、英国の制裁とタイのETF解禁へ移った。英国はロシアの制裁回避に使われたとされる決済事業者6社を指定した(CoinDesk: UK slaps sanctions)
- 社会実装は、前回のトークン化株式とカストディから、住宅担保ローンのトークン化(NUVA)へ移った
- セキュリティ事件が加わった。Ledgerが、東南アジアの販売店経由で買った端末から資産が盗まれたとの報告を調べている
- ビットコインは前回の8万1,768ドルから8万3,042ドルへ(1,274ドル高)、イーサリアムは2,447.78ドルから2,486.91ドルへ上昇した(価格サイトの表示値同士の比較で、取得時刻は異なる)
昨日と同じこと(継続)
- 当局が個別に規制を整備する流れは続いている。前回のESMAに続き、本日は英国とタイの当局が動いた
- 伝統的な金融資産のトークン化が広がる流れも続いている。前回の株式に続き、本日は住宅担保ローンが対象になった
要因の連続性
- 継続要因: 中東情勢の緊張を背景とした市場の警戒感。前回に続き市況の材料として挙がっているが、本日は米国のイラン攻撃を否定する報道で和らいだと説明されている
- 新規要因: ロシアの制裁回避に使われたルーブル連動のステーブルコイン「A7A5」への制裁強化と、タイのETF解禁による需要期待が新たに加わった
- 解消した要因: 前回報じられた1時間で4億8,000万ドルの清算に伴う急落は一服し、価格は反発した
市況ひとこと
ビットコインは83,042.05ドルで、24時間では0.44パーセント高だった(CoinDesk: Bitcoin price today)。イーサリアムは2,486.91ドルで、24時間では1.76パーセント安である(CoinDesk: Ethereum price today)。数値は10月10日朝にサイトで確認した表示値で、取得時刻の記載はない。ビットコインは、トランプ氏が米中間選挙前のイラン攻撃を否定したことで落ち着いたと説明されている。
社会実装・インフラへの採用
NUVA、米住宅担保ローンのトークン化
- 誰が・何を: Animoca Brandsとnuva Labsの共同事業NUVAが、米国の住宅担保ローン(HELOC。自宅の価値を担保にした融資枠)をまとめた運用枠への投資権を、トークン「HOME」として発行した。元のローンはFigure Technology Solutionsが組成する(CoinDesk: NUVA brings U.S. residential mortgage credit to offshore investors)
- 段階: 提供開始(発表は10月8日)。規制当局の承認や届出の状況は、報道に記載がない
- 規模・条件: 購入できるのは米国外の適格な投資家のみで、英国、香港、中国などは対象外。最低投資額は1USDC、目標利回りは年7パーセントで月ごとに見直す。引き出しに約2営業日かかる
- 技術・トークンの使い方: イーサリアム上のERC-20トークンで、ステーブルコインのUSDCで購入する。ローン自体ではなく、まとめた運用枠の価値に連動する
各国の法改正・規制
英国
- 英国外務省は10月9日、ロシアの制裁回避を助けた可能性があるとして、暗号資産の決済事業者6社(Cryptomus、Heleket、Certa Payments、TokenSpot、VexPay、Tsunami Payments)を制裁対象に指定した。このうち2社は、ルーブル連動のステーブルコインA7A5を運営するクレムリン系ネットワークA7の取引を処理したとされる。英国内の資産は凍結され、英国の金融機関はこれらの事業者を通じた決済ができなくなる(CoinDesk: UK slaps sanctions)。段階は、指定の実施(発効済み)である
タイ
- タイ証券取引委員会は、現地の資産運用会社がビットコインとイーサリアムのETF(上場投資信託)をタイ証券取引所に上場できる新ルールを定め、10月16日に施行する。純資産の80パーセント以上を単一の暗号資産で持つこと、規制下のカストディ(保管業者)で保管すること、購入前にリスクを確認することなどが条件で、証券会社による購入資金の貸付は禁止される。これまで機関投資家や富裕層に限られていた海外の暗号資産ETFへの経路を、国内商品に置き換える狙いとされる(CoinDesk: Thailand opens door)。段階は成立済みで、次は10月16日の施行である
日本・米国・EU
- 日本、米国、EUについては、今回の調査で新たな制度の動きを確認できなかった。米国では、ニューヨーク州司法長官が、破綻したCelsiusの創業者に最大3,500万ドルの支払いと暗号資産業界からの永久追放を認める和解を得たと報じられた(CoinDesk: New York AG secures up to $35 million)
特集: 新しいビジネスの形
ローン債権をトークン化して海外投資家に売る
直近2週間の特集(預託機関型トークン化、x402、ステーブルカード、準備金の利回りを分けるステーブルコイン、トークン化預金、信託銀行化、第三者による株式のトークン化)とは異なり、今回は融資の債権を材料にする。
- 仕組み: 米国の住宅担保ローンを組成する会社が貸し出し、その債権をまとめた運用枠(ボールト)に入れる。運用枠の持ち分に連動するトークンHOMEをイーサリアム上で発行し、利息収入と返済状況が運用枠の価値に反映される(CoinDesk: NUVA brings U.S. residential mortgage credit to offshore investors)
- 誰がどう稼ぐのか: ローンを組成するFigureは貸出の手数料を、トークンを発行するNUVAは運用や販売の手数料を得るとみられる(報道に金額の記載はなく、見方である)。投資家は米国の住宅ローンの利息を、年7パーセントを目標に受け取る。借り手は、既存の金融機関以外の資金源から調達できる
- 既存のやり方との違い: 米国の住宅ローン債権への投資は、通常は米国の機関投資家向けで、最低投資額も大きい。トークン化により、米国外の投資家が1USDCから、24時間いつでも購入できる。引き出しは約2営業日で、ローン債権そのものを売るより早い
- 課題・リスク: 貸し倒れによる信用リスクと、換金しにくい流動性リスクがある。第一損失として5パーセントの出資が先に損失を負担するが、それを超えれば保有者に及ぶ。大口の償還は相対取引での売却になりうる。規制上の位置づけは報道で示されていない
- 具体例: NUVA(Animoca Brands、nuva Labs)とFigure Technology Solutions。Figureは2026年第2四半期に43億ドルのローンを処理したとされる
業界トピック
ハードウェアウォレット大手Ledgerが、東南アジアの販売店CryptoBilis経由で買った端末の利用者から資産が盗まれたとの報告を調べている。ブロックチェーン調査会社Specterは、ビットコイン、イーサリアム、TRONで約8,600万ドルの被害の疑いがあるとするが、独立した確認はない。原因は未確定で、出荷前に細工された端末が使われたサプライチェーン攻撃の可能性が挙げられている。Ledgerは販売店に出荷の停止を求め、最近買った利用者には設定をせず、既存の利用者には新しい端末と新しい復元フレーズへ資産を移すよう助言した。Ledger自身のシステムが侵害された証拠はない(CoinDesk: Ledger investigates potential wallet tampering)。

