前回からの変化
前回(2026-10-08、10月7日の値)との比較である。値はいずれも各ページの表示値で、確定終値ではない。
変わったこと(変化・新規)
- 原油が前回の横ばいから一転して急伸した。ブレントは前回の100.85ドルから103.92ドル(3.71%高)、WTIは88.94ドルから91.18ドル(3.29%高)へ上昇し、どちらも急変動の目安(1日±3%超)を超えた(TradingEconomics: Brent oil、TradingEconomics: Crude Oil)
- 金は前回の4,110.66ドルから4,133.60ドル(0.55%高)へ反発した。ただし2か月ぶりの安値圏にとどまっている(TradingEconomics: Gold)
- 銀は前回の59.78ドルから59.18ドル(0.95%安)へ下げ、8月初め以来の安値を更新した(TradingEconomics: Silver)
- 天然ガスは前回の3.22ドルから3.13ドル(2.30%安)へ下落した。前回の急騰は一服した(TradingEconomics: Natural gas)
- 小麦は前回の6.86ドルから6.835ドル(0.44%安)と小幅に下げた(TradingEconomics: Wheat)
- 新しい原油の材料として、ハリケーン・イザイアスによる米メキシコ湾の減産と、トランプ大統領の「中間選挙前にイランを攻撃しない」との発言が加わった
昨日と同じこと(継続)
- 高止まりする米長期債利回りとドル高が、金・銀の上値を抑える構図は続いている(ドルは18か月ぶりの高水準、FOMC議事要旨で12月の利上げ確率は85%)
- ホルムズ海峡の船舶への攻撃報道が続き、原油の支えになっている点は前回と同じ
- 小麦は黒海情勢への警戒が材料で、8月の高値7.67ドルから下げた水準にとどまる点も同じ
要因の連続性
- 継続要因: 高い債券利回りとドル高が貴金属の重し、ホルムズ海峡の安全懸念が原油の支えとなる構図は前回に続いている
- 新規要因: 原油ではハリケーンによる米産油の減産(約50万バレル/日)が新たな支えに加わった。1週間でタンカー9隻が攻撃を受け、ホルムズ海峡の原油通過量は平時比で約3割少ない日量950万バレルにとどまる。天然ガスでは、米エネルギー情報局(EIA)の在庫積み増しが予想を上回ったことが新たな重しになった(TradingEconomics: Natural gas)
- 解消した要因: 前回の原油の重しだった「サウジの公式販売価格引き下げとタンカーの出港」による供給不安の後退は、タンカー攻撃の再燃で後退した。天然ガスの支えだった産出減と暖かい予報も、8日は重しに転じた
価格サマリー
| 商品 | 価格(2026年10月8日) | 騰落率(前日比) |
|---|---|---|
| 金(スポット) | 1オンス4,133.60ドル | 0.55%高 |
| 銀 | 1オンス59.18ドル | 0.95%安 |
| WTI原油 | 1バレル91.18ドル | 3.29%高 |
| ブレント原油 | 1バレル103.92ドル | 3.71%高 |
| 天然ガス(Henry Hub) | 1MMBtu 3.13ドル | 2.30%安 |
小麦は1ブッシェル6.835ドル(0.44%安)。値は各ページの10月8日の取引中の表示値で、取得時刻は確認できていない。限月は各ページの代表値(期近)に基づく。
商品別動向
金・銀
TradingEconomics: Goldによると、金は4,133.60ドルで、月間では6.02%安の2か月ぶりの安値圏にある。FOMC議事要旨が年末までの追加利上げの可能性を示し、12月の利上げ確率は85%とされる。ドルは18か月ぶりの高値圏、米国債利回りは数十年ぶりの高水準にあり、無利子資産の金には逆風である。一方、中東情勢の緊張が安全資産としての買いを支えた。金の過去最高値は2026年1月の5,608.35ドルである。Kitcoは、米新規失業保険申請件数が19万7千件へ低下したと伝えた(Kitco: Latest News)。
銀はTradingEconomics: Silverによると59.18ドルで、8月初め以来の安値圏にある。月間では12.02%安である。ドル高と米債利回りの高止まりが重しで、FRBの9月会合の議事要旨の内容を受けた売りが続いた。
原油
TradingEconomics: Brent oilによると、ブレントは103.92ドルで、前年比では59.34%高である。ホルムズ海峡では過去1週間に9隻のタンカーが攻撃を受け、最近の回復が危うくなった。通過量は日量約950万バレルと、紛争前の平時より約30%少ない。米国ではハリケーン・イザイアスの接近で、メキシコ湾の海上生産の約25%にあたる日量約50万バレルが停止され、アラバマ、ミシシッピ、フロリダ州パンハンドルの沿岸で退避が進んでいる。トランプ大統領は中間選挙前にイランを攻撃しないと述べたが、軍事的な選択肢が検討されているとの報道が先にあったと伝わる。
WTIはTradingEconomics: Crude Oilによると91.18ドルまで上げ、ボラティリティの高い値動きとなった。月間では5.07%安だが、前年比では48.24%高である。要因は、ホルムズ海峡のタンカー攻撃と、ハリケーンによる米洋上生産への脅威である。
天然ガス
TradingEconomics: Natural gasによると、Henry Hubは3.13ドルで2.30%安、月間では10.89%高、前年比では4.27%安である。EIAは、10月2日までの週に米エネルギー企業が850億立方フィートを貯蔵に追加したと報告し、予想の790億立方フィートを上回って価格を押し下げた。前日の上昇を支えた寒波予報による暖房需要の思惑は、一時的な支えにとどまった。ハリケーンがメキシコ湾岸のLNG(液化天然ガス)輸出施設の稼働を妨げるおそれもあり、国内の供給余力が増える可能性が指摘されている。
農産物
TradingEconomics: Wheatによると、小麦は1ブッシェル6.835ドルで0.44%安、月間では6.21%安、前年比では34.95%高である。黒海の穀物供給に関わる地政学的な緊張が材料で、8月の高値7.67ドルからは下げた水準にある。
急変動の特集
原油(ブレント・WTI)
ブレントは3.71%高の103.92ドル、WTIは3.29%高の91.18ドルと、1日で3%を超えた。要因は、(1)ホルムズ海峡で1週間に9隻のタンカーが攻撃を受け、通過量が平時の約7割にとどまること、(2)ハリケーン・イザイアスで米メキシコ湾の日量約50万バレルが止まったこと、の2つである(TradingEconomics: Brent oil)。
生活への波及は、ガソリン・軽油・航空運賃を通じて物価を押し上げる経路が考えられる。ブレントの前年比は59.34%高と大きく、円安が続けば日本の輸入燃料の円建てコストはさらに膨らむ(推測)。前回の特集で扱った天然ガスは、8日に2.30%安の3.13ドルとなり、急騰は一服した。月間では10.89%高の水準を保っている。
強気派 vs 弱気派
金(強気): Sprottのリサーチ・投資戦略ディレクター、ケニー・ズー氏は、金の取引レンジの維持とETF(上場投資信託)への資金流入が上昇の可能性を示すと述べ、米中央銀行のドル資産離れが長期の強気見通しを支えるとみる(Kitco: Latest News)。
金・銀(弱気・短期): Kitcoは、原油価格の上昇と米財務省証券の利回り上昇がインフレ懸念を再燃させ、金・銀に短期的な逆風になると伝えた。銀は短期は弱気、長期では重要な貨幣資産という見方である(発言者の特定はない。Kitco: Latest News)。
原油(弱気): 前回紹介したロイター調査(エコノミスト・アナリスト31人)では、ブレントの2026年平均予想は84.50ドルで、5月時点の90.44ドルから引き下げられた。ホルムズ海峡の通航が続き、供給不安が和らいだことが根拠とされた(IDN Financials)。ただし8日はタンカー攻撃の再燃でこの前提が揺らいだ。
原油(強気): 発言者付きの強気の見解は確認できなかった。TradingEconomicsの機械的な予測モデルは、ブレントを第4四半期106.60ドル、12か月後121.00ドルとしている(個別の発言者の見解ではない。TradingEconomics: Brent oil)。
天然ガス・農産物: 発言者付きの強気・弱気の見解は確認できなかった。
地政学・物価関連ニュース
ホルムズ海峡では、1週間でタンカー9隻が攻撃を受けた。米国ではハリケーン・イザイアスが沿岸に近づき、石油会社が洋上の人員を退避させている。トランプ大統領は中間選挙前にイランを攻撃しないと述べたが、軍事的な選択肢の検討報道があり、先行きは不透明である(TradingEconomics: Brent oil)。物価への波及は、エネルギー価格を通じたガソリン代・電気代・運賃の上昇が主な経路である。
黒海では、小麦の供給を脅かす地政学的な緊張が続いている。小麦高は製粉・食品価格に波及する可能性がある(TradingEconomics: Wheat)。
テクニカル分析(金・銀・原油・天然ガス・農産物)
移動平均線(50日・200日)とRSIの当日値は、今回の出典で確認できなかった。確認できた範囲で、前回までの水準と現在値の位置関係を解説する。断定的な売買判断ではない。
金: 4,133ドルは、前回示した4,250ドル付近の抵抗帯の下にあり、支持とされる4,000ドルにはまだ距離がある。2か月ぶりの安値圏で、反発が続くかが焦点である。
銀: 59.18ドルは、前回の下値の目安60.30ドルを下回ったままで、8月初め以来の安値を更新した。
原油(WTI): 91.18ドルは、前回挙げた50日移動平均線(87.03ドル、当日の再確認はできていない)を上回る。91ドルは前回の89.97ドル(10月6日の値)を超えた水準である。
天然ガス: 3.13ドルは、前回挙げた200日移動平均線(2.841ドル前後)をなお上回っている。1日の下落でも月間では10.89%高の水準で、上昇の勢いは完全には失われていない。
小麦: 6.835ドルは、9月30日につけた1年超ぶりの安値との位置関係が注目される。8月28日の高値7.67ドルとの差は引き続き大きい。

