前回からの変化
前回(2026-10-02、前日)のレポートとの比較である。
変わったこと(変化・新規)
- 米国では、前回扱った制度整備やDTCCの計画段階の話から一歩進み、フィサーブが州単位の銀行間決済でステーブルコインを本番運用に載せた。構想・実証ではなく本番運用の事例である(Fiserv: プレスリリース)
- EUでは、ECBのシュナーベル理事が中央銀行マネーをオンチェーンで扱う3方式を示した。前回のデジタルユーロ参加企業募集とは別の、決済の仕組みの整理である(Cryptonomist)
- セキュリティ面では、NEAR Intentsの流出事件が新たに発生し、攻撃者が全額を返却した(CoinDesk)
- ビットコインは前回のおよそ8万4,580ドルから、10月2日の米東部時間12時台には8万5,195ドル前後へ小幅に上昇した(CoinDesk: Bitcoin price today)
昨日と同じこと(継続)
- DTCCが10月に証券のトークン化サービスを本格開始する予定である点は継続しており、本日時点で日程変更は確認できなかった
- 金融庁のオンチェーン金融の検討は、第2回会合が2027年初の予定で、新たな進捗は確認できなかった
- ビットコインが8万2,000〜8万5,000ドル前後で推移する構図は継続している
要因の連続性
- 継続要因: 銀行・決済インフラがブロックチェーンやトークンを実務に取り込む流れが、前回に続いて働いている
- 新規要因: フィサーブの本番稼働と、ECBによる中央銀行マネーのオンチェーン化の整理が加わった
- 解消した要因: なし
市況ひとこと
ビットコインは8万5,195ドル前後(10月2日の米東部時間12時台、日本時間では10月3日未明)で、24時間騰落率は確認できなかった(CoinDesk: Bitcoin price today)。イーサリアムは2,690ドル台で、24時間では0.6パーセント高だった(Binance: ETH price)。どちらも大きな変動ではなく、理由の付記は不要な水準である。なお情報源により価格に差があり、10月3日時点で8万2,600ドル前後とする掲載もある。
社会実装・インフラへの採用
フィサーブの銀行間決済用ステーブルコイン基盤
- 誰が・何に: 決済大手の米フィサーブが、デジタル資産基盤を10月1日に本番稼働させた。最初の用途は、ノースダコタ銀行(州営の銀行)が作った米ドル裏付けのステーブルコイン「Roughrider Coin」で、州内の銀行間決済を速くする
- 技術: 発行と準備資産の管理はVersaBank、基盤サービスはFireblocks、取引の処理はソラナのブロックチェーンが担う。90を超える州内の銀行・信用組合が、フィサーブのオンラインバンキング画面から利用できる(Fiserv: プレスリリース、Blockchain Reporter)
- 段階: 本番運用(州内の銀行間に限る)。フィサーブはカード発行、国際送金、資金管理の自動化への拡張も挙げている
- トークンの扱い: ブロックチェーン技術だけでなく、ステーブルコインそのものが決済に使われる事例である。手数料や取引量は公表資料から確認できなかった
米大手行のトークン化預金ネットワーク(続報の整理)
- 誰が・何に: The Clearing Houseが運営し、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなどが参加する、トークン化預金(銀行預金をトークンの形にしたもの)の共有ネットワークである
- 段階: 2026年6月4日付の報道時点で計画段階とされ、稼働は2027年前半の予定。技術ベンダーは未定とされている(PYMNTS)。本日新たに発表された案件ではなく、フィサーブの本番稼働との対比として整理した
各国の法改正・規制
EU
- ECBのシュナーベル理事は10月2日、英国中央銀行の会議で、中央銀行の準備預金をプログラム可能な基盤に載せる3方式を示した。第1に準備預金そのものを直接発行する方式、第2に既存の決済システムと分散型台帳をハッシュでつなぐ相互接続層の方式、第3に準備資産に裏付けられた民間の決済トークンを使う方式である
- 目的は、中央銀行マネーを決済の基盤に保ち、中央銀行と民間銀行の二層構造を維持することとされる。短期の接続策「Pontes」と、長期の統合台帳を検討する「Appia」にも触れた(以上、Cryptonomist)
- 段階は方針の提示であり、制度の変更や施行日が決まったものではない
本日は日本・米国で、前回から進展した法改正・規制の動きは確認できなかった。
特集: 新しいビジネスの形
銀行が自らステーブルコインを出す「銀行間決済トークン」
直近2週間の特集(前日の預託機関型トークン化)とは別のテーマである。
- 仕組み: ノースダコタ銀行が、米ドルに裏付けられたステーブルコインを州内の銀行向けに提供する。発行と準備資産の管理は免許を持つVersaBankが担い、取引はソラナ上で処理される。参加行は、普段使うオンラインバンキング画面から送受信できる
- 誰がどう稼ぐのか: 収益源や手数料の水準は公表資料から確認できなかった。参加行にとっては銀行間の資金移動が速くなる利点があり、フィサーブは基盤の提供者として、カード発行や国際送金などへ広げる余地を持つ(拡張はフィサーブの発表による)
- 既存のやり方との違い: 一般に銀行間の送金は決済網の営業時間や処理時間に縛られる。ステーブルコインならブロックチェーン上で時間の制約が小さくなる可能性があるが、実際の短縮効果は本日の資料では数値で示されていない
- 課題・リスク: 準備資産の管理と償還の確実性が信頼の土台になる。ステーブルコインの規制は米国で規則案の段階にあり、制度の変更が運用に影響しうる(憶測を含む見方)。州内に限った運用のため、広い普及には他州や他の銀行との接続が壁になる
- 具体例: フィサーブ、ノースダコタ銀行のRoughrider Coin、VersaBank、Fireblocks。比較として、米大手行は同じ目的でトークン化預金の共有ネットワークを2027年前半に立ち上げる計画で、ステーブルコインを使うか預金をトークン化するかで、銀行の選択が分かれている
業界トピック
NEAR Intentsの流出事件
- NEAR Intents(複数のブロックチェーンをまたいで取引を成立させるサービス)が10月1日、約380万ドルの流出被害を受けた。同サービスは原因をOmniシステムとスマートコントラクトの不具合とし、一時的にサービスを止めて脆弱性を修正した
- 調査者のZachXBTは、BNBチェーン上の関連ホットウォレットからの異常な出金が発端だったと指摘している。その後、攻撃者が盗んだ資産をすべて返却したため、被害者への払い戻しは不要になった(CoinDesk)

