前回からの変化

前回(2026-10-03、前日)のレポートとの比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 米国では、前回扱ったフィサーブの本番稼働(インフラ面)に続き、制度面で2つの動きがあった。SECによる自己保管の規則案と、ICBAによるOCCの提訴である(Investinglive、Forexcrunch)
  • EUでは、前回のECB理事による中央銀行マネーの3方式の整理に続き、民間のサークルが準備資産規則の緩和を求める動きが加わった(Cryptonomist)
  • ビットコインは前回の8万5,195ドル前後から、本日は8万4,750ドル前後へ小幅に下落した。イーサリアムは前回の2,690ドル台から2,686ドル前後でほぼ横ばいである

昨日と同じこと(継続)

  • 銀行・決済インフラがブロックチェーンやトークンを取り込む流れは継続しており、フィサーブの基盤やDTCCの10月開始予定について、本日時点で新たな変更は確認できなかった
  • ビットコインが8万2,000〜8万5,000ドル前後で推移する構図は継続している

要因の連続性

  • 継続要因: 銀行・決済インフラによるブロックチェーン活用の流れが、前回に続いて働いている
  • 新規要因: 米国で自己保管の容認案と暗号資産企業への銀行免許をめぐる訴訟、EUで準備資産規則の見直し要望という、制度面の動きが加わった
  • 解消した要因: なし

市況ひとこと

ビットコインは8万4,750ドル前後で、24時間では0.3パーセント高(0.26パーセント)だった(CoinDesk: Bitcoin price today)。イーサリアムは2,686ドル前後で、24時間では1.0パーセント高(0.96パーセント)である(Binance: ETH price)。取得は10月4日朝(日本時間)である。どちらも大きな変動ではないため、理由の付記は不要な水準である。

社会実装・インフラへの採用

本日は、前日〜実行時点で新たに発表された決済インフラ・中央銀行・RWAの採用案件のうち、一次情報で確認できるものはなかった。前回までに扱ったフィサーブの本番稼働やDTCCのトークン化サービス(10月に本格開始の予定)に、日程の変更は確認できていない。下の特集で、すでに本番運用に入っている国際送金の事例を扱う。

各国の法改正・規制

米国

  • SECの規則案: 投資顧問や規制対象のファンドが、暗号資産を一定の条件で自己保管できるようにする案を10月1日に公表した。専用の保管業者が使えないと判断した場合に限り自己保管でき、その判断は四半期ごとに見直す。移転には2人以上の承認を求め、顧客ごとに別々のブロックチェーン上のアドレスで管理する。あわせて、州の認可を受けた信託会社をカストディアン(資産の保管者)として使える道も示した
  • 段階はガイダンスではなく規則案で、連邦官報への掲載後に60日間の意見募集に入る。まだ確定した規則ではない(以上、Investinglive)
  • ICBAの提訴: 全米独立コミュニティ銀行協会(ICBA)が10月2日、ワシントンの連邦地方裁判所でOCC(通貨監督庁)を提訴した。争点は、OCCが2026年3月2日に出した最終規則で、受託業務以外の暗号資産関連業務を行う企業にも国法信託銀行の免許を認めたことである
  • ICBAは、議会が信託免許を暗号資産企業が銀行制度に入る裏口として作ったわけではないと主張する。信託銀行はFDIC(預金保険)や地域再投資法などの義務を負わず、地域の中小銀行より軽い監督で済むという主張である。段階は訴訟の提起であり、判断は出ていない(以上、Forexcrunch)

EU

  • サークルは10月1日、欧州委員会に対し、MiCA(暗号資産市場規則)のステーブルコイン準備資産規則を見直すよう提案した。現行では、準備資産のうち通常のトークンで30パーセント、重要なトークンでは60パーセントを銀行預金で持つ必要がある。サークルはこれを、資産の満期に応じた流動性基準に置き換えるよう求めている
  • サークルは、固定の預金比率が発行者を銀行の信用リスクにより深く結びつけると主張している。MiCAの意見募集は9月30日に締め切られ、回答は委員会の報告書にまとめられる。必要なら法案が添えられる可能性があるという段階で、制度変更は決まっていない(以上、Cryptonomist)

本日は日本で、前回から進展した法改正・規制の動きは確認できなかった。

特集: 新しいビジネスの形

国際送金の受け取りをステーブルコインのカードにする「ステーブルカード」

直近2週間の特集(10月2日の預託機関型トークン化、10月3日の銀行間決済トークン)とは別のテーマである。発売は2026年8月だが、国際送金の新しい形として本日取り上げる。

  • 仕組み: 海外送金大手のウエスタンユニオンと、ステーブルコイン決済基盤のRainが2026年8月4日に「ステーブルカード」を37の市場で始めた。受取人への送金は、米ドル連動のステーブルコイン「USDPT」(アンカレッジ・デジタル銀行がソラナ上で発行)のウォレットに直接届く。そこでドルの価値のまま持てるほか、ビザの加盟店やアップルペイ、グーグルペイで使える。USDPTは米ドルと1対1で償還できると説明されている
  • 誰がどう稼ぐのか: 手数料や収益の水準は公表資料から確認できなかった。ウエスタンユニオンは自社の送金網にステーブルコインを加えて受取側の使い勝手を高められ、Rainはカード発行の基盤を提供し、アンカレッジは発行者として準備資産を管理する。それぞれの収益の配分は不明である
  • 既存のやり方との違い: 従来の送金は現地通貨で受け取り、現金化する窓口に出向くことが多い。USDPTでは、受取人がドル建てで保有して現地通貨の変動を避けられる点が利点とされる。決済の24時間対応を狙ってソラナ上で運用している点も違いである。年末までに60超の市場へ広げる計画である
  • 課題・リスク: ステーブルコインは準備資産の管理と償還の確実性が信頼の土台になる。国ごとにステーブルコインの法的な扱いが異なり、展開できる市場は規制に左右される。実際の送金コストや利用量は本日の資料では示されていない
  • 具体例: ウエスタンユニオンのステーブルカードとUSDPT。(以上、Yahoo Finance、The Block)。なお The Block の記事は、USDPTの最初の展開国をフィリピンとボリビアとしている

業界トピック

本日は、前日〜実行時点でセキュリティ事件や取引所の大きな動きは確認できなかった。参考として、国際通貨基金(IMF)が10月2日、エルサルバドルのビットコイン蓄積に関する違反を免除し、1億3,900万ドルの融資を実行したと報じられている。同国は今後ビットコインの購入を止め、国の関与を縮小する条件が付いた(Coingabbar)。