前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 米露停戦交渉が急展開、ウィトコフ・クシュナー両特使がモスクワ入り: CNNによれば、トランプ米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏が土曜日(9月5日)にモスクワ入りし、プーチン露大統領側近のドミトリエフ氏と会談。プーチン氏はキーウへの攻撃を72時間停止するよう指示したと伝えられ、両特使は日曜日にキーウでゼレンスキー氏とも会談する見通し。前回レポート時点では戦闘継続が前提だったため、停戦交渉の具体的な進展は本日新たに加わった材料である。Investing.comによれば、この報道を受けて金曜日のシカゴ小麦相場は続落し、黒海の戦争プレミアムを巡る思惑がさらに後退した。 出典: CNN、Investing.com
- 米軍がイラン原油タンカー3隻を破壊、ホルムズ海峡の緊張が一段と悪化: Al Jazeeraによれば、イラン革命防衛隊(IRGC)が米海軍艦艇に向けて弾道ミサイルを発射した(いずれも命中せず)ことへの報復として、米中央軍(CENTCOM)は9月5日、無人の原油タンカー「M/T Kylo」をオマーン湾で完全に破壊したほか、カーグ島沖の「M/T Downy」、ジャスク近海の「M/T Stark 1」の2隻も航行不能にした。トランプ大統領は「大規模かつ強力な攻撃」と述べ、イランが報復すればさらに強い打撃を与えると警告しており、前回レポートで指摘した通航船舶の急減に続き、供給不安を再燃させる新たな悪材料が加わった。 出典: Al Jazeera
昨日と同じこと(継続)
- 商品先物市場(COMEX・NYMEX・CBOT等)は週末で休場のため新規の値付けはなく、金は前回終値4,429.83ドル、銀は66.15ドル、WTIは91.20ドル、ブレントは95.79ドル、小麦は716.00セントのまま据え置かれている(月曜の取引再開まで更新なし)。
- 天然ガスは記録的な生産水準と猛暑によるLNG輸出需要増の綱引きという構図が継続。Natural Gas Intelligenceによれば、直近の期近限月は4週連続の週間上昇となり、主要LNG輸出基地9カ所への供給量は日量18.3bcfへ増加(8月の17.2bcfから拡大)、価格は一時2.976ドルまで上昇した。 出典: Natural Gas Intelligence
- 大豆は中国の連続購入という支援材料が前回に続き健在。9月の新穀年度入り後も中国向けの追加購入が伝えられている。
要因の連続性
- 継続要因: ホルムズ海峡の地政学リスクそのもの、9月FOMC(9月16日)を巡る利上げ観測の神経質な織り込み、天然ガスのLNG輸出増加、大豆の中国連続購入はいずれも前回に続き作用している。
- 新規要因: (1) 米露停戦交渉の急展開(ウィトコフ・クシュナー両特使のモスクワ・キーウ訪問、プーチン氏のキーウ攻撃72時間停止表明)が小麦の戦争プレミアムを一段と押し下げる方向に働いている、(2) 米軍によるイラン原油タンカー3隻の破壊(9月5日)が原油の供給不安を再び強めている。
- 解消した要因: 特になし。週末で相場自体は動いていないが、地政学リスクは原油側(ホルムズ)でむしろ悪化、穀物側(黒海)ではやや後退する方向と、明暗が分かれた週末だった。
1. 価格サマリー(2026年9月4日(金)NY市場終値。週末休場のため前回と同値、日本時間2026年9月6日時点で更新なし)
| 商品 | 価格 | 前日比(9/3→9/4、参考) |
|---|---|---|
| 金(オンス建て) | 4,429.83 USD/oz | -0.95% |
| 銀(オンス建て) | 66.15 USD/oz | -1.22% |
| WTI原油(期近) | 91.20 USD/バレル | -0.51% |
| ブレント原油(期近) | 95.79 USD/バレル | -0.03% |
| 天然ガス(ヘンリーハブ期近) | 2.94〜2.98 USD/MMBtu | +0.56%(週間では4週連続高) |
| 小麦(シカゴ期近) | 716.00 セント/ブッシェル | -1.72% |
出典: Mansfield Energy、Natural Gas Intelligence。金・銀・小麦の終値は前回レポート時点の値を継続表示。
2. 商品別動向
金・銀
週末は市場休場のため新規の値動きはないが、deMeadvilleによれば、金は今年14回目となる週足の長期パラボリック上昇トレンドの中にありながら、2週連続の週間下落となった。週半ば(水曜)には4,329ドルまで下押しする場面もあり、金曜終値ベースでは週間-0.6%(-27ポイント)。同記事は「BEGOS市場評価ライン(4,358ドル)を+119ポイント上回る水準にあり、この評価ラインを明確に下抜けた場合はさらなる下落を想定すべき」との目安を示している。銀はFXStreetによれば66.00〜66.40ドル帯のレジスタンスを試す展開が続いており、9月FOMC(9月16日)での利上げ観測を巡る神経質な相場は前回から変わっていない。 出典: deMeadville、FXStreet
原油
Mansfield Energyによれば、WTIは週初84.69ドルから金曜91.67ドルへと週間で約7ドル(8.2%)上昇した。米制裁の影響でイランの原油積み出しは月間日量約26万バレルまで落ち込み(前年同月の約170万バレルから急減)、イラン国内ではガソリン供給が2カ月分枯渇したと伝えられるなど、イラン経済への打撃は深刻化している。そこへAl Jazeeraが伝えた9月5日の米軍によるイラン原油タンカー3隻破壊が加わり、ホルムズ海峡を巡る緊張はむしろ悪化した。大手タンカー運航会社の商船三井は、ホルムズ海峡の混乱が年内正常化しないとの見方を示しているという。 出典: Mansfield Energy、Al Jazeera
天然ガス
Natural Gas Intelligenceによれば、期近限月は4週連続の週間上昇となり、晩夏の猛暑による冷房需要とLNG輸出向けフィードガス流量の増加(主要9基地合計で日量18.3bcfへ拡大)が支援材料。一方で記録的な生産水準が上値を抑える構図に変化はなく、前回からの継続テーマとなっている。 出典: Natural Gas Intelligence
農産物
小麦は前回終値716.00セントから休場で変わらずだが、Investing.comによれば金曜のシカゴ相場自体、米露停戦交渉の報道を受けて続落していた。週末に入りCNNが伝えた通り米特使のモスクワ・キーウ訪問が実現しており、月曜の取引再開時に黒海の戦争プレミアムがどこまで剥落するかが焦点となる。Ag Bull Tradingは、国際穀物理事会(IGC)が世界の小麦生産見通しを4百万トン引き下げ8億1,700万トンとしたこと、期末在庫見通しも約2億7,500万トンへ縮小したことを指摘しており、停戦交渉が進んでも供給側の逼迫感自体は簡単には消えないとの見方を示している。トウモロコシ・大豆は前回終値からの継続で、大豆は中国の連続購入という支援材料が引き続き効いている。 出典: Investing.com、CNN、Ag Bull Trading
3. 急変動の特集
週末は休場のため本日新たに±3%超の値動きをした商品はない(特集なし)。前回「急変動の特集」で扱った商品のその後は以下の通り。
- 小麦(前回特集のフォロー): 価格自体は休場で716.00セントのまま動いていないが、CNNが伝えた米露停戦交渉の急展開により、月曜再開後に戦争プレミアムがさらに剥落する可能性がある。一方でAg Bull TradingはIGCの生産見通し下方修正を根拠に、供給逼迫という下支え自体は残ると指摘しており、パン・麺類など食品価格への転嫁圧力が完全に消えたとは言えない。 出典: CNN、Ag Bull Trading
- 金・銀(前回特集のフォロー): 前回の反落基調が休場中も技術的には尾を引いており、deMeadvilleは2週連続の週間下落を指摘。長期の上昇トレンド自体は維持されているとの見方だが、評価ラインを下抜けるようだとさらなる下落の目安になるとされる。 出典: deMeadville
- 原油(前回特集のフォロー): 前回強調したホルムズ海峡の通航船舶急減という悪材料は解消されるどころか、Al Jazeeraが伝えた9月5日の米軍によるイラン原油タンカー3隻破壊で一段と悪化した。イラン側が報復すればさらなる緊張激化もあり得る局面。 出典: Al Jazeera
4. 強気派 vs 弱気派
金・銀
- 強気: Kitco Newsが伝えたCPMグループのトレードシグナル(9月1日付)は、目先は戦術的な売りシグナルを出しつつも、中期目標を4,692ドル(近い目標)・4,900ドル(30〜60日の目標)に据え置いており、直近の下落は「FRB議長発言への超短期的な反応に過ぎない」との見方を示している。 出典: Kitco News
- 弱気: deMeadvilleは、2週連続の週間下落を「3週連続なら通常はトレンド転換のシグナル」と位置づけ、市場評価ラインを下抜ける場合はさらなる下落を想定すべきと警告している。9月16日のFOMCを控えた利上げ観測の根強さも上値を抑える要因として意識されている。 出典: deMeadville
原油
- 強気: Mansfield Energyは、イラン原油積み出しの急減とホルムズ海峡の混乱長期化見通し(商船三井予想:年内正常化せず)を根拠に、当面は供給不安主導での高止まりを予想。Al Jazeeraが伝えた9月5日の米軍によるイラン船舶破壊も、この見方を裏付ける新たな材料となった。 出典: Mansfield Energy、Al Jazeera
- 弱気: OilPrice.comによれば、OPECとIEAはそろって2026年の需要見通しを引き下げており、IEAは2026年の需給を日量最大384万バレルの供給過剰と試算。地政学リスクによる目先の高値とは裏腹に、中期的には供給過剰が上値を抑える構造的な弱気材料として指摘されている。 出典: OilPrice.com
穀物(小麦)
- 強気: Ag Bull Tradingは、国際穀物理事会(IGC)が世界の小麦生産見通しを4百万トン引き下げ8億1,700万トン、期末在庫見通しを約2億7,500万トンへ縮小したことを根拠に、黒海リスクが仮に和らいでも需給の逼迫感自体は簡単には消えないとの見方を示している。 出典: Ag Bull Trading
- 弱気: Investing.comは、米露停戦交渉の進展報道を受けてトレーダーの間で黒海の戦争プレミアムが後退するとの見方が広がっていると指摘。ウィトコフ・クシュナー両特使のモスクワ・キーウ訪問が実際に停戦へつながれば、一段の下落材料になるとの見立てを伝えている。 出典: Investing.com
5. 地政学・物価関連ニュース
週末最大のニュースは米露間の停戦交渉の急展開である。CNNによれば、トランプ大統領の特使ウィトコフ氏・クシュナー氏は「戦争を終わらせるための提案」を携え土曜日にモスクワ入りし、プーチン氏はキーウへの攻撃を72時間停止するよう指示。両特使は日曜日にキーウでゼレンスキー氏とも会談する見通しで、2026年1月のトランプ政権発足以来、両特使にとって初のキーウ訪問となる。実現すれば黒海経由の穀物輸出正常化への期待が高まり、小麦を中心とした食品価格の押し下げ要因となり得る。 一方でホルムズ海峡を巡る緊張はむしろ悪化した。Al Jazeeraによれば、イラン革命防衛隊が米海軍艦艇に弾道ミサイルを発射(命中せず)したことへの報復として、米中央軍は9月5日にイラン原油タンカー3隻を破壊。トランプ大統領はイランが報復すればさらに強い打撃を与えると警告しており、原油供給への懸念とエネルギーコストを通じたインフレ圧力は後退していない。9月16日のFOMCに向けては利上げ観測が神経質に織り込まれており、ドル高・実質金利上昇を通じて金・銀の重しになる構図が続いている。 出典: CNN、Al Jazeera
6. テクニカル分析
金: deMeadvilleによれば、上値のレジスタンスは4,650〜4,694ドル、下値の構造的サポートは4,366〜4,509ドルとされる水準。市場評価ライン(4,358ドル)からのかい離(+119ポイント)が大きく、これを下抜ければさらなる下落を想定すべきとされる。21日回帰トレンドの一致度指標(いわゆる「ベビーブルー」)はゼロ近辺への低下が進んでおり、上昇モメンタムの鈍化を示唆するとされる水準。あくまで目安であり、断定的な売買判断ではない。 出典: deMeadville
銀: FXStreetによれば、66.00〜66.40ドル帯のレジスタンスを上放れれば67.17〜67.93ドルが視野に入る一方、65.15ドルを割り込むと63.90ドル方向への調整もあり得るとされる水準。100日指数移動平均線(65.20ドル付近)が下値の支持線として意識されており、RSIは58前後と、まだ買われすぎ水準には達していないとされる。 出典: FXStreet
WTI原油: 前回示されたフィボナッチ38.2%押しの87.50ドル付近が下値の支持帯、94.91ドル付近が上値のレジスタンスとされる水準に大きな変化はなく、金曜終値91.20〜91.67ドルはレンジ中間からやや上寄りで推移している。FXStreetが伝えたCFTC建玉明細(8月25日〜9月1日の週)では、WTIの投機筋ネットロングは6,500枚増の12万9,900枚となったが、これは過去のレンジで見るとまだ15パーセンタイルの低水準にとどまる。価格が週間で約1割上昇した割に投機筋の買い持ちの積み上がりは限定的で、「地政学リスクによる急騰の持続性に対し、投機筋がなお懐疑的」とも解釈できるとされる水準。 出典: FXStreet
天然ガス: 50%フィボナッチ・リトレースメント水準である2.97ドル付近が引き続き上値の壁として意識されており、Natural Gas Intelligenceが伝えた直近の高値2.976ドルはこの水準にほぼ達している。記録的な生産水準を踏まえると、これを明確に上抜けられるかが当面の焦点とされる水準。 出典: Natural Gas Intelligence
小麦: 8月28日の3年ぶり高値からの調整局面が続くが、Ag Bull Tradingは目先の下落について大きな技術的損傷を伴っていないと指摘。200日移動平均線に接近する水準を維持しており、米露停戦交渉が難航すれば黒海リスクの再燃で急反発する余地も残るとされる水準。 出典: Ag Bull Trading
投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): FXStreetによれば、直近週(8月25日〜9月1日)の金の投機筋ネットロングは1万5,200枚減の22万8,100枚となり、2月上旬以来最大の週間減少幅を記録した。それでも過去のレンジでは96パーセンタイルと依然として歴史的な高水準にあり、「価格の下落幅の割にポジション調整は限定的」とされる。全体として投機筋の持ち高は「より守りの姿勢」に傾いたとの評価。 出典: FXStreet

