前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • OPECプラスが10月の生産方針を据え置き、6カ月連続増産に一旦区切り: The Nationalによれば、OPECプラスは9月6日のオンライン会合で10月の生産量を据え置くことを決定した。2023年に発表した日量165万バレルの減産調整については10月中に解除を完了する予定だが、それ以降は日量13万7,000バレルという小刻みなペースでの増産にとどめる方針。イラン戦争の先行き不透明感が主因とされ、米国防総省は戦闘が来年まで続く可能性を報告しているという。前回レポート時点では価格動向のみが焦点だったが、供給サイドの公式決定が新たに加わった。 出典: The National
  • 米特使団がキーウ訪問、ゼレンスキー氏と会談: Al Jazeeraによれば、ウィトコフ氏・クシュナー氏は前日のモスクワでのプーチン氏との会談に続き、2022年の全面侵攻以降で初めてキーウを訪問し、ゼレンスキー氏と会談した。両氏は「非常に有意義で実質的な議論」と評価し、クシュナー氏は「現在の戦争を終わらせるだけでなく、長期的で持続可能な平和の条件を作る」ことを目指すと述べた。ただし領土問題など核心的な論点は指導者級の交渉に持ち越されており、具体的な合意には至っていない。ホワイトハウス関係者は「次のステップは数週間以内に発表される」としており、前回レポートで報じた「モスクワ入り」からさらに一歩進んだ段階に移った。 出典: Al Jazeera
  • イランが報復、タンカーと無人機を標的に: Yahoo Finance(Bloomberg)によれば、イラン革命防衛隊海軍は9月6日、ホルムズ海峡の無許可ルートを通過していたタンカー3隻と米国関連船舶、さらに米軍の無人機・無人水上艇を標的にしたと発表した。命中したかどうかは確認されていないが、これは前回レポートで報じた米軍によるイラン原油タンカー3隻の破壊(9月5日)への「タンカー・フォー・タンカー」政策に基づく報復とされる。イラン軍は米国が攻撃を続ければ「より深刻な」報復を行う可能性があると警告しており、9月6日のホルムズ海峡を通過した商用船はわずか1隻にとどまったという。 出典: Yahoo Finance(Bloomberg)

昨日と同じこと(継続)

  • 商品先物市場(COMEX・NYMEX・CBOT等)は9/5-9/6の週末に続き、9/7(月)も米レイバーデーの祝日で休場。CMEグループは同日分の清算値を公表しないため、金・銀・WTI・ブレント・天然ガス・小麦のいずれも金曜(9/4)終値から3営業日連続で更新がない状態が続いている。 出典: The National
  • 天然ガスはLNG輸出増加と猛暑による需要という構図が前回に続き継続。Natural Gas Intelligenceによれば、主要LNG輸出基地への供給量は日量18.3bcfd(8月の17.2bcfdから拡大)で高水準を維持している。 出典: Natural Gas Intelligence
  • 大豆は中国の連続購入という支援材料が前回に続き健在。9月に入ってからの中国向け新規購入は累計で50万トンを超える規模になっているとされる。

要因の連続性

  • 継続要因: ホルムズ海峡そのものの地政学リスク(商用船通航の激減)、9月FOMC(9月16日)を巡る利上げ観測、天然ガスのLNG輸出増加、大豆の中国連続購入はいずれも前回に続き作用している。
  • 新規要因: (1) OPECプラスの10月生産据え置き決定という供給サイドの公式材料が新たに加わった、(2) イランの報復(タンカー・無人機攻撃)によりホルムズ海峡の緊張がさらに一段悪化した、(3) 米特使団のキーウ訪問進展という和平プロセス側の新規材料が、穀物(小麦)の戦争プレミアムをさらに押し下げる方向に働いている。
  • 解消した要因: 完全に消えた要因はないが、CNBCが伝えるように9月FOMCの利上げ観測は「五分五分」に近い水準まで拮抗しつつあり、前回までの「利上げがほぼ確実視」という強い前提はやや後退している。

1. 価格サマリー(2026年9月4日(金)NY市場終値。9/5-9/6の週末に続き9/7(月)も米レイバーデーで商品先物市場が休場のため、日本時間2026年9月7日時点でも更新なし)

商品 価格 前日比(9/3→9/4、参考)
金(オンス建て) 4,429.83 USD/oz -0.95%
銀(オンス建て) 66.15 USD/oz -1.22%
WTI原油(期近) 91.20 USD/バレル -0.51%
ブレント原油(期近) 95.79 USD/バレル -0.03%
天然ガス(ヘンリーハブ期近) 2.94〜2.98 USD/MMBtu +0.56%(週間では4週連続高)
小麦(シカゴ期近) 716.00 セント/ブッシェル -1.72%

出典: The National、Natural Gas Intelligence。いずれも直近取引日(9/4)の値を継続表示。

2. 商品別動向

金・銀

金は3営業日連続で新規の値付けがない状態が続くが、LiteFinanceの分析では、目先はレンジ4,441〜4,510ドル付近でのもみ合いが想定される一方、より広いレンジで見ると4,314〜4,646ドルの範囲での方向感探りとされている。同分析は、短期トレンドは強気に転じつつあるものの、150日移動平均線は依然として下向きで、より長期には高値・安値とも切り下がる形が続いているとし、強気・弱気どちらとも言い切れない状況だと指摘する。銀については、GoldSilver.comが、金や鉱山株、銅の強さに比べて銀は「見劣りする」と評し、100日移動平均線を明確に上抜けられずにいると指摘している。9月FOMC(9月16日)を巡る神経質な相場という構図は前回から変わっていない。 出典: LiteFinance、GoldSilver.com

原油

The Nationalによれば、OPECプラスは9月6日、6カ月連続の増産の後、10月の生産方針を据え置くことを決定した。ホルムズ海峡が「事実上の閉鎖状態」にあり、世界の石油・LNG供給の約2割を運ぶ同海峡の通航量が戦前の1日100隻超から数隻規模まで激減している状況を踏まえた判断とされる。EnergyNow.comは、原油が直近5週間の高値圏を維持していると伝え、米国とイランの戦闘継続がホルムズ海峡のリスクを高止まりさせているとの見方を示す。そこへYahoo Finance(Bloomberg)が伝えた9月6日のイランによる報復(タンカー・無人機標的化)が加わり、供給不安はむしろ強まっている。 出典: The National、EnergyNow.com、Yahoo Finance(Bloomberg)

天然ガス

Natural Gas Intelligenceによれば、猛暑による冷房需要とLNG輸出向けフィードガス流量の増加(主要9基地合計で日量18.3bcfdへ拡大)を背景に、価格は直近8週間で最高値となる2.98ドル付近まで上昇する場面があった。一方でEIAは記録的な生産水準を踏まえ、2026年通年のヘンリーハブ価格見通しを7月時点の3.67ドルから3.44ドルへ6%超下方修正しており、供給の潤沢さが上値を抑える構図に変化はない。前回からの継続テーマである。 出典: Natural Gas Intelligence

農産物

小麦は休場のため前回終値716.00セントから変わらずだが、Investing.comによれば金曜のシカゴ相場自体、米露停戦交渉の報道を受けて続落していた。Trading Economicsは、小麦が直近1カ月の高値圏に近い水準にあり、ロシアが輸出量急減(8月は前年比5割超減)を受けて年末までの輸出関税(フローティング・デューティー)停止を継続していることが下値を支える一因になっていると指摘する。週末に実現した米特使団のキーウ訪問進展を受け、月曜(祝日明けは火曜取引再開)に戦争プレミアムがどこまで剥落するかが焦点となる。大豆は中国の連続購入という支援材料が引き続き効いており、トウモロコシは前回終値からの継続。 出典: Investing.com、Trading Economics

3. 急変動の特集

本日は米レイバーデーで主要商品先物市場が休場のため、新規に±3%超の値動きをした商品はない(特集なし)。前回「急変動の特集」で扱った商品のその後は以下の通り。

  • 原油(前回特集のフォロー): 前回強調したホルムズ海峡の緊張は、Yahoo Finance(Bloomberg)が伝えた9月6日のイランによる報復(タンカー・無人機標的化)により一段と悪化した。そこへThe Nationalが伝えたOPECプラスの10月据え置き決定が加わり、供給不安と公式な生産抑制方針が重なる形になっている。イラン側は米国が攻撃を続ければ「より深刻な」報復を行う可能性を警告しており、エネルギーコストを通じたインフレ圧力は後退していない。 出典: Yahoo Finance(Bloomberg)、The National
  • 小麦(前回特集のフォロー): 価格自体は休場で716.00セントのまま動いていないが、Al Jazeeraが伝えた米特使団のキーウ訪問進展により、戦争プレミアムの剥落が続く可能性がある。一方Trading Economicsはロシアの輸出急減という供給側の逼迫要因が残っていると指摘しており、パン・麺類など食品価格への転嫁圧力が完全に消えたわけではない。 出典: Al Jazeera、Trading Economics
  • 金・銀(前回特集のフォロー): 前回指摘した2週連続の週間下落という反落基調について、LiteFinanceは短期的には強気転換の兆しがあるとしつつ、長期では高値・安値とも切り下がる形が続いていると指摘しており、判断がなお分かれる局面が続いている。 出典: LiteFinance

4. 強気派 vs 弱気派

金・銀

  • 強気: LiteFinanceは、短期トレンドが強気に転じつつあるとし、9月中の高値目標を5,051ドル程度とする強気シナリオも示している。 出典: LiteFinance
  • 弱気: LiteFinanceは同時に、150日移動平均線が依然として下向きで、長期では高値・安値とも切り下がるパターンが続いているとし、保守的なシナリオでは9月末時点でも4,443.91ドル程度にとどまるとの見方も示している。銀についてはGoldSilver.comが、金や鉱山株、銅の強さに対して銀が見劣りしており、100日移動平均線を明確に上抜けられていない点を弱気材料として挙げている。 出典: LiteFinance、GoldSilver.com

原油

  • 強気: EnergyNow.comは、米国とイランの戦闘継続によりホルムズ海峡のリスクが高止まりしていることを根拠に、原油が直近5週間の高値圏を維持すると見ている。The Nationalが伝えたOPECプラスの10月据え置き決定も、供給を絞る方向として同じ見方を裏付ける。 出典: EnergyNow.com、The National
  • 弱気: The Nationalによれば、OPECプラスは10月以降も日量13万7,000バレルペースでの増産自体は継続する方針であり、地政学リスクによる目先の高値とは裏腹に、中期的には供給が緩やかに積み上がっていく構造は変わっていないとの見方もできる。 出典: The National

穀物(小麦)

  • 強気: Trading Economicsは、ロシアの小麦輸出が8月に前年比5割超減少し、ロシア政府が年末まで輸出関税の停止を継続していることを根拠に、需給の引き締まり自体は簡単には解消しないとの見方を伝えている。 出典: Trading Economics
  • 弱気: Investing.comは、米露停戦交渉の進展報道を受けてトレーダーの間で黒海の戦争プレミアムが後退するとの見方が広がっていると指摘。Al Jazeeraが伝えた米特使団のキーウ訪問進展が続けば、一段の下落材料になるとの見立てを伝えている。 出典: Investing.com、Al Jazeera

5. 地政学・物価関連ニュース

週末最大のニュースは米露間の和平プロセスの進展である。Al Jazeeraによれば、ウィトコフ氏・クシュナー氏は前日のモスクワでのプーチン氏との会談に続き、2022年の全面侵攻以降で初めてキーウを訪問しゼレンスキー氏と会談。「非常に有意義で実質的な議論」との評価が示された一方、領土問題など核心的な論点は指導者級の交渉に持ち越されており、ホワイトハウス関係者は「次のステップは数週間以内に発表される」としている。実現すれば黒海経由の穀物輸出正常化への期待が高まり、小麦を中心とした食品価格の押し下げ要因となり得る。 一方でホルムズ海峡を巡る緊張はむしろ悪化した。Yahoo Finance(Bloomberg)によれば、イラン革命防衛隊は9月6日、米国関連船舶や米軍の無人機・無人水上艇を標的にしたと発表し、米国がさらに攻撃を続ければ「より深刻な」報復を行う可能性があると警告した。The Nationalは、こうした不透明感を理由にOPECプラスが10月の生産方針を据え置いたと伝えており、原油供給への懸念とエネルギーコストを通じたインフレ圧力は後退していない。9月16日のFOMCに向けては、CNBCが伝えるように利上げ観測が「五分五分」に近い水準まで拮抗しており、前回までの強い織り込みからはやや後退しつつも、なお神経質な相場地合いが続いている。 出典: Al Jazeera、Yahoo Finance(Bloomberg)、The National、CNBC

6. テクニカル分析

金: LiteFinanceによれば、目先は4,441〜4,510ドル付近でのもみ合いが想定される水準で、より広いレンジでは下値サポート4,314ドル・上値レジスタンス4,646ドルが意識されているとされる。短期トレンドは強気に転じつつあるとされる一方、150日移動平均線は依然として下向きで、長期では高値・安値とも切り下がる形が続いており、判断が分かれる局面とされる。あくまで目安であり、断定的な売買判断ではない。 出典: LiteFinance

銀: GoldSilver.comによれば、銀は金・鉱山株・銅の強さに比べて出遅れており、100日移動平均線を明確に上抜けられていない状態とされる。この移動平均線を上抜けられるかどうかが、当面のモメンタム転換の目安とされる水準。 出典: GoldSilver.com

WTI原油: EnergyNow.comによれば、価格は直近5週間の高値圏を維持しているとされる水準で、金曜終値91.20〜91.67ドルはこのレンジの上寄りに位置する。The Nationalが伝えたOPECプラスの10月据え置き決定を受け、当面は地政学リスクとOPECプラスの供給方針の綱引きの中でのレンジ推移が想定されるとされる水準。 出典: EnergyNow.com、The National

天然ガス: Natural Gas Intelligenceによれば、直近の高値2.98ドルは過去8週間で最高値の水準とされ、これを明確に上抜けられるかが当面の焦点とされる。一方でEIAによる2026年通年見通しの下方修正(3.67ドル→3.44ドル)は、記録的な生産水準が上値を抑え続けるとの見方を裏付けるとされる水準。 出典: Natural Gas Intelligence

小麦: Trading Economicsによれば、直近1カ月の高値圏に近い水準を維持しているとされ、ロシアの輸出急減という供給側の逼迫要因が下値を支えているとされる。米露和平プロセスが難航すれば、黒海リスクの再燃で急反発する余地も残るとされる水準。 出典: Trading Economics

投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): 週末から祝日にかけて新規のCFTC建玉明細の公表はなく、直近判明分(8月25日〜9月1日の週)から大きな変化があったかは9月11日発表予定の次回分を待つ必要がある。