前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 米8月雇用統計が予想を大幅に上回り、金・銀が前日の急伸から一転反落: Yahoo Financeによると、8月の非農業部門雇用者数は予想5.3万人増(一部予想は5.6万人)に対し16.2万人増と3月以来の高い伸びとなり、失業率は4.1%で横ばい、平均時給も前月比0.3%増(前年比3.1%増)と底堅かった。これを受けFXStreetによれば、9月FOMCでの利上げ確率はドルの上昇とともに54%から61%へ再上昇し、金は日中一時2%超下落したのち4,429.83ドル(前回4,472.22ドルから-0.95%)で終えた。銀も66.15ドル(前回66.97ドルから-1.22%)へ反落し、前日までの続伸から一転した。 出典: Yahoo Finance、FXStreet
  • ホルムズ海峡の通航船舶が急減、供給不安が再び強まる: Investing.com(Reuters)によれば、木曜のホルムズ海峡通航船舶数は4隻にとどまり、直近10日平均の約15隻を大きく下回った。前回は米エネルギー長官が「開戦後最高の日量1,700万バレル」に達したと発言し供給不安の後退が話題になったが、本日は一転して通航の目詰まりが深刻化していることが明らかになった。原油自体の当日値動きは限定的だったが、The Nationalによれば週間ではブレントが約5%、WTIが約7%上昇し、7月中旬以来の大幅な週間上昇となった。ウクライナによるロシア製油所への攻撃も重なり、米国内のディーゼル価格は過去最高値を更新した。 出典: Investing.com、The National
  • 小麦の下落が継続、ただし黒海の物理的リスクは残る: 小麦は716.00セント(前回728.50セントから-1.72%)へさらに下落し、プーチン氏の停戦協議示唆を受けた木曜の急落分を本日も一部消化した。Ag Bull Tradingは「和平示唆は戦争プレミアムを一時的に剥落させたに過ぎない」との見方を示しており、黒海での商船攻撃自体が解消したわけではない点は前回から変わっていない。 出典: Ag Bull Trading、Trading Economics(小麦)

昨日と同じこと(継続)

  • 砂糖は18.02セント(前回17.99セントから+0.17%)、カカオは6,175ドル(前回6,140ドルから+0.57%)といずれも小幅な戻りにとどまり、前回の急落からは下げ止まりつつあるが、2025年4月以来の高値圏でのもみ合いという構図自体は継続している。
  • トウモロコシは512.00セント(前回515.25セントから-0.63%)、大豆は1,294.25セント(前回1,300.25セントから-0.46%)といずれも小動きが続いた。大豆は中国が9月に入ってからも136,000トン・202,000トン・192,000トンと連日の追加購入を続けており、支援材料は前回に続き健在。
  • 天然ガスは2.94ドル(前回2.92ドルから+0.56%)と、高値圏でのもみ合いを継続。猛暑による冷房需要とLNG輸出増加という支援材料、記録的な生産水準という上値抑制材料の綱引きも前回と変わらない。

要因の連続性

  • 継続要因: ホルムズ海峡の地政学リスクそのもの、黒海での商船攻撃の継続、中国の大豆連続購入、天然ガスのLNG輸出増加はいずれも前回に続き作用している。
  • 新規要因: (1) 米8月雇用統計の大幅な上振れによる9月利上げ観測の再燃(54%→61%)、(2) ホルムズ海峡通航船舶数が10日平均の4分の1程度まで急減したことによる供給不安の再燃、(3) ウクライナによるロシア製油所攻撃で米ディーゼル価格が過去最高値を更新したこと。
  • 解消した要因: 前回「新規要因」に挙げた「FRBのハト派傾斜による9月利上げ観測の後退(66〜70%→54%)」は、本日の雇用統計で早くも巻き戻り、61%まで再上昇した。1日で観測が反転する形となり、金・銀の上昇要因として機能した期間はごく短命に終わった。前回「解消した」としたホルムズ海峡の供給不安後退についても、本日は逆に悪化方向へ戻っている。

1. 価格サマリー(2026年9月4日(金)NY市場終値時点、日本時間では2026年9月5日早朝に相当)

商品 価格 前日比
金(オンス建て) 4,429.83 USD/oz -0.95%
銀(オンス建て) 66.15 USD/oz -1.22%
WTI原油(期近) 91.20 USD/バレル -0.51%
ブレント原油(期近) 95.79 USD/バレル -0.03%
天然ガス(ヘンリーハブ期近) 2.94 USD/MMBtu +0.56%
小麦(シカゴ期近) 716.00 セント/ブッシェル -1.72%
トウモロコシ(シカゴ期近) 512.00 セント/ブッシェル -0.63%
大豆(シカゴ期近) 1,294.25 セント/ブッシェル -0.46%
砂糖(ICE期近) 18.02 セント/ポンド +0.17%

出典: Trading Economics(金)、Trading Economics(銀)、Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)、Trading Economics(天然ガス)

2. 商品別動向

金・銀

金は4,429.83ドル(-0.95%)、銀は66.15ドル(-1.22%)で取引された。Yahoo Financeによれば、8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想5.3万人増を大きく上回る16.2万人増(3月以来の高い伸び)、失業率4.1%で横ばい、平均時給も前年比3.1%増と底堅い内容だった。FXStreetによれば、この結果を受けて9月FOMCでの利上げ確率は54%から61%へ上昇し、ドルと米長期金利が上昇。金利を生まない金・銀にとっては前日までの上昇要因が一転して逆風となった。IBTimesは、ウォラー理事のハト派発言とウォーシュ議長のタカ派発言、ウィリアムズ総裁のハト派寄り発言が交錯する中で市場が方向感を模索していたと伝えている。 出典: Yahoo Finance、FXStreet

原油

WTIは91.20ドル(-0.51%)、ブレントは95.79ドル(-0.03%)とほぼ横ばいで終えた。もっともThe Nationalによれば、週間ではブレントが約5%、WTIが約7%上昇し、7月中旬以来の大幅高となった。Investing.com(Reuters)は、木曜のホルムズ海峡通航船舶数がわずか4隻にとどまり、直近10日平均の約15隻を大きく下回ったと報じており、供給不安が再燃している。一方でイラクは8月の輸出量を日量234万バレル(7月の135万バレルから拡大)へ増やしたほか、ホルムズ海峡を通過するタンカーの追加確保を進めているとも伝えられており、供給正常化に向けた動きも並行して続いている。 出典: Investing.com、The National

天然ガス

天然ガスは2.94ドル(+0.56%)と、前回に続き高値圏でのもみ合いを継続した。猛暑による冷房需要とコーパスクリスティ・フリーポートのLNG輸出増加が支援材料である一方、記録的な生産水準が上値を抑えている構図に変化はない。 出典: Trading Economics(天然ガス)

農産物

小麦は716.00セント(-1.72%)へさらに下落し、プーチン氏の停戦協議示唆を受けた木曜の急落分を本日も一部消化した。トウモロコシは512.00セント(-0.63%)、大豆は1,294.25セント(-0.46%)といずれも小動き。Trading Economics(大豆)によれば、米農務省(USDA)は中国向けに9月1日の13.6万トン、翌日の20.2万トン、さらに19.2万トンの新規販売を確認しており、中国は2028年までに年間2,500万トンの購入枠を積み増す方針を続けている。砂糖は18.02セント(+0.17%)、カカオは6,175ドル(+0.57%)といずれも小幅高で、前回の急落から下げ止まりの兆しを見せている。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(大豆)、Trading Economics(砂糖)、Trading Economics(カカオ)

3. 急変動の特集

本日新たに±3%超の値動きをした商品は該当なし(小麦の-1.72%が最大)。前回「急変動の特集」で扱った商品のその後は以下の通り。

  • 小麦(前回特集のフォロー): 716.00セントへさらに下落したが、Ag Bull Tradingは「和平示唆による戦争プレミアムの剥落は一時的な可能性がある」と指摘しており、黒海での商船攻撃自体が解消していない以上、パン・麺類など食品価格への転嫁圧力が完全に消えたわけではない。 出典: Ag Bull Trading
  • 砂糖・カカオ(前回特集のフォロー): いずれも小幅高に転じ、急落一巡による下げ止まりの兆しがみられる。もっとも2025年4月以来の高値圏という水準自体は変わっておらず、食品・飲料メーカーの調達コスト高止まりは続く見込み。 出典: Trading Economics(砂糖)
  • 金・銀(前回特集のフォロー): 前回の急伸から一転して反落した。FRBのハト派傾斜という前回の追い風は、本日の雇用統計で早くもかき消された。 出典: FXStreet
  • 原油(前回特集のフォロー): 当日の値動きは限定的だったが、ホルムズ海峡の通航船舶急減という新たな悪材料が加わり、週間では大幅高となった。前回強調した「供給正常化の兆し」は本日のデータで後退した。 出典: Investing.com

4. 強気派 vs 弱気派

金・銀

  • 強気: Kitco Newsが伝えたウォール街調査(アナリスト19人)では84%が強気、Adrian Day Asset ManagementのAdrian Day氏は「金の底は入った」と述べ、労働市場の軟化がFRBの利上げ圧力を弱めるとの見方を示した。中央銀行の継続的な金購入も構造的な下支え要因として引き続き挙げられている。 出典: Kitco News
  • 弱気: FXStreetは、好調な雇用統計を受けて9月利上げ観測が61%まで上昇し、ドル高・金利上昇が金の重しになっていると指摘。テクニカル面でもRSIが強気圏から50近辺の中立水準へ低下しつつあり、200日移動平均線(4,534ドル付近)が上値の抵抗として意識されるとしている。 出典: FXStreet

原油

  • 強気: The Nationalによれば、Citiは2026年第3四半期のブレント予想を80ドルから86ドルへ引き上げ、ANZも短期的なブレント予想を95ドルへ引き上げた。いずれもホルムズ海峡の正常化長期化を根拠としている。 出典: The National
  • 弱気: JPモルガンは構造的に弱気の立場を維持しており、ブレント価格は2026年第3四半期に平均86ドル程度、第4四半期には80ドル程度、年末には78ドル前後まで低下すると予想している(前回から見方に変化なし)。イラクの原油輸出増加や追加タンカー確保の動きも、供給不安の後退材料として弱気派の根拠となっている。 出典: JPモルガン

穀物(小麦)

  • 強気: Ag Bull Tradingは、プーチン氏の和平示唆による下落は一時的な可能性があるとし、黒海での商船攻撃自体は継続しているため戦争プレミアムが完全に消えたわけではないとの見方を示している。 出典: Ag Bull Trading
  • 弱気: Investing.comは、プーチン氏の停戦協議示唆に加えトルコが穀物輸出の安全航行について協議していると報じ、黒海戦争プレミアムの後退を主張するトレーダーが多いとしている。 出典: Investing.com

5. 地政学・物価関連ニュース

米・イラン間の軍事的緊張は続いており、Investing.com(Reuters)によれば木曜のホルムズ海峡通航船舶数はわずか4隻と、直近10日平均の約15隻を大きく下回った。前回強調された「通航量の回復」は短命に終わり、供給不安が再び強まっている。同時にウクライナによるロシア製油所への攻撃も重なり、米国内のディーゼル価格は過去最高値を更新したとThe Nationalが伝えている。エネルギー価格の高止まりは電気代・輸送コストを通じたインフレ圧力として意識される一方、Yahoo Financeが伝えた予想を大幅に上回る雇用統計は、FRBの金融引き締め継続観測を強め、ドル高を通じてコモディティ全般の重しにもなっている。黒海の穀物供給不安は和平協議への期待でやや後退したが、商船攻撃自体は続いており、根本的な解消には至っていない。 出典: Investing.com、Yahoo Finance

6. テクニカル分析

金: IBTimesによれば、下値のサポートは100日移動平均線の4,354ドル付近、上値のレジスタンスは200日移動平均線の4,534ドル付近とされる。本日終値4,429.83ドルは両者の中間で推移しており、前回上抜けていた短期の移動平均線(21日線、4,449ドル付近)を下回る水準まで押し戻された。RSIは強気圏から50の中立水準に向けて低下しつつあり、上昇モメンタムがやや鈍化していることを示唆するとされる水準。あくまで目安であり、断定的な売買判断ではない。 出典: IBTimes

銀: 前回示された水準では、レジスタンスは67.16ドル、その上に100日移動平均線の68ドル付近。サポートは65.50ドル、その下に50日移動平均線の61ドル付近。本日終値66.15ドルはこのレンジ内でのもみ合いにとどまり、金同様、雇用統計を受けた上昇モメンタムの鈍化が意識される水準。 出典: Trading Economics(銀)

WTI原油: 前回示されたフィボナッチ38.2%押しの87.50ドル付近が下値の支持帯、94.91ドル付近が上値のレジスタンスとされる水準に大きな変化はなく、本日終値91.20ドルはレンジ中間で推移している。あくまで目安となる水準で、断定的な売買判断ではない。 出典: Trading Economics(WTI)

天然ガス: 50%フィボナッチ・リトレースメント水準である2.97ドル付近が引き続き上値の壁として意識されており、本日終値2.94ドルはこの水準にわずかに届かない位置で推移している。記録的な生産水準を踏まえると、当面この付近が上値抵抗として意識され続けるとされる水準。 出典: Trading Economics(天然ガス)

小麦: 8月28日の3年ぶり高値からの調整が本日も続き、200日移動平均線に接近する水準を維持している。Ag Bull Tradingは、目先の調整は大きな技術的損傷を伴っていないと指摘しており、黒海情勢が再び緊迫化すれば急反発する余地も残るとされる水準。 出典: Ag Bull Trading

投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): 直近公表分では、金の投機筋ネットロングは前回の24.33万枚(243.3K)から22.81万枚(228.1K)へ減少した。雇用統計発表を前にした持ち高調整とみられ、依然としてネットロングは大幅なプラス圏を維持している。 出典: Investing.com(CFTC Gold Speculative Positions)