前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- FRB高官のハト派発言で9月利上げ観測が後退、金・銀がそろって続伸: 金は前回4,387.80ドルから4,472.22ドル(+1.92%)、銀は前回65.33ドルから66.97ドル(+2.51%)へ上昇した。FRBのウォラー理事は「インフレ改善の裏付けが取れれば9月会合は様子見でよい」との趣旨の発言を行い、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も関税の影響一巡によるインフレ鈍化を指摘した。さらに8月ADP民間雇用者数が市場予想(4.7万人)を下回る3.8万人増(1月以来の低い伸び)にとどまったことも重なり、9月利上げの織り込みは66〜70%程度から54%前後まで急低下した。 出典: FXStreet、Yahoo Finance
- 小麦がプーチン氏の停戦協議発言で急落、黒海戦争プレミアムが後退(新規トピック): 小麦は前回755.75セントから728.50セント(-3.61%)へ急落した。ロシアのプーチン大統領がウクライナとの和平合意の可能性に言及したとInvesting.comが報じ、黒海リスクを織り込んで3年ぶり高値圏にあった小麦から利益確定・投機筋の手仕舞い売りが一気に出た。ただし黒海での商船攻撃自体は継続しており、物理的な供給混乱が解消したわけではないとの指摘もある。 出典: Investing.com、Trading Economics(小麦)
- 砂糖が急反落、ただし高値圏は維持: 砂糖は前回18.71セントから17.99セント(-3.85%)へ反落した。2026年4月以来の高値圏からの利益確定売りが主因で、世界的な需給ひっ迫観測(2025/26年度の110万トンの供給過剰から2026/27年度は20万トンの供給不足への転換見通し)自体は変わっていない。 出典: Trading Economics(砂糖)
- 原油はホルムズ海峡の通航量に回復の兆しが加わり上値が抑制: WTIは前回90.58ドルから91.67ドル(+1.20%)、ブレントは前回95.26ドルから95.82ドル(+0.59%)と、前回に続き小幅高にとどまった。米エネルギー長官は月曜のホルムズ海峡通過量が開戦後最高となる日量1,700万バレルに達したと発言し、イラクの海峡経由の原油輸出も8月に日量234万バレル(7月比+73%)へ急増するなど、供給不安をやや和らげる材料が新たに加わった。一方で戦前水準(日量約2,000万バレル)にはなお届いていない。 出典: Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)
昨日と同じこと(継続)
- 米・イラン間の軍事的緊張自体は解消しておらず、ホルムズ海峡周辺での攻撃の応酬は続いている。トランプ大統領は「(攻撃は)長くは続かない」と述べ、市場はこれを好感したが、緊張の火種は残る。
- 天然ガスは2.92ドル(前回3.00ドルから-2.67%)と、8週間ぶり高値からやや反落したが、依然として高値圏でのもみ合いを継続。コーパスクリスティ・フリーポートのLNG輸出増加という支援材料も続いている。
- トウモロコシは515.25セント(前回518.50セントから-0.63%)、大豆は1,300.25セント(前回1,295.50セントから+0.37%)といずれも小動きの範囲にとどまり、中国の大豆買い付け継続という支援材料も継続している。
要因の連続性
- 継続要因: ホルムズ海峡の地政学リスク自体、中央銀行による金の継続的な購入(WGC)、天然ガスのLNG輸出増加はいずれも前回に続き作用している。
- 新規要因: (1) FRBウォラー理事・ウィリアムズ総裁のハト派発言とADP雇用者数の下振れによる9月利上げ観測の急低下、(2) プーチン大統領の停戦協議示唆による黒海戦争プレミアムの後退、(3) イラクのホルムズ海峡経由原油輸出の急増という供給不安を和らげる材料。
- 解消した要因: 前回まで金・銀の重しとなっていた「9月FOMC利上げ確率66〜70%」という見立ては本日大きく後退した(54%前後)。もっとも、FRB内でもタカ派委員(ウォーシュ議長ら)は物価対応の必要性を主張しており、利上げ観測が完全に消えたわけではない。
1. 価格サマリー(2026年9月3日(木)NY市場終値時点、日本時間では2026年9月4日早朝に相当)
| 商品 | 価格 | 前日比 |
|---|---|---|
| 金(オンス建て) | 4,472.22 USD/oz | +1.92% |
| 銀(オンス建て) | 66.97 USD/oz | +2.51% |
| WTI原油(期近) | 91.67 USD/バレル | +1.20% |
| ブレント原油(期近) | 95.82 USD/バレル | +0.59% |
| 天然ガス(ヘンリーハブ期近) | 2.92 USD/MMBtu | -2.67% |
| 小麦(シカゴ期近) | 728.50 セント/ブッシェル | -3.61% |
| トウモロコシ(シカゴ期近) | 515.25 セント/ブッシェル | -0.63% |
| 大豆(シカゴ期近) | 1,300.25 セント/ブッシェル | +0.37% |
| 砂糖(ICE期近) | 17.99 セント/ポンド | -3.85% |
出典: Trading Economics(金)、Trading Economics(銀)、Trading Economics(WTI)、Trading Economics(ブレント)、Trading Economics(天然ガス)
2. 商品別動向
金・銀
金は4,472.22ドル(+1.92%)、銀は66.97ドル(+2.51%)で取引された。FRBのウォラー理事が「インフレ改善の裏付けが取れれば9月会合は様子見でよい」との趣旨のハト派発言を行ったのに加え、8月ADP民間雇用者数が市場予想を下回る3.8万人増にとどまったことでドル・米長期金利が低下し、金利を生まない金・銀への資金流入が進んだ。トランプ大統領が対イラン攻撃について「長くは続かない」と述べたことも、地政学リスクの逃避需要と目先の緊張緩和期待という両面から金相場を支えた。 出典: FXStreet、Yahoo Finance
原油
WTIは91.67ドル(+1.20%)、ブレントは95.82ドル(+0.59%)と小幅続伸した。米・イラン間ではホルムズ海峡周辺での攻撃の応酬が続く一方、米エネルギー長官は月曜の海峡通過量が開戦後最高の日量1,700万バレルに達したと発言し、イラクの海峡経由原油輸出も8月に日量234万バレル(7月の135万バレルから倍増近くに拡大)へ急増したとOilPrice.comが報じた。供給不安と供給回復の兆しがせめぎ合い、価格は高値圏でのもみ合いにとどまっている。 出典: Trading Economics(WTI)、OilPrice.com
天然ガス
天然ガスは2.92ドル(-2.67%)と、約8週間ぶり高値からやや反落した。米中部から東部にかけての猛暑による冷房・発電向け需要、コーパスクリスティ(Cheniere Energy)・フリーポートのLNG輸出設備の稼働再開による輸出増加(9月初旬に日量18.3Bcfdへ拡大)が支援材料である一方、記録的な生産水準(日量111.5Bcfd超)が上値を抑えている。欧州のガス貯蔵率は15年ぶりの低水準となる65%にとどまっており、国際的なLNG争奪戦が続いている。 出典: Trading Economics(天然ガス)
農産物
小麦は728.50セント(-3.61%)へ急落し、トウモロコシは515.25セント(-0.63%)とやや軟調、大豆は1,300.25セント(+0.37%)と小幅高だった。小麦急落の主因はロシアのプーチン大統領による停戦協議示唆で、3年ぶり高値圏で積み上がっていた黒海戦争プレミアムの手仕舞い売りを誘発した。大豆は中国による追加購入(9月以降の累計購入量33.8万トン)が下支えとなった。砂糖は17.99セント(-3.85%)へ反落したが、2025年4月以来の高値圏は維持している。カカオは6,140ドル/トン(-2.39%)へ続落し、アイボリーコーストの輸出増加・在庫積み増しを背景とした供給不安後退の流れが続いている。 出典: Trading Economics(小麦)、Trading Economics(大豆)、Trading Economics(砂糖)、Trading Economics(カカオ)
3. 急変動の特集
本日新たに±3%超の値動きをした商品は小麦(-3.61%)と砂糖(-3.85%)。金・銀、原油、カカオは前回特集の継続フォローとなる。
- 小麦(新規特集): ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦協議の可能性に言及したとInvesting.comが報じ、黒海リスクを織り込んで3年ぶり高値圏にあった小麦から一気に利益確定売りが出た。パン・麺類など食品価格への転嫁圧力は目先やや和らぐ可能性があるが、黒海での商船攻撃自体は続いており、国際穀物理事会(IGC)は世界小麦生産見通しを4百万トン下方修正しているため、供給不安が完全に消えたわけではない。 出典: Investing.com、Trading Economics(小麦)
- 砂糖(新規特集): 2025年4月以来の高値圏からの利益確定売りで急反落した。もっとも月間では19%超の上昇を維持しており、2025/26年度の供給過剰から2026/27年度は供給不足への転換が見込まれるとの中期見通し自体は変わっていない。食品・飲料メーカーの調達コストには当面高値圏が続く見込み。 出典: Trading Economics(砂糖)
- 金・銀(前回特集のフォロー): 前回の急反発から一段と上昇し、地政学リスクの逃避需要に加えFRBのハト派傾斜という新たな追い風が加わった。 出典: FXStreet
- 原油(前回特集のフォロー): 前回に続き高値圏でのもみ合いが続く。イラクの輸出急増という新たな緩和材料が出た一方、ホルムズ海峡の緊張自体は解消していない。 出典: OilPrice.com
- カカオ(前回特集のフォロー): -2.39%とやや値動きは落ち着いたが、アイボリーコーストの供給増加を背景とした下落基調が続いている。 出典: Trading Economics(カカオ)
4. 強気派 vs 弱気派
金・銀
- 強気: ゴールドマン・サックスは2026年を通じて金の強気トレンドが続くとの見方を維持しており、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)も中央銀行の継続的な金購入を構造的な下支え要因として挙げている。 出典: Yahoo Finance
- 弱気: CNBCによれば、FRBのウォーシュ議長は物価対応で「まだやるべきことがある」とタカ派的な発言をしており、インフレ再加速が確認されれば利上げ観測が再燃するリスクが残る。FXStreetのテクニカル分析でも、金は21日移動平均線(4,449ドル付近)と200日移動平均線(4,533ドル付近)という重い節目を控えており、上値の重さが指摘されている。 出典: CNBC、FXStreet
原油
- 強気: CNBCは、米・イランの対立が長期化する「デッドロック」状態にある限り、タンカーの戦争リスク保険料が高止まりし、輸送コストを通じて価格の下支えが続くと指摘している。ホルムズ海峡の通航量は開戦前の平常時(日量約2,000万バレル)を依然として大きく下回っている。 出典: CNBC
- 弱気: JPモルガンは構造的に弱気の立場を取っており、ブレント価格は2026年第3四半期に平均86ドル程度、第4四半期には80ドル程度まで低下し、年末には78ドル前後になると予想している。イラクの海峡経由輸出の急増も、供給不安の後退材料として弱気派の根拠となっている。 出典: JPモルガン、OilPrice.com
穀物(小麦)
- 強気: 業界紙Grain Centralによれば、国際穀物理事会(IGC)は世界小麦生産見通しを400万トン下方修正して8億1,700万トンとし、期末在庫見通しも引き下げた。ウクライナの農業団体は主要港が12月から1月まで閉鎖されたままになる可能性を想定するよう輸出業者に呼びかけており、黒海の供給不安は根本的には解消していないとの見方を示している。 出典: Grain Central
- 弱気: Investing.comは、プーチン大統領の停戦協議示唆に加えトルコがロシア・ウクライナ双方と穀物輸出の安全な航行について協議していると報じており、黒海戦争プレミアムの後退を主張するトレーダーも多いとしている。 出典: Investing.com
5. 地政学・物価関連ニュース
米・イラン間の軍事的緊張は続いているが、トランプ大統領が対イラン攻撃について「長くは続かない」と発言したことで、市場では今回のエスカレーションが短期間で収束するとの期待が広がった。同時に、米エネルギー長官がホルムズ海峡の通過量が開戦後最高の日量1,700万バレルに達したと明らかにし、イラクの海峡経由原油輸出も急増するなど、供給正常化に向けた動きも出ている。一方、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦協議に言及したことで、黒海経由の穀物供給不安がやや後退し、小麦・トウモロコシ相場を押し下げた。エネルギー価格の高止まりは電気代・輸送コストを通じたインフレ圧力として意識される一方、穀物側の戦争プレミアム後退は将来的な食品価格上昇圧力をやや和らげる方向に働く可能性がある。欧州では天然ガス貯蔵率が15年ぶりの低水準(65%)にとどまっており、冬場に向けたエネルギー価格の再燃リスクは残る。 出典: Yahoo Finance、Investing.com
6. テクニカル分析
金: 直近のピボットは4,431.70ドル付近とされ、本日終値4,472.22ドルはこれを上回って推移している。上値のレジスタンスは21日移動平均線の4,449ドル付近、その上に200日移動平均線の4,533ドル付近。下値のサポートは100日移動平均線の4,358ドル付近、50日移動平均線の4,232ドル付近。RSIは50ラインを回復し買い優勢を示唆する水準まで戻っているが、200日線という重い節目を控え、上値を試すペースは今後鈍る可能性があるとされる水準。あくまで目安であり、断定的な売買判断ではない。 出典: FXStreet
銀: レジスタンスは23.6%フィボナッチ水準の67.16ドル、その上に100日移動平均線の68ドル付近、さらに70.99ドル・200日移動平均線の72.64ドルが控える。サポートは65.50ドル、その下に50日移動平均線の61ドル付近とフィボナッチ帯(60.97〜64.79ドル)がある。本日終値66.97ドルはレジスタンス67.16ドルに接近しており、RSIは53程度と60台から低下し、上昇モメンタムがやや鈍化していることを示唆する水準とされる。 出典: Trading Economics(銀)
WTI原油: 数週間続いた三角保ち合いを上放れたとされる状態が続いており、フィボナッチ38.2%押しの87.50ドル付近が下値の支持帯として意識される。上値のレジスタンスは94.91ドル付近とされ、本日終値91.67ドルはこの間のレンジ中間からやや上寄りで推移している。あくまで目安となる水準で、断定的な売買判断ではない。 出典: Trading Economics(WTI)
天然ガス: 50%フィボナッチ・リトレースメント水準である2.97ドル付近を上抜けた後、本日は2.92ドルへ反落しこの水準をわずかに下回った。記録的な生産水準を踏まえると、この付近が上値の壁として意識され続けるとされる水準。 出典: Trading Economics(天然ガス)
小麦: 8月28日につけた3年ぶり高値からの急落により、直近まで上回っていた200日移動平均線に接近する水準まで押し戻された。プーチン氏発言による戦争プレミアムの手仕舞いが主因で、RSIも買われすぎ圏から急速に低下したとみられる。黒海情勢が再び緊迫化すれば急反発する余地もあり、あくまで目安の水準にとどまる。 出典: Trading Economics(小麦)
投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細): 直近公表分(2026年8月28日時点)では、金の投機筋ネットロングは24.33万枚(243.3K、前回22.22万枚から増加)となっている。本日9月4日(金)の米国市場引け後に新しいデータが公表される予定で、直近の金・銀の続伸分はまだ反映されていない。 出典: Investing.com(CFTC Gold Speculative Positions)

