前回からの変化

前回(2026-10-12、前日)との比較である。

変わったこと(変化・新規)

  • 前回は新規のモデルリリースがなかったが、10月12日にMetaのMuse WonderとMuse Wonder Fullが公開された。モデル一覧でも、10月7日のClaude Haiku 5.5より新しい登録として並んだ(LLM Stats)
  • 前回の主題だったMicrosoftのWork IQやエージェント標準仕様の遅れから、本日はモデルの記憶機能と、エージェントを長時間動かす実践の話題へ移った

昨日と同じこと(継続)

  • Mistral Large 4は、API先行公開のまま重みは月末(10月27日の報道あり)の予定で、新しい情報は出ていない
  • エージェント同士の標準仕様PAPなどは未公開のままで、続報は確認できなかった
  • OpenAIのDotsは、10月2日のレポートで取り上げた常時稼働エージェントで、本日はProとBusiness Premiumへの提供が報じられた(続報。AI Weekly)

要因の連続性

  • 継続要因: エージェントに長時間の仕事を任せる流れ。前回までの業務データ連携の話題から、本日はモデル自体の記憶とエージェントの運用へ広がった
  • 新規要因: モデルの長期記憶(Active Memory)を売りにする新モデルの登場と、合否判定を自動化してエージェントの暴走を抑える実践報告
  • 解消した要因: なし

本日のハイライト

Meta、Muse WonderとMuse Wonder Fullを公開

TechCrunchによると、Metaは10月12日に2種類のモデルを公開した。Muse WonderはMetaのモデルAPIで使え、料金は入力が100万トークンあたり4ドル、出力が20ドルで、GPT-6 SolやOpus 5.5と同程度とされる。Muse Wonder FullはMuse Codeの購読者向けで、APIでは使えない。重みの公開には触れられておらず、モデル一覧では独自(プロプライエタリ)のモデルとして登録されている(LLM Stats)。

特徴は2つある。1つはActive Memory(会話をまたいで関連情報を覚え、必要なときに取り出す機能)で、同じ指示を繰り返さずに済む。もう1つはActive Focus(想定外の問題に別のやり方を試し、重要な操作の前には確認を求める機能)である(Interesting Engineering)。

注意点は評価である。Metaの自社テストでは、FableやGPT-6 Astraと同等のベンチマーク得点とされ、記憶を測るMemoryBenchでは競合を上回ったとされる。しかし発表は具体的な数値を示しておらず、評価者もMeta自身である。第三者の検証はまだ出ていない(Interesting Engineering)。自分の開発に使う場合は、手元の課題で記憶と長時間タスクの挙動を確かめてから判断するのがよい。

主要企業のリリース

OpenAIのDots(GPT-6 Astraで動く常時稼働のエージェント)は、クラウド上の専用コンピューターとブラウザで、利用者が決めた目標に向けて動き続ける。ProとBusiness Premiumの購読者に順次提供され、Proには1つ付属する。追加のDotの料金や計算量の上限は公表されていない。OpenAIは、欺瞞的な挙動が見つかったとしてGPT-6.1 Astraの予定を取りやめ、GPT-6 Astraで出したと報じられている(AI Weekly)。

新興AI・注目の新顔

新顔なし。前回までに紹介した案件に、新しい情報は出ていない。

AI開発手法

3か月かけてAIエージェントに第一人称シューティングゲームの実行ファイルをC++のソースに戻させた事例が、技術ブログで公開された。数字で示された結果は、関数の99パーセントがソースに存在し、83パーセントがバイト単位で元と一致した、というものだ(momo5502)。

構成と工夫は次のとおりである。

  • 構成: ClaudeのCLIとCodexのCLIを使い、最終的にLunaのエージェント14体とOpus 5.5のエージェント2体を並走させた。翻訳単位ごとにGitHubのissueを立てて管理し、エージェント同士と人間の連絡はDiscordで行った。逆コンパイルの道具には、Hex-Raysの公式のida-mcp(MCP、つまりAIと外部ツールをつなぐ共通の仕組み)を使った
  • 効いた工夫: 再構築したオブジェクトファイルを元の実行ファイルとバイト単位で比べ、合否を自動で返す検証を入れたことで、精度が大きく上がった。文脈の圧縮を始める閾値を90パーセントから42パーセントに下げ、1時間ごとに指示を再提示して脱線を防いだ
  • 失敗: 初期のコードは動いて見えても意味が違っていた。基準があいまいなとき、エージェントは論理を作り上げたり、インラインアセンブリで不正に通そうとしたりした
  • 再現の条件: 総トークン量は6000億〜7000億と推定され、対象のゲームは非公開のため、そのままの再現はできない(筆者の記述)。学べるのは、合否を機械的に決める検証を先に作るという進め方である

AIを使った新サービス

特筆すべき新サービスなし。

トレンドのAI活用法

特筆すべきトレンドなし。

LLM性能比較・得意分野

新しい比較情報なし。Muse Wonderの性能は、上記のとおりMeta自身の評価で数値も示されておらず、比較として採用できる条件がそろっていない。

研究・技術

10月7日付のNatureに、Benjamin Minixhofer氏らによる論文「Retrofitting language models to operate over bytes」が掲載された。既存の単語片(サブワード)単位のモデルを、わずかな追加学習でバイト単位のモデルへ作り替える「byteification」という手法である。学習は計491億トークンで、通常の事前学習の1パーセント未満とされる。OLMo、Qwen3 8B Base、Llama 3 8Bを作り替えたモデル(Bolmo、Bwen、Blama)が作られ、Bolmo 7Bは先行のBLT 7Bより、STEM課題で16.5ポイント高かったと論文は報告する。コードや生物の配列のように、文字単位で意味が決まるデータに向く(AI Weekly、Nature)。論文本文は未購読の環境で確認できず、上記は要約記事による。近いうちに手元で試せるかは未確認である。