前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 中国の王毅共産党政治局員兼外相が9月28日、訪中した岩屋毅・前外相(日本国際貿易促進協会会長)に対し、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁の是正を要求した。前回(9/29)は欧州のEV規制と中東情勢が中心で、この日中間の動きは新規(時事ドットコム)。
  • 中国が有事の際に民間インフラ・先端技術を軍事転用できる改正国防動員法を10月に施行することが判明した。前回までの報告には無かった新規情報(日本経済新聞)。
  • サウジアラビアの首都リヤドおよびヤンブーの石油関連施設に対するフーシ派の攻撃(9/19、9/24)を受け、サウジ・トルコ・パキスタンの軍参謀総長級協議が9月25日に開かれ、集団防衛への誓約を確認した。前回報告には無かった中東の新規動向(日本経済新聞)。

昨日と同じこと(継続)

  • トランプ米大統領によるイランのホルムズ海峡開放提案拒否をめぐる米イラン間の駆け引きは、前回報告時点から目立った進展は確認できていない(継続)。

要因の連続性

  • 継続要因: ホルムズ海峡情勢を軸とした中東の地政学リスクは前回に続き日本のエネルギー調達コストの不確実性要因として働いている。
  • 新規要因: 中国による対日圧力(台湾答弁の是正要求)と国防動員法の改正、フーシ派によるサウジ石油施設への攻撃再燃が新たに加わった。
  • 解消した要因: 該当なし。

今日の要点

地域 出来事 日本への影響 段階
アジア(日中) 中国外相が高市首相の台湾答弁の是正を要求 日中関係の一段の緊張・対中外交への圧力 事実(発言・要求)
アジア(中国) 中国が改正国防動員法(民間資源の軍事転用を可能に)を10月施行 台湾有事シナリオの現実味、在中日本企業のリスク管理・邦人保護 決定済み(10月施行予定)
中東 フーシ派がサウジ首都・石油施設を攻撃、サウジ・トルコ・パキスタンが集団防衛を確認 原油供給路の不安定化、エネルギー価格上昇リスク 事実(攻撃・会談実施)
米国・中国 米中首脳会談(9/23-25)で300億ドル規模の関税引き下げなど8項目合意 米中摩擦緩和は日本企業のサプライチェーンに間接的にプラス 決定済み(合意発表)

米国

米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は9月23日から25日にかけてワシントンで首脳会談を行い、8項目の合意を発表した。主な内容は、双方が300億ドル(約4.7兆円)規模の品目で相互関税を引き下げること、米中人工知能(AI)対話を新設し11月に次回会合を開くこと、両国が第二次世界大戦で同盟国として共に戦い勝利したとの歴史認識を確認することなどである(ライブドアニュース)。もっとも台湾問題については従来の立場の隔たりが埋まらず、その後の中国側の対日圧力の強まり(後述)にもつながっている。

日本への影響: 米中間の関税緊張緩和は、両国と取引する日本企業のサプライチェーンにとって間接的な安定材料となる。一方で台湾問題での溝が埋まらなかったことは、後述する中国の対日圧力の強まりの背景にもなっており、日中関係への波及を注視する必要がある。

アジア・オセアニア

中国政府は、有事の際に民間のインフラや先端技術などの資源を迅速に軍事転用できるようにする改正国防動員法を10月に施行する。2010年の制定以来初めての大幅改正で全82条からなり、「台湾統一」に備えた総力戦体制の構築が狙いとされる(日本経済新聞)。

日本への影響: 台湾有事が現実味を帯びた場合の中国側の法的準備が進むことは、中国に生産・調達拠点を持つ日本企業にとってサプライチェーンの分散やBCP(事業継続計画)の見直し、邦人保護体制の点検が引き続き課題となることを意味する。

中東・アフリカ・中南米

イエメンの親イラン武装組織フーシ派は9月19日、サウジアラビアの首都リヤド近郊と、国営石油会社サウジアラムコの積み出し拠点があるヤンブーをミサイル・無人機で攻撃したと主張した。サウジ政府は攻撃を阻止したと発表したが被害の詳細には触れていない。フーシ派は24日にも同様の攻撃を実施したとしている(時事ドットコム)。これを受け、サウジアラビア・トルコ・パキスタンの軍参謀総長級協議が25日にリヤドで開かれ、3カ国は共同防衛協定に基づく「集団防衛への誓約」を確認し、聖地メッカや民間インフラへの攻撃を非難した(日本経済新聞)。

なお、トランプ米大統領によるイランのホルムズ海峡開放提案拒否をめぐる米イラン間の駆け引きは、前回報告時点(9/29)から目立った進展は確認できていない。

日本への影響: サウジアラビア・イエメン情勢とホルムズ海峡情勢はいずれも日本が輸入する原油の主要な経由地・産地に関わり、緊張の高まりはエネルギー調達コストの上振れリスクとして日本の物価・企業収益に波及しうる。

国際機関・多国間の動きと、日本を名指しした動き

中国の王毅共産党政治局員兼外相は9月28日、北京で岩屋毅・前外相(日本国際貿易促進協会会長)と会談し、高市早苗首相が国会答弁で示した台湾有事に関する発言について、「指導者による誤った発言をなるべく早く是正することが必要だ」と述べ、是正を要求した。翌29日には何立峰副首相も岩屋氏と会談し、「日本の一部政治家が台湾問題で中国側のボトムラインに挑もうとしている」と懸念を表明した(時事ドットコム、nippon.com、Bloomberg)。岩屋氏は会見で「中国は日本に事態改善の努力を促したい」と述べ、日本政府に対応を求めたと伝えられている。

日本への影響: 中国政府が日本の首相の国会答弁を名指しで問題視したことは、日中関係の一段の緊張につながりかねない。日本政府がこの要求にどう応じるか(応じない立場を含む)が今後の日中関係、および台湾海峡を巡る日本の外交姿勢の焦点となる。

今後数日の注目日程

  • 日本政府が中国の是正要求にどう応じるか(公式反応の有無)
  • 中国の改正国防動員法の10月施行に向けた具体的な運用動向
  • フーシ派とサウジ主導有志連合の対立が沈静化するか、原油供給への実害が生じるか
  • 米中間で11月に予定されるAI対話の初回開催に向けた準備状況
  • トランプ大統領とイラン側の間で、追加協議が実際に行われるか