前回からの変化

前回レポートなし(比較対象なし)

今週の概観

今週(9月9日〜15日)最大の動きは、米国カリフォルニア州でAI規制と子どもの安全を組み合わせた法整備が進んだことである。AIコンパニオンチャットボットと未成年向けSNSを対象とする子ども保護関連法が相次いで成立し、ニューサム州知事は9月10日、通称「アダム法」(SB1119)をはじめとする13本の法案に署名した。一方、欧州委員会・日本の公正取引委員会・個人情報保護委員会の公式発表を確認した限り、EUと日本では今週、制裁金や排除措置命令など確定的な新規の規制措置は確認されなかった。EUのAI法は12月2日に合成コンテンツの表示義務の履行期限を控えている。

EU

今週(9月9日〜15日)について、欧州委員会のデジタル政策・競争政策の公式ニュースページおよびDMA公式サイトの最新情報を確認したが、DMA・DSA・AI法に関する新規の制裁金決定、正式調査の開始、EU司法裁判所(CJEU)判決など、一次情報で確認できる動きはなかった。

近い節目としては、AI法第50条2項にもとづき、生成AIが作成した音声・画像・動画・文章について「AIによる生成である」ことを利用者に明示する透明性義務の履行期限が12月2日に控えている(EU AI法 実施タイムライン)。対象はGPAI(汎用AI)モデル提供者に限らず、生成AIを組み込んだサービス全般に及ぶ見込みで、今後の動向を注視する。

米国

米カリフォルニア州のニューサム知事は9月10日、AIチャットボットや未成年向けSNSを対象とする子ども保護関連法13本に署名した。段階はいずれも「成立」で、多くは通常の施行ルールに従い2027年から効力を持つ見込みである(カリフォルニア州知事府)。

中心となるのがSB1119、通称「アダム法」である。AIコンパニオンチャットボット(人間の話し相手のように振る舞う対話型AIサービス)を提供する事業者に対し、自殺念慮など危機的な兆候を検知した際の対応手順の整備、保護者による利用制限機能の提供、子どもが安全機能を解除した場合の保護者への通知、第三者機関による独立監査と年次リスク評価の実施を義務付ける。施行は2027年7月の予定(Hoodline)。同法は、オープンエーアイのチャットボットとのやり取りの末に自殺した16歳の少年、アダム・レインさんの名にちなんで名付けられ、遺族がオープンエーアイを提訴した経緯が立法の背景にある。

もう一本の柱がSB867で、16歳未満向けにAIコンパニオンチャットボットを内蔵したおもちゃの製造・販売を2031年1月1日まで時限的に禁止する(The Toy Association)。このほか、16歳未満のユーザーに対して自動再生や行動履歴に基づくアルゴリズムのフィード表示を制限するAB2、対象サービスに年齢確認の仕組み導入を求めるAB1709など、プラットフォーム規制と年齢確認を組み合わせた法案が同時に成立した。今回の一連の法整備は、子どもの安全を最優先に据えたAI規制の枠組みとして位置づけられる。

業界側の反応について、今回の一連の法案そのものに対する個別の声明は確認できていないが、業界団体ネットチョイスはこれまで同種のカリフォルニア州法(SB976)を合衆国憲法修正1条(表現の自由)違反として提訴した実績があり、今回の各法についても同様の訴訟提起が予想されるとの見方がある(Transparency Coalition)。

日本

今週(9月9日〜15日)の公正取引委員会の報道発表を確認したところ、同期間の発表は飲食チェーンに対する勧告1件のみで、スマホソフトウェア競争促進法や独占禁止法に関するテック企業向けの新規の勧告・命令は確認されなかった。個人情報保護委員会についても、同期間中にテック企業を対象とした是正勧告・立入検査等の公表は確認できなかった。

なお、個人情報保護委員会が令和8年1月に示した個人情報保護法の「3年ごと見直し」制度改正方針にもとづく論議は継続しており、9月以降は事業者団体との意見交換やヒアリング、パブリックコメントの実施が見込まれるとの解説がある(インターネットプライバシー研究所)。

今後の予定

  • 2026年12月2日: EU AI法第50条2項にもとづく、生成AIコンテンツのAI利用表示義務の履行期限
  • 2027年7月: カリフォルニア州SB1119(アダム法)の施行予定
  • 2031年1月1日: カリフォルニア州SB867によるAIコンパニオン内蔵玩具の製造・販売禁止(時限措置)の終了予定