前回からの変化

前回(2026-10-19)との比較である。前回は16日に決算を出したエムアンドティー銀行を扱った。本日は前営業日(19日、月曜)に決算を出した3社を取り上げる。

変わったこと(変化・新規)

  • 19日発表の地銀2社(フィフス・サード銀行、ザイオンズ)を新たに取り上げる。前回の「EPSは予想超えでも株価は素直に上がらない」という構図に対し、両社とも予想超えだが、終値の反応は今回確認できていない(SEC: フィフス・サード、SEC: ザイオンズ)
  • 地銀以外の初の個社として、鉄鋼のスティール・ダイナミクスを取り上げる。EPSは予想と会社見通しの双方を下回った(Stock Titan)
  • 前回、米国時間20日に予定として挙げたネットフリックスとインテュイティブ・サージカルの結果は、本日時点でまだ出ていない。次回以降にフォローする

昨日と同じこと(継続)

  • 地銀の決算で、EPSが予想を上回る流れが続いた。前回までの4社に今回の2社を加えた6社すべてで上振れとなった(筆者の整理)
  • 純金利マージン(貸出金利と預金金利の差から生まれる利ざやの指標)の方向が社ごとに分かれる点も続いた。エムアンドティー銀行の前四半期比0.05ポイント低下に続き、ザイオンズも低下した
  • 決算シーズンは序盤で、FactSetの集計では上振れ企業の比率は高い一方、上振れ幅は小さい(FactSet)

要因の連続性

  • 継続要因: 貸出残高の増加と信用の質の安定が、地銀の利益を支えている。エムアンドティー銀行の貸出残高の増加(前年同期比6%)に続き、ザイオンズも貸出残高が4%増えた
  • 新規要因: フィフス・サード銀行は、コメリカ買収の統合費用と統合効果が決算の中心になった。鉄鋼では、鉄スクラップ価格の低下と鋼材販売価格の上昇による利ざやの拡大が加わった
  • 解消した要因: 前回の論点だった、エムアンドティー銀行固有の純金利マージン低下は、今回の2社には共通の論点として表れていない

1. 本日のハイライト

企業名 会計期間 EPS 予想比 株価反応
フィフス・サード銀行 2026年7〜9月期 調整後1.13ドル(GAAP0.90ドル) 上回る(予想は出所で0.83〜1.09ドル) 寄り前は出所により分かれる
ザイオンズ 2026年7〜9月期 GAAP1.78ドル 上回る(予想1.64〜1.65ドル) 確認できず
スティール・ダイナミクス 2026年7〜9月期 GAAP5.26ドル 下回る(予想5.40ドル、見通し5.34〜5.38ドル) 確認できず

フィフス・サード銀行の予想は、Investing.comが0.83ドル、Yahoo Finance(Zacks)が1.09ドルとしており、コンセンサスの出所によって差が大きい。どちらの出所でも調整後EPSは上回った。ザイオンズとスティール・ダイナミクスの予想は報道に引用された集計で、出所の違いにより数字が少し異なる。株価反応は、いずれも19日の終値を確認できていない。

2. 個別決算

フィフス・サード銀行 — 2026年7〜9月期

普通株主に帰属する純利益は8.28億ドルで、前四半期比9%増、前年同期比36%増だった。希薄化後EPSはGAAPで0.90ドル、調整後で1.13ドル。前年同期比でGAAPのEPSは1%減っており、コメリカ買収で株数が増えた影響が大きい。売上高は32.8億ドルで前年同期比49%増である(SEC: 決算リリース、Investing.com)。

純金利収入は22.76億ドルで前四半期比3%増。純金利マージンは3.34%と前四半期から0.02ポイント低下し、前年同期からは0.21ポイント上昇した。平均貸出残高は1,792億ドル、平均預金残高は2,383億ドルである。純償却率は0.31%で、前四半期の0.30%とほぼ同じ。普通株式Tier1比率(CET1)は10.02%と、前四半期の9.93%から上昇した(同上)。

注意点として、Yahoo Finance(Zacks)は売上高が予想の33.4億ドルを下回ったと伝え、非金利費用も前年同期比62%増の20.5億ドルになったとしている。EPSの上振れは、買収の統合効果を含む調整後ベースの数字である。

株価は、Investing.comが寄り前に0.79%安と伝えた一方、別の報道では1〜2%高とされ、出所で分かれた。終値は確認できなかった。

ザイオンズ — 2026年7〜9月期

純利益は2.62億ドル、希薄化後EPSは1.78ドルで、前年同期の1.48ドルから増えた。前四半期は4.52億ドル、3.05ドルで、大きく下回っている。前四半期との差の理由は今回確認できていない。予想は報道によると1.64〜1.65ドルで、上回った(SEC: 決算リリース、Tiger Brokers)。

純金利収入は6.84億ドルで前年同期比2%増。純金利マージンは3.23%で、比較対象の3.28%から低下した。貸出残高は625億ドル、預金残高は779億ドルで、ともに前年同期比4%増。純償却額は300万ドル(年率0.02%)と、前年同期の5,600万ドル(0.37%)から大幅に減った。CET1は11.8%である。

株主還元は、7,500万ドルの自社株買い(110万株)と、1株0.48ドルの四半期配当(前年同期は0.45ドル)。株価反応は確認できなかった。

スティール・ダイナミクス — 2026年7〜9月期

純利益は7.56億ドル、希薄化後EPSは5.26ドルで、前四半期の3.69ドル、前年同期の2.74ドルから増えた。しかし会社が9月に示した見通し(5.34〜5.38ドル)と、報道に引用された予想(5.40〜5.51ドル)をいずれも下回った。純売上高は65億ドルである(Stock Titan、SEC: 8-K(見通し))。

中身は鉄鋼事業が牽引した。鋼材の出荷量は380万トンと過去最高で、平均販売価格は1トン1,400ドル(前四半期比102ドル高)、鉄スクラップの平均調達費は1トン404ドル(8ドル安)だった。鉄鋼の営業利益は約10億ドル。一方、アルミ事業は営業損失2,600万ドルで、前四半期から21%改善したが赤字が続く。営業キャッシュフローは8.46億ドル、設備投資は1.5億ドル、自社株買いは2.76億ドル(9か月累計5.91億ドル)、四半期配当は1株0.53ドルである(同上)。

株価は、情報サイトに「19日は5.69%安」との表示があったが、発表は引け後で、通常取引の値か時間外の値かは確認できていないため、反応としては採用しない。

3. 経営陣が語ったこと

フィフス・サード銀行の決算説明会では、10〜12月期の見通しが示された。純金利収入は前四半期比2.5〜3.5%増で、12月の利上げを前提とし、純金利マージンは3.43%以上を見込む。貸出は1〜2%増、非金利収入は2〜4%増、費用は2〜3%減の見通し。自社株買いは2億〜3億ドルを予定し、貸出の伸び次第とした。テキサスでは3年間で150店の新規出店を2027年7〜9月期から始める計画も説明した(Motley Fool: 決算説明会の書き起こし)。

スティール・ダイナミクスのマーク・ミレットCEOは、需要は安定し、顧客の在庫は少なく、輸入量は歴史的な低水準にあると説明した。アルミ事業は営業の損益が採算ラインに達したと述べた(Stock Titan)。ザイオンズの説明会の内容は、今回確認できていない。

4. 業界トレンド

  • 地銀: 今季は6社で、EPSはいずれも予想を上回った。一方で純金利マージンは、フィフス・サード銀行が前四半期比で小幅低下、ザイオンズとエムアンドティー銀行も低下と、上振れの質には社ごとの差がある。貸出残高は各社で増えており、信用コストは落ち着いている(筆者の整理)
  • フィフス・サード銀行は10〜12月期の純金利収入が増える前提に「12月の利上げ」を置いており、金利の見方が地銀の収益見通しに入り込んでいる(同社の説明として紹介)
  • 米国の鉄鋼: 輸入が少なく、顧客の在庫も低水準という国内需給の追い風が続く一方、利益の上振れは見通しの範囲にとどまった。アルミ新工場の赤字が全体の足を引っ張る構図である

5. 決算シーズンの進捗

FactSetの10月16日版によると、S&P500のうち発表済みは9%で、7〜9月期のEPSの上振れ比率は84%(5年平均78%)。ただし平均の上振れ幅は2.6%で、5年平均の7.5%を下回る。前年同期比の利益成長率は29.0%、売上高成長率は12.6%の見通しである。ヘルスケアのみ減益で、エネルギー、情報技術、通信サービスが牽引する(FactSet)。前回載せた10月9日版(利益成長29.6%)より成長率は下がった。

6. 次の注目決算

日付は米国時間である。引け後の発表は日本時間では翌朝になる。

  • 10月20日(火)寄り前: GEエアロスペースはEPS1.99ドル、売上高128.4億ドルの予想。商業サービスの伸びと、通期のフリーキャッシュフロー目標89億〜92億ドルの維持が焦点。RTXはEPS1.78ドル、売上高241.1億ドルの予想で、レイセオンの受注と航空機エンジン部門の補修需要が注目される。予想がすでに会社見通しの上限を超えており、見通しの据え置きは失望を招きうるとされる(24/7 Wall St)。ノースロップ・グラマンなども同日の寄り前
  • 10月20日(火)引け後: ネットフリックス、インテュイティブ・サージカルなど(Earnings Watcher)
  • 10月21日(水)引け後: テスラ、メタ、IBM、テキサス・インスツルメンツ、ラム・リサーチなど(同上)