前回からの変化
前回(2026-11-05、前日)との比較である。前回は、AI回答の出どころを証明するFlashProve、Revolutの自社運用による費用削減、エージェントの安全が中心だった。今回は、新しいオープンウェイトモデルの登場と、AIを研究の実作業に使う事例が中心である。
変わったこと(変化・新規)
- 前回は「モデルを自社運用して費用を下げる」事例だったが、今回は自社運用の候補になりうる新しい重みが並んだ。Ripple-65BはApache-2.0で公開された(Hugging Face: Ripple-65B)
- 前回のDeepSeekに続き、Moonshot AIとTencentの大型モデルが加わった(Hugging Face: Kimi K3.1 Pro、TechNode)
- AIを研究の実験工程に使う具体例として、Vault粒子の構造解析が出た(Anthropic)
昨日と同じこと(継続)
- Claudeのような商用モデルと、オープンウェイトの代替という対比は前回から続く
- コーディングエージェントを並列に動かす道具への関心が続く(Conductorの話題)
要因の連続性
- 継続要因: 費用を抑えて自社で動かせるモデルへの需要
- 新規要因: 密(Dense)構造で小さめのモデルが大型MoEと同等の成績を主張し始めたこと(自社発表)
- 解消した要因: なし
本日のハイライト
Ripple-65B Preview: 密な構造で長い文脈を扱う新顔
Ricursive Intelligenceが公開した650億パラメータの密なTransformerである。密とは、MoE(入力ごとに一部の専門家だけを使う方式)と違い、全パラメータを毎回使う方式を指す。文脈長は100万トークン、事前学習は12兆トークンで、ライセンスはApache-2.0である。層は80、埋め込み次元は5120の「細く深い」設計とされる。同社は、コード分野の計算効率が先行モデルOlmo 3の系列に比べて16倍になったと説明している(自社発表)(Hugging Face: Ripple-65B)。
自社公表の成績は、TerminalBench 2.1で80.52、MMLUで89.6、SWE-bench Verifiedで76.5である。第三者の検証はまだ確認できていない。重みはBF16とNVFP4(4ビット浮動小数点)の2種類があり、NVIDIA DGX Sparkのような手元の環境向けにColabノートブックも付く。試すなら、まずNVFP4版が現実的である。
主要企業のリリース
Moonshot AI: Kimi K3.1 Proは総パラメータ2.8兆、有効1040億のMoEで、文脈長は約105万トークン、視覚エンコーダーを持つ。ライセンスは独自の「Kimi K3.1 Pro License」で、一般的なオープンソースとは異なる。自社公表ではDeepSWE v1.1が75.5、GPQA-Diamondが94.2だが、評価の枠組みや推論の強さで結果が大きく変わるとカードに注記がある。vLLMやSGLangでの運用に対応し、APIはOpenAI互換・Anthropic互換の窓口がある(Hugging Face: Kimi K3.1 Pro)。
Tencent: Hy4は7700億パラメータで、図表の読み取り、複数画像の推論、コマンドラインや画面操作ができる。BlenderやCADなど専門ソフトも学習に含む。OpenRouterなどから使え、重みと技術文書は公開予定、低価格版も準備中である。API価格は100万トークンあたり入力0.834ドル、出力2.501ドルで、Tencent Cloud TokenHubでは12月末まで半額となる(TechNode)。
OpenAI: ChatGPTの画像モデルImages 2.6で、文章や写真からアニメーションGIFを作れるようになった。速度調整やコマ単位の編集ができ、ChatGPTとCodexの全利用者に順次提供される。APIには効率重視の「Flare」と高品質の「Sunburst」の2系統がある(The Decoder)。
新興AI・注目の新顔
上のRipple-65B Previewが該当する。Ricursive Intelligenceは今回初めて取り上げる。ほかに、AI生成画像の検出を扱うPangram Image 1.0が公開されたとの報道があるが、一次情報は未確認のため詳細は扱わない(The Neuron)。
AI開発手法
複数エージェントの並列実行: Conductorは、複数のコーディングエージェントを別々の作業領域で同時に動かす道具である。Metaが買収し、クラウド版は2026年11月20日に終了してデータは削除される。利用者は今のうちにデータを手元に移す必要がある。エージェントは他社のものを組み込む方式である(TechCrunch)。
AIを使った新サービス
特筆すべき新サービスなし。
トレンドのAI活用法
特筆すべきトレンドなし。
LLM性能比較・得意分野
新しい比較情報なし。上記の成績はいずれも各社の自社公表で、評価条件がそろっていないため、横並びの優劣は判断しない。
研究・技術
AnthropicはClaudeを研究の全工程に使い、原核生物のVault粒子(細胞内にある大きなタンパク質の容器)の立体構造を初めて解いたと発表した。Claudeは、150億件規模のタンパク質データベースから近縁種を探し、配列を大腸菌向けのDNA設計に変換し、精製法を提案して作業を3日から約90分に縮め、クライオ電子顕微鏡データの解析を34時間で終えたという。構造は96個のタンパク質からなる。これはAnthropic自身の報告で第三者の検証は未確認だが、実験工程の手順をAIに任せる実践例として読める(Anthropic)。

