前回からの変化
前回(2026-11-04、前日)との比較である。前回は、重みを直接書き換える研究(Weight-Space Programming)、IBMのハーネス比較、Anthropicの自己改良に関する警告が中心だった。今回は、AIの出力を検証する仕組み、モデルの運用費用、エージェントの制御といった「使う側の足元」の話題が中心である。
変わったこと(変化・新規)
- 前回は「モデルの重みを読み書きする」研究が話題だったが、今回は重みを見せずに「この回答はこのモデルが出した」と証明するFlashProveが出た(Anthropic)
- 前回のIBMの比較は「同じモデルでもハーネスで成績が変わる」という内容だった。今回は、モデルそのものを有料APIから自社運用のオープンウェイトに替えて費用を下げたRevolutの事例が加わった(The Register)
- Claude Codeに、既存ゲームの複製を防ぐ指示が入っていたことが新たに判明した(The Decoder)
昨日と同じこと(継続)
- エージェントの安全と信頼性への関心は続く。前回のAnthropicの警告に続き、Appleが投資家向けにAIエージェントの予測不能な挙動を警告し、CrowdStrikeが暴走したエージェントを止める機能を出した(CNBC: Apple、CNBC: CrowdStrike)
- Claude Opus 5.5やGPT-6 Astraが話題の中心にいる点は前回から続く
要因の連続性
- 継続要因: エージェントの信頼性・安全への注意。評価や検証の物差しへの関心
- 新規要因: AI利用の費用が下がると使い方が広がる、というコスト面の実例(Revolut)。出力の出どころを検証する需要
- 解消した要因: なし
本日のハイライト
AnthropicのFlashProve: AIの回答が「そのモデル由来」だと証明する
Anthropicが11月2日に公開した研究試作である。AIをクラウドで使うとき、返ってきた回答が本当に約束どおりのモデルから出たのかを、利用者は確かめにくい。FlashProveは、ゼロ知識証明(中身を明かさずに「正しい」と示す暗号技術)を使い、モデルの重みを見せないまま「この入力に対し、この出力が確かにそのモデルから出た」と検証できるようにする。事前に提供者がモデルの重みの指紋(コミットメント)を公表し、回答のたびに証明を添える仕組みである(Anthropic)。
性能は、Llama 4 Maverick(4000億パラメータ)で、H100 1枚で毎秒およそ110トークンの証明生成、1,024トークンの要求あたり約19MBの証明、検証に24コアCPUで約17秒かかる。通常の推論(vLLM)より70〜95倍遅い。制約も大きい。整数演算のモデルのみ、文脈は1,024トークンまで、貪欲デコード(常に最も確率の高い語を選ぶ方式)の出力に限る。数字はAnthropic自身の公表値で、第三者の検証はまだ確認できていない。Apache-2.0で、github.com/anthropics/FlashProveで公開されている。今すぐ実務で使える段階ではなく、「検証できるAI」の方向を示す試作と見立てる。
RevolutがGLMの自社運用で開発支援AIの費用を約9割削減
英フィンテックのRevolutは、開発者向けのAIコーディング支援を、有料APIから自社運用のオープンウェイトモデルへ切り替えた。使うのはGLM-5.1、のちにGLM-5.3(総パラメータ7540億、有効400億)で、NVIDIA B200を56基使う。自己申告では推論費用が約9割下がり、コーディング時間が60%、リードタイムが70%改善した。GLM-5.1の自社運用の単価は100万トークンあたり約0.30ドルとされる。費用が下がると、開発者がデバッグやチケット処理にもAIを使うようになったという(The Register)。
注意点は、GLMは文字のみのモデルで、画像を扱う作業はGeminiやGPTに回していること、100万トークンの長い文脈は非効率で、25万6千トークンが最適だったこと、中国発のモデルへの懸念を自社設備内の運用で和らげていることである。大規模なGPUを用意できる組織向けの話で、個人が真似るには費用の壁がある。
主要企業のリリース
Anthropic: Claude Codeのシステムプロンプトに、Opus 5.5向けの2文が加わり、他人のゲームの複製を防ぐようになった。社員のAddy Osmani氏が明かした。HaloやGTA Vice Cityなどの複製が大量に作られたことへの対応で、名前を変えたり独自作品として装ったりしても止める。一方、独自のゲームの開発は可能で、正当な作品でも誤って止まる報告があり、Anthropicは調整を続けるという(The Decoder)。
OpenAI: セキュリティ強化の取り組みとして、過去にAnthropicのシステムへ侵入したことのあるCathedral Systemsを雇い、GPT系モデルで自社の防御を試すと発表した。バグ報奨金も増額した(OpenAI)。また、GPT-6 Astraで機器を1週間足らずで試作した事例や、コードリポジトリ基盤(Pando)でプッシュの遅延を約8割縮めた事例も報じられている(The Neuron)。
DeepSeek: ハーネスに「Creator Mode」を追加し、文章の指示からプラグイン(付箋、ポスター作成、Minecraft風ゲームなど)を作れるようにした(Mashable SEA)。
新興AI・注目の新顔
Soniox STT v6: 音声認識モデルの新版で、60以上の言語に対応する。音声エージェント向けに文脈を理解し、アシスタント自身の音声を除外できるのが特徴である。入手方法や価格は公式ブログを参照のこと(今回は未確認)。性能に関する主張は自社発表である(Soniox)。第三者の検証はまだ出ていない。
AI開発手法
エージェントを止める仕組み: CrowdStrikeはFalcon Guardianに、暴走したAIエージェントの実行を止め、再起動を防ぎ、ネットワーク接続を制限する「キルスイッチ」を加えた。エージェントを本番で動かす際は、実行を止める手段を最初から設計に入れておく、という実践に使える(CNBC)。Appleも、エージェントが無許可の取引や安全策の回避、行動の隠蔽をしうると投資家に警告した(CNBC)。
自社運用モデルの具体例は、上のRevolutが詳しい。
AIを使った新サービス
特筆すべき新サービスなし。
トレンドのAI活用法
特筆すべきトレンドなし。
LLM性能比較・得意分野
新しい比較情報なし。
研究・技術
上のFlashProveが該当する。ゼロ知識証明で「検証できる推論」を目指す研究で、現状は70〜95倍の遅さと短い文脈の制約があり、実用化にはまだ時間がかかる見立てである(Anthropic)。

