前回からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 前回は新顔としてEmpirioLabsのAplomb 1(確率つきの判断を返すオープンウェイトモデル)を扱ったが、本日はその系統に大手のOpenAIが加わった。Decisions APIは同種の考え方を自社のGPT-6 Lunaの上に載せたAPIである(NYU Shanghai RITS)
  • Mistral Large 4の重みの公開日が揺れている。前回は10月27日としたが、Mistralの発表は「今月末」とするだけで、具体的な日付は書かれていない。別の集計は10月31日としている(Sam on AI)。前回の10月27日は今回の調査では裏づけを取れなかった
  • 前回扱ったClaude Haiku 5.5に関連し、Sonnet 5.5のキャッシュ読み取り料金の半減と、Teamプラン契約者への月次のAPIクレジット付与が伝えられた(AI Weekly)

昨日と同じこと(継続)

  • 文章を生成せず確率つきの判断を返すモデルが続々と出る流れは、前回のAplomb 1に続いている
  • Mistral Large 4の重みが未公開で、APIの公開プレビューだけが動いている状態は変わらない

要因の連続性

  • 継続要因: 自由な文章ではなく、決まった形の答えを高速・低コストで得たい開発者の需要が、前回に続いて判断専用モデルの登場を後押ししている
  • 新規要因: 大手のOpenAIが同種のAPIを出したことで、判断専用の出力形式が標準的な機能になる可能性が出てきた(推測)
  • 解消した要因: なし

本日のハイライト

OpenAIのDecisions API(公開ベータ)

OpenAIは10月6日にDecisions APIを公開ベータとして全開発者に開放した。9月29日の開発者会議で招待制のプレビューとして初めて登場したものである。専用のエンドポイント(POST /v1/decisions)に、質問と許可された有限の回答の集合、そして文脈としてのテキストや画像を渡すと、その回答のいずれかが返る。答えの集合は生成後のフィルタではなく、リクエストの一部として最初から出力の範囲を縛る(NYU Shanghai RITS、Winzheng)。

出力形式は3種類ある。0から1の確率を返す「predicate」(条件が成り立つか)、固定リストから1つ選ぶ「choice」、順序のある段階の確率加重平均を返す「score」である。1回のリクエストで複数の質問ができ、各質問には固有の名前を付ける。従来の「プロンプトを書く、JSONで返させる、解析する」という手間を省ける点が違いである。

OpenAIの発表では、判断までの時間は約150ミリ秒で、同じ作業をResponses API経由でGPT-6 Lunaに行わせた場合(約1.6秒)の最大10倍速いとされる。これはOpenAIの数値で、独立した測定はまだ出ていない。価格は報道により異なり、入力100万トークンあたり0.10ドル・出力無料とする記事がある一方で、価格は未公表とする記事もある。公式の価格表は今回確認できなかった。一般提供への移行は「数週間以内」の予定とされる。初期のテストでは、選択肢形式が70%の確率の事象を98%と過大に見積もる不安定さが報告されている(AI Weekly)。

主要企業のリリース

OpenAIは10月7日(水)にGPT-6の提供を始め、ChatGPTに「Intelligent UI」を加えた。文章の代わりに、タップできるボタン、専用の計算機、編集できるグラフを会話の中に表示する機能で、Pro、Plus、Business、Enterpriseの契約者は即日、無料版とGoプランには8日(木)にGPT-6 Lunaとともに世界で展開された(TechCrunchの報道としてAI Weeklyが紹介)。

Mistral Large 4は10月6日にパブリックプレビューのAPIとして公開された。パラメータは1兆、1トークンあたりの稼働は520億で、価格は入力100万トークンあたり1.36ドル、出力4.18ドルである(Mistral)。重みは月末までに公開される予定で、ライセンスの詳細は同ページに書かれていない。

GoogleのDeepMindはEmbeddingGemma 2を出した。7.4億パラメータでApache 2.0ライセンスのオープンなモデルで、テキスト、コード、画像、動画、音声を扱い、必要に応じて2.7億パラメータまで小さくして読み込める。クラウドAPIなしで手元の検索(リトリーバル)に使える小型モデルである(Sam on AI)。

新興AI・注目の新顔

新顔なし。直近の新規リリースの一覧には、10月5日のGLM 5.3(Z.ai)やオープンウェイトのBeam(Reflection)などが並ぶが、いずれも詳細を一次情報で確認できなかったため、紹介は見送る(Price Per Token)。

AI開発手法

AIが書いたRust版TypeScriptコンパイラの事例が報じられた。Ping Labsの「tsc-rs」は、Claude Opus 5.5が移植のコード全体を生成し、費用は約2万4千ドル、移植したテスト18万1,711件がすべて通ったという(AI Weekly)。既存のテストスイートを正解として使い、AIに大規模な移植を任せる構成が効いたとみられる(推測)。GitHubのリポジトリを今回は確認できなかったため、数値は報道ベースである。

AIを使った新サービス

特筆すべき新サービスなし。ChatGPTのIntelligent UIは上記の主要企業のリリースに含めた。

トレンドのAI活用法

特筆すべきトレンドなし。

LLM性能比較・得意分野

OpenAIの自社評価として、コンピューター操作のエージェント課題(Ironclad workflows)でGPT-6 Astraが55.0%、GPT-5.6 Solが41.6%、平均所要時間は37.0分から19.2分に短縮されたと伝えられている。評価条件の詳細は確認できず、OpenAI自身の評価で第三者の検証もない(Sam on AI)。新しい第三者の比較情報なし。

研究・技術

Ai2などの研究チームのByteification(バイトレベル化)は、サブワード単位で学習済みの言語モデルを、通常の事前学習の1%未満(約39.3Bトークン)の追加学習でバイト単位のモデルに変える手法である。Ai2の公開した「Bolmo」(1Bと7B)の重みはHugging Faceで入手でき、文字レベルのタスクでベースのモデルより約20ポイント改善した(Ai2: Bolmo)。AI Weeklyは10月8日にこの研究がNatureに載ったと紹介したが、Nature掲載はAi2のページでは確認できなかった。コードや生物配列のように文字単位の精度が要る用途で、近いうちに試せる道具になりそうである。