前回からの変化

前回(2026-09-21)との比較。

変わったこと(変化・新規)

  • イエメンで、フーシ派による紅海沿岸・バブエルマンデブ海峡の掌握(9月上旬)に対し、サウジアラビアが支援するイエメン政府軍が今週反撃を大きく拡大したことが新たに判明した。9月27日までの24時間だけでもターイズ地域で複数の空爆・地上作戦を実施し、西部アル・ワジーヤ地区や北西部グラブ地域の軍用車両などを標的にした。政府側は「フーシ派戦闘員・指揮官数十人を殺傷した」と主張する一方、フーシ派はサウジアラビアへ弾道ミサイル2発とドローン2機を発射して応酬した。国連児童基金(UNICEF)イエメン代表は、直近3週間で少なくとも14万6千人が新たに避難したと明らかにした。本カテゴリでイエメン・フーシ派情勢を取り上げるのは今回が初めてである(新規、Al Jazeera)。
  • ウクライナ戦線で、ISWはウクライナ軍が「ロシア軍の初期浸透部隊への増援を組織的に阻止する」戦術へ転換しつつあると9月26日に分析した。あわせて、プーチン大統領が地上での攻勢に見切りをつけ、ジェット推進型ゲラン無人機を用いた長距離攻撃キャンペーンでウクライナに冬を越させず降伏を迫る「新たな勝利の理論」へ軸足を移しつつある可能性を指摘した。9月25〜26日にかけてロシアは昼間162機・夜間173機、計335機の無人機を発射したという(新規、Kyiv Post)。
  • 外交面では、トランプ米大統領がウクライナに対しパトリオット防空システムの迎撃ミサイル生産のライセンス供与を「最終決定した」とゼレンスキー大統領が9月25日に明らかにした(新規、Kyiv Post)。
  • ガザについて、カタールのモハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アル・サーニ首相が9月26日、CNNのインタビューでイスラエルのネタニヤフ首相を名指しし「現在、この和平計画の進展における最大の障害だ」と公然と批判したことが新たに判明した。同首相は、イスラエルがガザの70%超を占領したままで攻撃を続けていること、人道支援トラックが合意上必要な1日600台に対し実際には1日およそ150台しか入域できていないことを具体的に指摘した(新規、The Times of Israel)。
  • スーダン北コルドファン州で、スーダン国軍(SAF)とダルフール系元反政府勢力の連合体「共同部隊」が9月19日の激戦を経てソダリ町を奪還したと9月26日までに報じられた。7月に開始した攻勢の延長線上にある戦果である一方、複数の情報筋は、投降者・負傷者を含むRSF側捕虜およそ17人が処刑された疑いがあると指摘しており、真偽は本日時点で確認できていない(新規、Sudan's Post)。
  • エルオベイドでは9月21日早朝から正午にかけ、RSFの無人機攻撃で住宅地・民間施設が狙われ2人が死亡、22人が負傷した。スーダン医師ネットワークはこれを「国際法違反」と非難し、国際社会にRSF指導部への圧力行使を求めた(新規、Radio Tamazuj)。

昨日と同じこと(継続)

  • イラン・米国間のホルムズ海峡を巡る緊張は今週も解けていない。トランプ大統領はイラン提案の拒否を維持しつつ今週の追加協議の可能性が報じられ、イラン側も従来条件を崩していない(継続。詳細はworld_affairsカテゴリ本日号を参照)。
  • レバノン南部の「先に撤退か武装解除か」を巡る膠着構造について、今週新たな専門機関の分析は確認できなかった(継続)。
  • ガザでは、イエローライン以東での軍事プレゼンスや停戦第2段階の実施を巡る対立という基本構図は変わっていない(継続)。

要因の連続性

  • 継続要因: ウクライナ和平交渉における領土問題、ガザにおけるハマス武装解除の順序を巡る対立、レバノンでの撤退・武装解除の先後を巡る膠着、スーダンにおける外国勢力の軍事支援・北コルドファン戦線の戦闘。
  • 新規要因: (1) フーシ派による紅海沿岸・バブエルマンデブ海峡掌握とこれに対するイエメン政府軍の反撃拡大、(2) ロシアの長距離無人機攻撃キャンペーンへの戦略転換、(3) 米国による対ウクライナ・パトリオット生産ライセンス供与、(4) カタール首相によるネタニヤフ首相への名指し批判。
  • 解消した要因: 特になし。

今週の概観

過去1週間(9月21日〜27日)は、既存の紛争が深化する一方、新たな戦線が明確に浮上した週だった。イエメンでは、9月上旬にフーシ派が紅海沿岸とバブエルマンデブ海峡を掌握したことを受け、イエメン政府軍が今週、ターイズ地域を中心に反撃を大きく拡大した。国連は同海峡周辺の情勢が「ますます不安定」になっていると警告しており、本カテゴリでもこの情勢を今回初めて取り上げる。ウクライナでは、ISWがロシアの長距離無人機攻撃への戦略転換を分析する一方、米国が対ウクライナ・パトリオット生産ライセンス供与を決定するなど軍事支援面で新たな動きがあった。ガザでは、カタール首相がネタニヤフ首相を停戦履行の「最大の障害」と公然と批判し、和平計画の停滞が改めて浮き彫りになった。スーダンでは、国軍が北コルドファン州ソダリを奪還した一方、エルオベイドではRSFの無人機攻撃による民間人被害が続いている。

紛争別の週間動向

ウクライナ

事実として、ISWは9月26日、ウクライナ軍がロシア軍の初期浸透部隊への増援活動を組織的に阻止する戦術へ転換しつつあると分析した。ロシア軍は9月25〜26日にかけて昼間162機・夜間173機、計335機の無人機を発射し、ウクライナ側もクラスノダール地方の石油精製施設などロシアの軍産複合施設・エネルギーインフラへの攻撃を継続した(Kyiv Post)。

分析面では、ISWはプーチン大統領が地上での攻勢に見切りをつけ、ジェット推進型ゲラン無人機を用いた長距離攻撃キャンペーンによって、ウクライナに2026〜2027年の冬を越させないまま降伏を迫る「新たな勝利の理論」へ軸足を移しつつある可能性を指摘した。この戦略が成立するかは、ロシアがジェット推進型無人機を高い突破率で大量運用できるかにかかっているという(同上)。

外交面では、トランプ大統領がウクライナへのパトリオット防空システム迎撃ミサイルの生産ライセンス供与を「最終決定した」と、ゼレンスキー大統領が9月25日に明らかにした(Kyiv Post)。

ガザ/イスラエル・パレスチナ

事実として、カタールのモハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アル・サーニ首相は9月26日、CNNのインタビューでネタニヤフ首相を名指しし「現在、この和平計画の進展における最大の障害だ」と述べた。同首相は、イスラエルがガザの70%超を占領したまま撤退していないこと、合意上必要な1日600台に対し実際には1日およそ150台の人道支援トラックしか入域できていないことを具体的な違反事例として挙げた(The Times of Israel)。

分析面では、カタールは2025年10月の停戦・人質解放合意の仲介国であり、当事者的な立場から発せられた評価である点に留意が必要である。もっとも、人道支援トラックの搬入実績が合意水準を大きく下回っているという具体的な数値は、前回・前々回報告してきたICGの「Hollow Promises」評価(ロードマップが履行されないまま停戦が実効性を欠いているとの指摘)と整合的であり、停戦の実施状況を巡る停滞が今週も裏付けられた形である。

イエメン(フーシ派・紅海沿岸)

事実として、フーシ派は9月上旬にイエメン紅海沿岸全域とバブエルマンデブ海峡沿いの島々を掌握し、国連安全保障理事会は9月15日の会合で、キアリ政治・平和構築・平和活動担当事務次長が「海峡周辺の情勢がここ数日ますます不安定になっている」と警告した。国連は9月以降、少なくとも12万5千人がイエメン国内で避難し、約2,300人がジブチへ逃れたとしている(UN Press)。

これを受け、サウジアラビアが支援するイエメン政府軍は今週、反撃を大きく拡大した。9月27日までの24時間だけでもターイズ地域で複数の空爆・地上作戦を実施し、西部アル・ワジーヤ地区、東部の武器保管施設、北西部グラブ地域の軍用車両などを標的にした。政府側は戦闘員・指揮官数十人を殺傷したと主張し、ジャバル・バゼル山頂の制圧によりフーシ派の補給線を攻撃可能な範囲に収めたとしている。フーシ派側はサウジアラビアへ弾道ミサイル2発とドローン2機を発射して応酬した。国連児童基金(UNICEF)イエメン代表は、直近3週間で少なくとも14万6千人が新たに避難したと明らかにしている(Al Jazeera)。

分析面では、国際危機グループ(ICG)の専門家アハメド・ナギ氏は、フーシ派の紅海沿岸への急速な進出がバブエルマンデブ海峡を中東の地域紛争の焦点に押し上げたと分析し、サウジアラビアの対応や同国が主導する新たな安全保障パートナーシップが紅海・アフリカの角地域に及ぼす影響、広範な海運危機に発展するリスクを指摘した。同海峡はホルムズ海峡の代替航路としても位置づけられており、対イラン緊張とも連動しうる点に注意が必要である(ICG)。

スーダン(北コルドファン州)

事実として、スーダン国軍(SAF)とダルフール系元反政府勢力の連合体「共同部隊」は、9月19日の激戦を経て北コルドファン州のソダリ町を奪還したと9月26日までに報じられた。軍側は「テロ組織民兵に多大な人的・装備損失を与えた」と発表し、RSFのヘメディ司令官は別戦線(アブ・カード)での勝利を主張して対抗した。もっとも複数の情報筋は、投降者・負傷者を含むRSF側捕虜およそ17人が軍側により処刑された疑いがあると指摘しており、真偽は本日時点で確認できていない(Sudan's Post)。

エルオベイドでは9月21日早朝から正午にかけ、RSFの無人機攻撃が住宅地・民間施設を襲い2人が死亡、22人が負傷した。スーダン医師ネットワークは「国際法違反」であり人道・保健状況を悪化させると非難し、国際社会にRSF指導部への圧力行使と民間人・施設保護の徹底を求めた(Radio Tamazuj)。

分析面では、7月に開始された軍の地上攻勢がソダリ奪還まで進展したことは軍側にとって戦果である一方、捕虜処刑疑惑が事実であれば、前回・前々回報告してきたエルファシャル陥落時の人権侵害と同様の構図が今回は軍側にも当てはまりかねない。中立的な検証が今後の焦点となる。

緊張が高まっている地域

マリでは、アルカイダ系武装組織JNIMが2025年9月から続ける首都バマコへの燃料封鎖が今週も続いており、9月22日の独立記念日を、深刻化する治安危機の中で迎えたと報じられた(Al Jazeera)。国際危機グループ(ICG)は、JNIMの戦略が当初の農村部・周縁部制圧から主要都市への攻撃へと転換しつつあり、過去5年でマリの都市部への攻撃件数がほぼ3倍に増えたと分析している。大規模報道はされていないものの、燃料封鎖という「銃撃を伴わない包囲」がマリの国家機能そのものを脅かしつつある点で、専門機関が注視する新たな緊張地域として今回取り上げる(ICG)。

和平・外交の動き

ウクライナを巡っては、トランプ大統領がパトリオット防空システムの生産ライセンス供与を最終決定したことが判明し、米国の対ウクライナ軍事支援が新たな段階に入った(詳細は「ウクライナ」節を参照)。

ガザでは、カタール首相によるネタニヤフ首相への名指し批判が今週の主要な動きだった。停戦の仲介国自身が「最大の障害」と公言したことは、停戦第2段階の実施が実質的に停滞している現状を裏付けている(詳細は「ガザ/イスラエル・パレスチナ」節を参照)。

イラン・米国間のホルムズ海峡を巡る協議については、トランプ大統領が提案拒否を維持する一方、今週追加協議に応じる可能性も報じられており、対話の余地は残っている。詳細は本日のworld_affairsカテゴリを参照されたい。イエメンの紅海情勢については、今週は軍事的なエスカレーションが先行し、外交的な出口はまだ見えていない。