前回からの変化

前回(2026-09-28)との比較。先週月曜の回からの1週間の変化をまとめる。

変わったこと(変化・新規)

  • ウクライナでは、ISWが10月1日付の分析で、ロシア軍が9月に領土を175.54平方キロ獲得した一方で256.35平方キロを失い、差し引き80.81平方キロの純減だったと評価した。前回はロシアの長距離無人機攻撃への戦略転換が焦点だったが、今回は地上戦での攻勢の失速が数値で示された(新規、UNITED24 Media)。
  • スーダンでは、国軍が10月2日に北コルドファン州のマズルーブを制圧したと発表した。前回のソダリ奪還に続く戦果で、国軍側の発表である(新規、Al Jazeera)。
  • イエメンでは、国連のグルンドベリ特使がフーシ派にタイズ県での軍事攻勢の停止を求めた。前回は政府軍の反撃拡大が中心だったが、今回はフーシ派のタイズ攻勢が報じられ、避難民は13万3千人超と伝えられた(変化、Yemen Monitor)。
  • ガザでは、安保理報告書(SCR)の10月予測が、合意から1年たっても第2段階が実施されていないと整理した。ネタニヤフ首相が仲介側の15項目文書を受け入れない意向と伝えられている(新規、Security Council Report)。

昨日と同じこと(継続)

  • フーシ派によるバブエルマンデブ海峡周辺の掌握と、それに伴う避難の拡大という基本構図は前回から続いている(継続)。
  • ガザの停戦第2段階が進まず、イスラエル軍が合意線を越えて駐留を続ける構図は変わっていない(継続)。
  • スーダン北コルドファン州での国軍とRSFの攻防は今週も続いた(継続)。
  • 今週は、レバノンとマリについて新たな専門機関の分析は確認できなかった。

要因の連続性

  • 継続要因: ガザの停戦実施を巡る当事者間の不信、フーシ派の紅海沿岸掌握による地域緊張、スーダンの北コルドファン戦線での消耗戦。
  • 新規要因: ウクライナ軍の反攻とリマン周辺での奪還作戦によるロシア軍の領土収支悪化、マズルーブ制圧による国軍の補給線遮断の動き、フーシ派のタイズ攻勢に対する国連の仲介の動き。
  • 解消した要因: 特になし。

今週の概観

過去1週間(9月28日〜10月4日)は、ウクライナで地上戦の趨勢が数字で示され、スーダンで国軍が新たな拠点を制圧し、イエメンでは国連が戦闘の停止を求めた週だった。ISWは、ロシア軍が3月以降で約294平方キロを失ったと評価している。スーダンでは国軍が北コルドファン州の要衝マズルーブの制圧を発表した。イエメンでは戦火がタイズ県に及び、避難民は増え続けている。ガザでは、停戦合意から1年がたっても第2段階の実施が進んでいない。なお、今週は英語圏の主要報道で確認できた範囲の整理であり、一部は当事者の発表に基づく。

紛争別の週間動向

ウクライナ

事実として、ISWは10月1日付の分析で、ロシア軍が2026年9月に175.54平方キロを獲得し256.35平方キロを失い、差し引き80.81平方キロの純減だったと評価した。ウクライナ軍が攻勢を仕掛けたリマン周辺では、約147平方キロが奪還されたとされる。ロシア軍の9月の死傷者は4万6千320人で、2026年の月間最多だったという(UNITED24 Media)。

分析面では、ISWは「ロシアは9月に、よくても領土の純増はなく、おそらく全体で後退した」と結論づけ、3月以降の純減は約293.59平方キロと見積もっている。ただし、これは米国のシンクタンクによる評価であり、ウクライナを支援する国の機関の分析である点に留意が必要である。数値の裏付けには複数機関の突き合わせが望ましいが、今週は他機関の同種の集計は確認できなかった。

スーダン(北コルドファン州)

事実として、スーダン国軍は10月2日、RSFの北コルドファン州最大の拠点とされるマズルーブを激戦の末に制圧したと発表した。国軍報道官は、同地が北コルドファン州と西コルドファン州を結ぶ要衝で、制圧によりRSFの補給線を断つ狙いがあると説明した。人的損害や装備損害の具体的な数値は示されていない(Al Jazeera)。

分析面では、コルドファン地方は2025年後半から戦闘が激化し、記録された攻撃の5件に1件が同地方で発生しているとされる。ただし今回の制圧は国軍側の発表に基づくもので、独立した検証は確認できていない。

イエメン

事実として、国連のグルンドベリ特使は、フーシ派にタイズ県での軍事攻勢の停止を求めた。特使は、死傷者やインフラの損壊、道路封鎖により、民間人が戦闘地域から出られない状況を懸念している。新たな戦闘による避難民は、タイズ県とラヒジ県を中心に13万3千人を超え、国連はさらに増えると見込んでいる(Yemen Monitor)。現地報道は、フーシ派が戦略的要衝であるタイズ市の制圧を狙って攻勢を強めていると伝えている(The National)。

背景として、フーシ派は9月上旬に紅海沿岸の全域とバブエルマンデブ海峡周辺を掌握したと報じられている(Al Jazeera)。前回の報告では避難民が3週間で14万6千人超とされたが、機関によって集計期間と対象が異なり、数値は単純には比較できない。

ガザ/イスラエル・パレスチナ

事実として、安保理報告書(SCR)の10月予測は、米国が仲介した包括計画の合意から1年がたつ中でも、第1段階の後の武装解除とイスラエル軍撤退を求める後続の段階が実施されていないと整理している。国際安定化部隊も未展開で、ネタニヤフ首相は仲介側の15項目文書を受け入れない意向だと伝えられている。UNRWAの9月報告によれば、停戦発表後の死者は1,394人、2023年10月以降の累計は7万3千914人、住民の9割が水の確保に支障を抱える(Security Council Report)。

分析面では、国際危機グループ(ICG)は8月の報告書「Hollow Promises」で、停戦が約束の大半を果たせておらず、ガザの210万人が恒久的な窮乏か再び戦争に戻る危険に直面していると指摘している。SCRの整理は、このICGの評価と整合的である(ICG)。

緊張が高まっている地域

特筆すべき新規の緊張は、今週の確認範囲では見当たらなかった。前回取り上げたマリの燃料封鎖についても、新たな専門機関の分析は確認できていない。タイズ周辺は、フーシ派の攻勢で民間人の避難が増えている点が注視される。

和平・外交の動き

イエメンでは、国連のグルンドベリ特使が政府側とフーシ派の双方と連絡を取り、戦闘の拡大を抑える緊急の措置と民間人の移動の自由を協議していると伝えられている(Yemen Monitor)。

ガザでは、停戦の第2段階を巡る仲介側とイスラエルの隔たりが埋まらず、外交的な突破口は見えていない。ウクライナについても、今週は和平交渉の具体的な進展は確認できなかった。