前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- イラン・湾岸諸国、オマーンで来週会談へ(新規・地政学の転換点): Bloombergによれば、湾岸協力会議(GCC)加盟国とイランの外相が9月14日にオマーンのサラーラで会談し、ホルムズ海峡の航行を一時的に規制する暫定合意を協議する見通しとなった。開戦(2月28日)以来、初めてとなるイランと湾岸諸国の高官級会合であり、前回レポートで扱った「トランプ大統領が中間選挙後の終結を示唆」という長期化観測から一転、航路そのものを巡る協議が具体化した。
- 原油が反落(変化): CNBCによれば、WTIは9/11に2.4%安の100.05ドルで清算され、ブレントも2.9%安の104.52ドルとなった。FXStreetは会談報道を受けた時間外取引でWTIが一時96.50ドル近辺まで一段安となったと報じている。前回(9/10)の「中間選挙後まで高止まりが続く」という見立てから、外交進展による地政学リスクプレミアムの剥落という逆方向の材料に転じた。もっとも週間ベースではブレント+8.7%、WTI+9.4%と大幅高を維持しており、地政学リスク自体が消えたわけではない。
- 米CPI加速でFRB利上げ観測が急伸(新規・重要): 8月米CPIは前月比0.4%(市場予想通り、7月の0.1%から加速)、前年比3.4%と発表され、Yahoo FinanceによればCMEグループのFedWatchが示すFOMC(9/15-16)での利上げ確率は69.4%(前日62.2%)から発表後は約90%まで急伸した。前回は「インフレ指標発表を控えた様子見」だったが、今回は指標結果を受けた具体的な織り込みへと進んだ。
- 金・銀が下落(変化): 金は前日比-1.1%の4,359.40ドルで寄り付き、8月6日以来の安値をつけたのち4,385ドル近辺まで戻す場面もあった(Yahoo Finance)。銀は前日比-1.2%の64.14ドルで寄り付き、前日のPPIショック後の68.50ドルからさらに水準を切り下げた(Yahoo Finance)。
- 銅がさらに反落(変化): Trading Economicsによれば、LME3か月物銅は1トンおよそ14,286ドル前後まで下落し、前回(9/10、14,743ドル前後)からさらに水準を切り下げた。9月9日につけた史上最高値14,875ドルからの反落が続いている。
- 穀物が続落(変化): Brownfield Ag Newsによれば、CBOT12月限小麦は725.25セント/ブッシェル(前日比-16セント)、12月限トウモロコシは530.25セント(-3.5セント)、11月限大豆は1,296.50セント(-35.75セント)で引けた。米農務省(USDA)が9月のWASDE(需給報告)で2026/27年度の農家販売価格見通し(大豆12ドル、トウモロコシ4.80ドル、小麦6.40ドル)を示したことも材料視された(DTN)。
昨日と同じこと(継続)
- OPECプラスは10月の生産方針を据え置いたままで、供給面からの緩和材料は乏しい。
- 天然ガスは前日の急落(-3.73%)からほぼ横ばい(2.83ドル/MMBtu、-0.12%程度)で下げ止まりつつあり、潤沢な生産・在庫という構造要因は継続している。
- 銅の需給逼迫(AIデータセンター需要、対米関税観測による在庫シフト)という構造的な背景は変わっていない。
- 金・銀はFOMC(9/15-16)の結果待ちという構図が続いている。
要因の連続性
- 継続要因: OPECプラスの供給据え置き、銅のAIデータセンター需要と関税観測、天然ガスの潤沢な生産・在庫という上値抑制要因。
- 新規要因: (1) オマーンでのイラン・GCC外相会談(9/14)発表による地政学リスクプレミアムの後退、(2) 米CPI加速によるFRB利上げ観測の急伸(69%→約90%)とドル高、(3) USDA・WASDEによる2026/27年度穀物価格見通しの更新。
- 解消した要因: ホルムズ海峡の「当面終結の見通しが立たない」という警戒感はやや後退した(ただし米・イラン間の戦争自体が終結したわけではない点に留意)。
1. 価格サマリー(2026年9月11日(金)、取引時間中・清算値の目安)
| 商品 | 価格(目安) | 前回(9/10)比 | 限月・指標 |
|---|---|---|---|
| 金 | およそ4,320〜4,387 USD/oz(終値目安4,361) | 4,373前後→4,361前後(寄り付きは-1.1%) | スポット目安 |
| 銀 | およそ63〜65 USD/oz(終値目安64.0) | 67.05前後→64.0前後(-1.2%程度) | 期近先物 |
| WTI原油 | 100.05 USD/バレル(清算値、-2.4%)、報道後は96.50近辺まで軟化 | 99.40→100.05→(時間外)96.50前後 | NYMEX期近 |
| ブレント原油 | 104.52 USD/バレル(-2.9%) | 105前後→104.52(-2.9%) | ICE期近 |
| 天然ガス | 2.83 USD/MMBtu(-0.12%程度) | 2.81→2.83(ほぼ横ばい) | ヘンリーハブ期近 |
| 小麦 | 725.25 セント/ブッシェル(CBOT12月限、-16セント) | (限月切替のため単純比較不可、後述) | CBOT12月限 |
| 銅(LME) | およそ14,286 USD/トン | 14,743→14,286前後(-3.1%程度) | LME3か月物 |
出典: Yahoo Finance(金)、Yahoo Finance(銀)、CNBC(原油)、FXStreet(原油時間外)、Trading Economics(天然ガス・銅)、Brownfield Ag News(穀物)。小麦は9/11時点でCBOTの中心限月が期近(9月限)から12月限へ切り替わっており、前回値との単純な数値比較はできない点に留意。原油は情報源・時間帯により数ドル程度の差がある。
2. 商品別動向
金・銀
金は8月CPIの発表(前月比0.4%、前年比3.4%、加速)を受けてFRBの利上げ観測が急伸し、寄り付きの4,359.40ドル(前日比-1.1%)から一時8月6日以来の安値をつけた。その後は4,385ドル近辺まで戻す場面もあり、終値は4,361ドル前後だった(Yahoo Finance)。銀は前日の米生産者物価指数(PPI)ショックで68.50ドルまで急伸していた反動もあり、64.14ドル(前日比-1.2%)で寄り付いた(Yahoo Finance、Vantage Markets)。金銀ともにFOMC(9/15-16)の結果待ちという構図は変わらないが、利上げ観測の強まりは金銀にとって重しとなっている。
原油
最大の材料は、イランと湾岸協力会議(GCC)加盟国の外相が9月14日にオマーンのサラーラで会談し、ホルムズ海峡の航行を一時的に規制する暫定合意を協議するとの観測が浮上したことだった(Bloomberg)。開戦以来初めてとなる高官級協議の見通しを受け、WTIは2.4%安の100.05ドルで清算、ブレントも2.9%安の104.52ドルとなった(CNBC)。時間外ではWTIが一時96.50ドル近辺まで一段安となる場面もあった(FXStreet)。もっとも週間ベースではブレント+8.7%、WTI+9.4%と大幅高を維持しており、地政学リスクそのものが解消したわけではない。
天然ガス
Trading Economics系の集計によれば、天然ガスは2.83ドル/MMBtu(前日比-0.12%程度)とほぼ横ばいで推移し、前日の大幅安(-3.73%)からは下げ止まりつつある。米エネルギー情報局(EIA)は2026年通年のヘンリーハブ価格見通しを1MMBtuあたり3.67ドルから3.44ドルへ6%超引き下げており、パーミアン・ヘインズビル地域の生産増と潤沢な在庫が背景にあるとした(EIA)。
農産物
Brownfield Ag Newsによれば、CBOT12月限小麦は725.25セント/ブッシェル(-16セント)、12月限トウモロコシは530.25セント(-3.5セント)、11月限大豆は1,296.50セント(-35.75セント)で引けた。小麦は米国が仲介するロシア・ウクライナ停戦交渉が目立った進展を欠く中で高値圏を維持していたが(Bloomberg)、この日はUSDAが9月のWASDE(需給報告)で2026/27年度の農家販売価格見通し(小麦6.40ドル、トウモロコシ4.80ドル、大豆12ドル)を示したことも重なり、利益確定売りが優勢となった(DTN)。
3. 急変動の特集
特集は「銅」の続報(史上最高値からの反落継続)。LME3か月物銅は9月9日につけた史上最高値1トン14,875ドルから、9/10の14,743ドル前後を経て、9/11はおよそ14,286ドル前後(前日比-3.1%程度)まで反落した(Trading Economics)。なぜ動いたか: FXStreet(ING)は、米国による精製銅への関税が最終決定していないとのロイター報道を受け、関税プレミアムが乗った分の価格がはく落したと指摘している。一方、Business Recorderが伝えたチリの悪天候による鉱山生産下方修正、LME在庫の5月末対比4割減、上海在庫の3月ピーク比85%減といった需給逼迫の構造要因は解消していない。生活・産業への波及としては、前回同様、電線・建材・データセンター建設コストの上振れを通じた住宅・電子機器価格への波及が引き続き警戒される。
なお前回特集した原油の「中間選挙後まで高止まり」という見通しも、本日のオマーン会談報道により短期的には巻き戻される形となった(詳細は「2. 商品別動向」参照)。
4. 強気派 vs 弱気派
金
- 強気: UBSは2026年末目標を5,000ドルから6,200ドルへ引き上げ、地政学リスクが高まった場合の上振れシナリオとして7,200ドルを提示。バンク・オブ・アメリカも12か月目標6,000ドルとし、FRB人事を巡る政策不確実性・財政赤字・投資家の低い保有比率を根拠に挙げる。JPモルガンも年末目標を6,300ドルへ引き上げ、年間およそ800トン規模の中央銀行買いが続くとの見方を示す(goldsilver.com)。
- 弱気: JPモルガンのグレッグ・シェアラー氏は、米国の成長・雇用が堅調なままインフレ加速が続き、FRBが利上げサイクルに踏み込めば投資需要が腰折れするリスクを最大の弱気材料に挙げている(Forbes)。
銀
- 強気: ゴールドマン・サックスは2026年の銀平均価格を1オンス85〜100ドルと予想し、グリーンエネルギー・工業需要の拡大を根拠に主要行の中で最も強気な部類に入る(goldsilver.com)。
- 弱気: TDセキュリティーズは2026年通年の平均予想を44ドルにとどめており、産業需要の軟化とタカ派的なFRBを根拠に主要行の中で最も弱気な立場を取る(同上)。
原油
- 強気: ホルムズ海峡の通航がなお平時の水準を大きく下回っており、チョークポイントリスクが残る限り地政学プレミアムの完全な剥落は考えにくいとの見方が根強い(CNBC)。
- 弱気: ゴールドマン・サックスは2026年第4四半期のブレント予想を80ドル、WTIを75ドルに据え置いており、非OPEC供給の増加を根拠に構造的な供給過剰をなお見込む(TheStreet)。
銅
- 強気: 主要行は電化・送電網増強・再生可能エネルギー向け需要の拡大が供給を上回るとし、新規鉱山の開発リードタイムが平均17年に及ぶ構造的な制約を強気の根拠に挙げる(deVere Group)。
- 弱気: ING(FXStreet寄稿)は、対米関税決定の遅れを受けて関税プレミアム分の価格が剥落しており、ファンダメンタルズを超えて積み上がった思惑買いの巻き戻しリスクを指摘する(FXStreet)。
小麦
- 強気: ロシア・ウクライナの停戦交渉が目立った進展を欠いており、黒海沿岸の輸出インフラ攻撃が続く限り供給不安を根拠にした強気派の見方は残る(Bloomberg)。
- 弱気: USDAは9月のWASDEで2026/27年度の農家販売価格見通しを平均6.40ドル/ブッシェルとし、世界的な供給の豊富さを踏まえた比較的落ち着いた水準を提示している(DTN)。
5. 地政学・物価関連ニュース
湾岸協力会議(GCC)加盟国とイランの外相が9月14日、オマーンのサラーラでホルムズ海峡の航行を一時的に規制する暫定合意について協議する見通しとなった。開戦(2月28日)以来、イランと湾岸諸国の高官が顔を合わせる初めての機会となる(Bloomberg)。この報道を受けて原油は反落したが、週間ベースでは大幅高を維持しており、地政学リスクプレミアム自体が消えたわけではない。
物価面では、8月米CPIが前月比0.4%(加速)・前年比3.4%となり、FRBの利上げ観測が急伸してドル指数(DXY)は99.11〜99.36で堅調に推移した(FXStreet)。原油高を背景にディーゼル価格が史上初めて1ガロン6ドルを超えたとの指摘もあり(Yahoo Finance)、輸送・物流コストを通じた物価への波及が引き続き警戒される。銅の高値圏推移も電線・建材コストを通じて電子機器・住宅関連価格への波及として意識される。
6. テクニカル分析
金: RSI(14日)はおよそ45で、上昇モメンタムがやや後退した「様子見」の水準を示す。50日移動平均線(4,268.52ドル)が当面の下値支持、100日線(4,335.42ドル)が目先の上値抵抗となっており、21日線(4,457.52ドル)・200日線(4,538.45ドル)はさらに上の抵抗帯として残る(FXStreet)。ドル指数が99台で底堅く推移していることも、金にとっては逆風となりやすい水準とされる。
銀: RSI(14日)はおよそ41と中立の50を下回っており、短期的なモメンタムはやや下向き。50日線・200日線がともに65.8ドル近辺で収れんし上値の抵抗帯となっているほか、いわゆる「ヘッドアンドショルダーズ」の首線(ネックライン)を下回って推移しており、目先は弱気優勢のパターンとされる。62.55ドルを下回ると61.01ドル、60.00ドルが視野に入るとの分析がある(FXStreet)。投機筋のポジション動向(CFTC建玉明細)の最新値は今回も確認できなかった。
WTI原油: RSIは買われすぎ水準からやや低下したものの66前後となお高めで、過熱感が残る。心理的節目の100ドルが上値抵抗、その上に105ドル、突破すれば3月高値の113.28ドルが視野に入るとされる一方、90〜92ドル帯が当面の支持、その下に100日線(85ドル)・50日線(82ドル)・200日線(78ドル)が控える。100日線が200日線を上回る形が続いており、中期的な上昇基調自体は維持されているとの見方が優勢(FXStreet)。
天然ガス: 上昇を示していた斜めのトレンドラインを割り込み、2.751ドル近辺まで下落したのち買いが入って下げ止まった。フィボナッチの38.2%押し(2.851ドル)、50%押し(2.882ドル、割り込んだトレンドラインと重なる)が当面の戻り待ちの上値めど、61.8%押し(2.913ドル近辺)は100日移動平均線ともほぼ重なる水準とされる。100日線が200日線を上回る形自体は維持されており、長い目で見た上昇基調のシグナルは残っているものの、短期のモメンタムは下向きに転じている(fxdailyreport.com)。
小麦: 移動平均線ベースの指標は総じて「強い買い」を示唆する状態が続いており、8月28日につけた3年半ぶり高値(770セント)を意識した上昇基調自体は崩れていないとされる。この日の反落(-16セント)は、USDAのWASDE発表を受けた利益確定の範囲内とみられ、トレンド転換のシグナルは今のところ出ていない。

