前日からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 前回レポートで「今夜最大の注目イベント」として予告されていたウォーシュFRB議長の初のジャクソンホール基調講演が実施され、結果は「タカ派」と受け止められた。「インフレは依然として高すぎる」「まだやるべきことがある」と発言し、AIによる生産性向上のタイミングに疑問を呈し、FRBは「より静かな」姿勢を志向すべきだと述べた。この結果、寄り付き+0.5%程度だった株式相場は終盤にかけて失速し、S&P500-0.25%、ナスダック総合-0.52%、NYダウ-0.02%で引けた(NYダウはBMOのバイル・ハートマン氏が「意図的にタカ派的な講演で、FRBが利上げを辞さない姿勢であることへの疑念を払拭した」とコメント)。 出典: Axios、CNBC、Yahoo Finance、The Motley Fool、CNBC(FedWatch)
  • 9月FOMC(9/16)での利上げ確率は講演前の35〜40%程度から56〜57%程度へ急上昇(CME FedWatch)。前回レポードでは「9月FOMCでの利下げをある程度織り込んでいる」との見方が紹介されていたが、本日は逆に利上げ観測の方が優勢に転じた。2年債利回りは日中で最大の値幅(6〜8bp超)で上昇し4.30%前後、一方30年債利回りはやや低下する「ベアフラットニング」の動きとなった。10年債利回りは4.68%前後とほぼ変わらず。 出典: CNBC、CNBC(国債利回り)
  • エヌビディア株が-4.58%と、前回レポートで報じた前日の+8.7〜8.9%急伸分の大半を吐き出した。半導体ETF(iシェアーズ半導体ETF)も-3.20%。決算内容自体への懸念というより、金利観測の変化と利益確定売りが背景。 出典: The Motley Fool
  • ペイパル(PYPL)株が12〜16%急落。ストライプとアドベント・インターナショナルの企業連合が準備していた1株60.50ドル(総額約530億ドル、当初報道では500億ドル規模)での非公開化(TOB)提案を、ペイパル取締役会が「金額が不十分」として拒否し、連合側が買収検討を断念したと報じられた。前回までに無かった新規の個別銘柄材料。 出典: Bloomberg、Yahoo Finance、Forbes
  • マーベル・テクノロジー(MRVL)が決算で売上高27.39億ドル(前年同期比+37%、過去最高)を計上し、2027会計年度売上高見通しを約120億ドル、2028会計年度目標を約180億ドルへ引き上げたにもかかわらず、株価は時間外で-7.6%、当日終値ベースでも-7%程度下落した。年初来+184%まで買われていた反動と、粗利益率が前四半期比0.9ポイント低下する見通し、グーグルとの提携による増収の顕在化時期への不透明感が背景とされる。新規の個別銘柄材料。 出典: ts2.tech、247wallst.com
  • ワークデイ(WDAY)が決算で調整後EPS2.75ドルと市場予想を上回り+6%、セールスフォース(CRM)は前回レポートで報じた前日+22.6%の急伸に続きさらに+3%上昇した。新規の決算材料。 出典: Yahoo Finance
  • ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)が51.7と、7月の55.2から悪化し市場予想54.5を下回った。現況指数51.8、期待指数50.6といずれも悪化し、高齢層・低所得層・低学歴層で特に落ち込みが大きかった。1年先インフレ期待は4.2%→4.3%に上昇(長期期待は3.3%で横ばい)。前回レポートで扱われていた新規失業保険申請件数の改善(結果良好)とは対照的に、本日は消費者心理の悪化という新規の弱い経済指標が加わった。 出典: Bloomberg、Yahoo Finance
  • ドル指数(DXY)は99.47前後(前回99.17から+0.31%)、ドル円は159.55円前後(前回159.38円から+0.10%)と、いずれも前回に続きじりじりと上昇。9月利上げ観測の高まりが背景とみられる新規の値動き。 出典: Trading Economics(ドル)、Trading Economics(円)
  • ハリバートン(+2%)、シェブロン(+0.9%)がベネズエラでのエネルギー事業拡大に関する報道を受けて上昇した。新規の個別銘柄材料。 出典: Yahoo Finance

昨日と同じこと(継続)

  • ジャクソンホール会議そのものが市場の最大の注目材料であり続けた点は継続(前回は「予告」、本日は「結果判明」という違いはある)。会議自体は8/29(土)まで続くが、市場を動かす山場は8/28のウォーシュ議長講演で終えたとみられている。 出典: Regards of Wall Street
  • マイケル・バリー氏らが指摘するエヌビディアの「循環的な資金調達」構造への懸念や、AI投資が実際の収益に結びつくかを問う論点は、明確な新規報道は無いものの株式相場の地合いの背景として引き続きくすぶっている。 出典: The Motley Fool
  • VIX(恐怖指数)は14.2前後(8/28)と、前回の15.21から一段と低下し2026年に入って最低水準を更新した。低ボラティリティ環境が継続。Fear & Greed Indexも「グリード」圏(58前後)を維持しており大きな変化はない。 出典: CNBC、CNN Fear & Greed Index

要因の連続性

  • 継続要因: ドル高基調(DXY・ドル円とも前回に続き上昇)、マイケル・バリー氏らのエヌビディア「循環的資金調達」への警戒、ジャクソンホール会議自体への注目は、前回に続き本日も背景要因として働いている。
  • 新規要因: (1) ウォーシュ議長講演がタカ派的だったことによる9月利上げ観測の急上昇(35〜40%→56〜57%)、(2) エヌビディア株の急落(前日急伸の反動+金利観測の変化)、(3) ペイパルの非公開化提案撤回、(4) マーベルの「好決算でも下落」という反応、(5) ミシガン大学消費者信頼感の悪化とインフレ期待の上昇、が新たに加わった。
  • 解消した要因: 前回材料視されていた「9月FOMCで利下げが織り込まれている」という前提は、本日のウォーシュ講演を受けて後退・転換した(利上げ観測の方が優勢に)。前回報じたウェンディーズ(トライアン非公開化提案撤回)、半導体関税拡大検討の各材料については本日新たな続報は確認できず、材料としては小休止している。

1. 市況サマリー

指数 終値 前日比 騰落率
S&P500 7,711.76 -19.23 -0.25%(情報源により-0.13%との報道もあり)
ナスダック100(NDX) 29,448.36前後 -129.39前後(前回値29,577.75比) -0.44%前後(情報源により-0.65%との報道もあり)
NYダウ 53,559.99 -9.45 -0.02%

(取得時点: 2026-08-28米国市場引け後。出典: Yahoo Finance(Friday, August 28)、ナスダック100はInvesting.com(NDX Historical Data)。 なお、ナスダック総合指数は26,402.42(-138.93、-0.52%。情報源により-0.30%との報道もあり)、ラッセル2000(小型株)は2,972.37(-41.97、-1.39%)と、指数全体の中でも下げが目立った。前回・前々回に続き情報源間で騰落率の細部(NDXの前日終値そのものが29,577.75〜29,641.56とばらつく)に差異があり、断定は避けるが、方向感(3指数とも小幅安、小型株はより下げがきつい)は複数情報源で一致している。)

2. 指数別動向

S&P500

終値は7,711.76(-0.25%)。寄り付きは+0.5%程度の上昇で始まったが、ウォーシュ議長のタカ派的な講演を受けて終盤にかけて失速し、下落に転じた。11セクター中、金利敏感なグロース・半導体株を中心に軟調。 出典: Yahoo Finance、The Motley Fool

ナスダック100

前日+8.7〜8.9%急伸したエヌビディア(本日-4.58%)や半導体ETF(iシェアーズ半導体ETF、-3.20%)が重荷となり、指数は29,448ドル前後(前回29,577.75ドルから-0.44%前後、情報源により-0.65%)で終えた。金利観測の急変を受けた高PER・グロース株からの資金流出が目立った。 出典: The Motley Fool、Investing.com

NYダウ

終値は53,559.99(-0.02%)とほぼ横ばい。アップル(+1.63%、サービス価格引き上げが好感)やハリバートン(+2%)、シェブロン(+0.9%)が下支えとなった一方、ハイテク色の弱い分だけ下げ幅は限定的だった。 出典: Yahoo Finance、The Motley Fool

3. 強気派 vs 弱気派

強気派(ブル)

  • サイラス・アミニ氏(ハイフン・ウェルス・マネジメント、最高投資責任者): ウォーシュ議長がインフレ目標に向けた明確な姿勢を示したことについて「債券市場の不安をある程度和らげるはずだ」と評価した。(新規) 出典: AOL(Reuters系)
  • マーク・ハケット氏(ネーションワイド、チーフ・マーケット・ストラテジスト): 「ウォーシュ氏はやろうとしていたことを成し遂げた。市場を過度に混乱させることなく自身の見解を伝えた」とコメントし、タカ派姿勢を段階的にではなく一貫した形で再確認したと評価した。(新規) 出典: Yahoo Finance
  • TradingKey(マリオ・マー氏、アナリスト): 「9月に利上げが再開されたとしても、その影響は短期的な攪乱にとどまり構造的なリスクではない」とし、経済の底堅さと大型企業の好業績を根拠に2026年下期の米国株について長期的な強気見通しを維持するとした。ただしコアインフレ・長期インフレ期待・失業率の安定という3条件が崩れないことが前提と留保している。(新規) 出典: TradingKey

弱気派(ベア)

  • バイル・ハートマン氏(BMO、米国金利ストラテジスト): ウォーシュ議長の講演を「意図的にタカ派的な講演で、物価安定のために利上げも辞さないというFRBの姿勢への疑念を払拭するものだった」と分析した。(新規) 出典: CNBC
  • クリス・ガンスター氏(フィデリス・キャピタル、債券部門責任者): 「ウォーシュ氏は予想以上にタカ派的だった」とし、利上げの可能性が高まったとの見方を示した。(新規) 出典: AOL(Reuters系)
  • マイケル・アローン氏(ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、チーフ・インベストメント・ストラテジスト): 差し迫った利上げについては懐疑的な見方を崩していないものの、FRBが政策運営上の柔軟性を残したとの見方を示し、市場の急激な利上げ織り込みに対しては慎重な姿勢を示した。(新規) 出典: AOL(Reuters系)
  • マイケル・バリー氏(著名空売り投資家): エヌビディアの循環的な資金調達構造への警鐘は継続。本日のエヌビディア株下落(-4.58%)は主に金利観測の変化が理由とみられるが、バリー氏の構造的懸念自体は解消していない。(継続) 出典: The Motley Fool

4. 経済ニュース

経済指標

  • ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値、8月): 51.7(市場予想54.5を下回り、7月の55.2から悪化)。現況指数51.8、期待指数50.6。高齢層・低所得層・低学歴層で悪化が顕著だった。1年先インフレ期待は4.2%→4.3%に上昇、長期(5〜10年)インフレ期待は3.3%で横ばい。 出典: Bloomberg、Yahoo Finance

政策

  • 半導体関税拡大の検討(前回報道)について、本日時点で新たな進展の報道は確認できず、続報待ちの状態が続いている。 出典: CNBC

注目された個別銘柄・決算

  • ペイパル(PYPL): ストライプ/アドベント・インターナショナル連合による1株60.50ドル(総額約530億ドル)での非公開化提案を、取締役会が「金額不十分、規制・資金調達面のハードルもある」として拒否し、連合側が買収検討を断念したと報じられ、株価は12〜16%急落した。 出典: Bloomberg、Forbes
  • マーベル・テクノロジー(MRVL): 2027会計年度第2四半期売上高27.39億ドル(前年同期比+37%、過去最高)、非GAAP EPS0.94ドルを計上し、通期売上高見通しを約120億ドルへ、2028会計年度目標を約180億ドルへ引き上げたが、粗利益率の前四半期比低下見通しやグーグル提携による増収の顕在化時期への不透明感から株価は-7%程度下落した。 出典: ts2.tech、247wallst.com
  • エヌビディア(NVDA): 前日+8.7〜8.9%の決算後急伸から一転、本日は-4.58%。決算内容自体への疑念というより、ウォーシュ講演を受けた金利観測の変化と利益確定売りが背景。 出典: The Motley Fool
  • ワークデイ(WDAY)/セールスフォース(CRM): ワークデイは決算で調整後EPS2.75ドルと予想超え、+6%。セールスフォースは前日+22.6%の急伸に続きさらに+3%上昇した。 出典: Yahoo Finance

5. FOMC・FRB・金利・為替

FRB/FOMC

  • ケビン・ウォーシュFRB議長が就任後初となるジャクソンホール基調講演(米東部時間8/28午前10時)を実施。「インフレは依然として2%目標を上回っており、この夏のインフレ指標の改善は基調的なトレンドの改善を意味しない」「まだやるべきことがある」と述べ、AIによる生産性向上のタイミングに疑問を呈し、FRBはより「静かな」姿勢を志向すべきだと発言した。市場はこれをタカ派と受け止め、9月16日のFOMCでの利上げ確率はCME FedWatchで講演前の35〜40%程度から56〜57%程度へ急上昇した(講演前は据え置き予想が7割近くを占めていたとの報道もある)。 出典: Axios、CNBC、CNBC(FedWatch)

金利

  • 2年債利回りは日中で6〜8ベーシスポイント超上昇し4.30%前後(6月以来最大の値動き)。一方30年債利回りはやや低下し5.17%前後、10年債利回りは4.68%前後とほぼ横ばいで、短期金利が上昇し長期金利が伸び悩む「ベアフラットニング」の動きとなった。ゴールドマン・サックスのリッチ・プリヴォロツキー氏は「フォワードガイダンスを行わないと明言していた中での発言としては、やや不自然だった」と指摘し、同僚のジョージ・コール氏も講演内容の整合性に疑問を呈した。 出典: CNBC、ZeroHedge

為替

  • ドル指数(DXY)は99.47前後(前回99.17から+0.31%)に上昇。9月利上げ観測の高まりを背景とした続伸とみられる。 出典: Trading Economics
  • ドル円は159.55円前後(前回159.38円から+0.10%)とじりじり円安ドル高が進んだ。 出典: Trading Economics

6. テクニカル分析

注記: 前回・前々回に続き、情報源によって指数の終値・移動平均線・RSIの取得時点にばらつきがあるため、断定的な売買判断には利用しないこと。

S&P500

現在値(7,711ドル台)は50日移動平均(7,686〜7,705ドル前後)・200日移動平均(7,632〜7,648ドル前後)をいずれも上回る水準で推移しており、中長期的には「買い」を示すゾーンが続いている。RSI(14日)は51.5前後と中立圏。ピボットポイントでは支持線7,698.5ドル、抵抗線7,713.3ドルが目安とされる。 出典: Investing.com

ナスダック100

RSI(14日)は51.1前後と中立圏。50日移動平均(29,293〜29,415ドル前後)・200日移動平均(29,128〜29,341ドル前後)をいずれも上回る水準にあり、中長期的な上昇トレンド自体は崩れていないが、短期的には前日終値付近での一進一退が意識されている。支持線29,370ドル、抵抗線29,448ドル前後が目安。 出典: Investing.com

NYダウ

RSI(14日)は51.0前後と中立圏。50日移動平均(53,425〜53,514ドル前後)・200日移動平均(53,304〜53,364ドル前後)をいずれも上回り、3指数の中では引き続き最もテクニカル的に底堅いとの評価が続いている。支持線53,509ドル、抵抗線53,571ドル前後が目安。 出典: Investing.com

センチメント指標(補助)

  • VIX(恐怖指数): 14.2前後(8/28)。2026年に入って最低水準を更新し、落ち着いた地合いが続いている。 出典: CNBC
  • Fear & Greed Index: 58前後(直近値)で「グリード(強欲)」圏を維持しており、前回までの水準から大きな変化はない。 出典: CNN Fear & Greed Index

7. 今夜の注目イベント

  • 8/29(土)は米国市場は休場。ジャクソンホール会議自体は8/29まで続くが、市場を動かす山場である基調講演は8/28に終えており、追加の講演で新たな材料が出るかが注目点となる。 出典: Regards of Wall Street
  • 8/31(月、米国時間)はアップルのティム・クックCEOの最終出社日で、9/1付でジョン・ターナス氏が新CEOに就任する。ハードウェア開発トップからの内部昇格であり、経営体制の節目として注目されている。なお9/1(火)は労働祭(レイバーデー)の前日にあたるが休場ではなく、米国の株式市場が休場となるのは9/7(月、レイバーデー)である。 出典: MacRumors、Apple Newsroom
  • 来週は9/2(火)にISM製造業景況指数、9/3(水)にJOLTS求人件数・FRB地区連銀経済報告(ベージュブック)、9/4(木)にADP雇用統計・ISM非製造業景況指数、9/5(金)に8月分雇用統計(非農業部門雇用者数・失業率)が予定されており、9月16日のFOMCでの利上げ観測を左右する重要指標が相次ぐ。 出典: [各種決算・経済カレンダー(複数ソース集約)]

8. 参考リンク