前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 原油は前回の「イラン高官のホルムズ海峡開放提案」による続落から一転して急反発した。トランプ大統領が22日の国連総会演説で、イランとの合意に至らなければ「迅速かつ徹底的に壊滅させる」と述べ、今後数週間の戦闘継続とイランの発電所爆撃を改めて警告したことが引き金となり、原油は一時4%超・1バレル103ドル台まで急騰する場面もあった。WTIは終値ベースで前日比2.24%高の92.54ドルに落ち着いた(新規、CNN.co.jp、TradingEconomics)。
- 金は4,307.63ドル(前日比-0.81%)、銀は65.27ドル(前日比-1.11%)と、前回までの堅調な値動きから一転して下落した。ドル指数が7月30日以来の高水準(100台前半)まで上昇したことに加え、セントルイス連銀のアルベルト・ムサレム総裁が「インフレ目標達成のためさらなる利上げが必要になる場合がある」、シカゴ連銀のオースタン・グールズビー総裁が「供給ショックに対応する必要がある」とそれぞれタカ派的な発言をしたことが重荷となった(新規、Rio Times)。
- 米10年債利回りは2007年以来の高水準(5.1%台)まで上昇しており、利息を生まない貴金属の保有機会費用が一段と高まったことも金・銀の重しとなった(詳細は
econ_indicatorsカテゴリ参照、新規)。 - 天然ガスは3.02ドル/MMBtuまで上昇(+1.90%)し、7月8日以来の高値を付けた。今秋の高温予想を受けたガス火力発電向け需要の増加観測が材料となった(新規、TradingEconomics)。
- 銅の供給不安について、Sprott Asset Managementが「世界の鉱山銅生産が2017年以来初めて減少する可能性がある」と指摘していることが新たに判明した。チリの産出減少、インドネシア・コンゴ民主共和国の鉱山での混乱により、年間生産量が推計60万トン押し下げられているという(新規、MINING.COM)。
昨日と同じこと(継続)
- 銅は上海・ロンドンの倉庫在庫の薄さを背景とした需給逼迫という構図が続いており、記録的な高値圏を維持している(継続)。
- サウジアラビアの東西パイプラインの供給不安は、今回のイラン情勢の急変とは別の要因として引き続きくすぶっている(継続)。
要因の連続性
- 継続要因: 銅の中国実需・供給逼迫、FRBの金融引き締め姿勢という金相場への重し。
- 新規要因: トランプ大統領の対イラン強硬発言による地政学リスクの再燃(原油の押し上げ要因)、FRB高官(ムサレム氏・グールズビー氏)のタカ派発言とドル高(金・銀の押し下げ要因)、今秋の高温予想による天然ガス需要増観測。
- 解消した要因: 前回の原油下落要因だった「イラン高官のホルムズ海峡開放提案」による地政学リスク後退は、トランプ氏の強硬発言により覆され、逆に上昇要因に転じた。
1. 価格サマリー
| 商品 | 価格(目安) | 変化 | 限月・指標 |
|---|---|---|---|
| 金 | 4,307.63ドル(9/23) | 前日比-0.81% | スポット目安 |
| 銀 | 65.27ドル(9/23) | 前日比-1.11% | スポット目安 |
| WTI原油 | 92.54ドル(9/23) | 前日比+2.24%(日中一時103ドル台) | NYMEX期近 |
| 銅 | およそ6.74ドル/ポンド(9/23) | -0.23%、高値圏を維持 | Comex目安 |
| 天然ガス | 3.02ドル/MMBtu(9/23) | +1.90%、7月8日以来の高値 | Henry Hub |
| トウモロコシ | 529.00セント/bu(9/23、12月限) | 軟調 | CBOT |
| 大豆 | 1,318.00セント/bu(9/23、11月限) | ほぼ横ばい | CBOT |
| 小麦 | 708.50セント/bu(9/23、12月限) | 軟調 | CBOT |
金・銀が下落する一方、原油が地政学リスクの再燃で急反発するという、前日までとは対照的な値動きとなった(Rio Times、TradingEconomics)。
2. 商品別動向
金・銀
金は前日比0.81%安の4,307.63ドル、銀は1.11%安の65.27ドルと、いずれも下落した。ドル指数が7月30日以来の高水準まで上昇したことに加え、セントルイス連銀のムサレム総裁が追加利上げの必要性に、シカゴ連銀のグールズビー総裁が供給ショックへの対応の必要性にそれぞれ言及するタカ派的な発言をしたことが重荷となった。米10年債利回りも2007年以来の高水準まで上昇しており、無利息資産である貴金属の保有機会費用の高さが意識されている。金銀レシオはおよそ66.5倍となっている(Rio Times)。
原油
トランプ大統領は22日の国連総会演説で、イランとの合意に至らなければ「迅速かつ徹底的に壊滅させる」可能性に言及し、今後数週間の戦闘継続とイランの発電所爆撃を改めて警告した。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くとの見方から供給懸念が再燃し、WTIは一時4%超上昇して1バレル103ドル台を付ける場面があったが、終値ベースでは前日比2.24%高の92.54ドルに落ち着いた。前回材料だった「イラン高官のホルムズ海峡開放提案」による地政学リスク後退は、今回の強硬発言で覆された形である(詳細はworld_affairs・us_stockカテゴリ参照、CNN.co.jp)。
銅
Comex銅はおよそ1ポンド6.74ドル(-0.23%)とわずかに反落したが、記録的な高値圏を維持している。Sprott Asset Managementは、チリの産出減少やインドネシア・コンゴ民主共和国の鉱山での混乱により、世界の鉱山銅生産が2017年以来初めて年間ベースで減少する可能性があると指摘し、年間生産量への影響は推計60万トンに上るという。上海・ロンドンの倉庫在庫が薄いことも需給逼迫を裏付けている(Rio Times、MINING.COM)。
天然ガス・農産物
天然ガス(Henry Hub)は3.02ドル/MMBtuまで上昇(+1.90%)し、7月8日以来の高値となった。今秋の高温予想を受けたガス火力発電向け需要の増加見通しが材料となった。農産物は軟調な展開で、トウモロコシ(12月限)は529.00セント/bu、小麦(12月限)は708.50セント/buといずれも下落、大豆(11月限)は1,318.00セント/buとほぼ横ばいだった(TradingEconomics、IndexBox)。
3. 急変動の特集
原油(WTI)は23日、トランプ大統領の国連演説での対イラン強硬発言を受け、日中に4%超・1バレル103ドル台まで急騰する場面があった。前日までイラン高官の融和的な提案を材料に続落していた流れが、わずか1日で完全に逆転した形である。トランプ氏は合意に至らなければイランを「迅速かつ徹底的に壊滅させる」可能性に言及し、発電所爆撃も改めて警告した。終値では上げ幅を縮小し2.24%高の92.54ドルとなったが、地政学リスクプレミアムの急速な巻き戻しは、ガソリン・軽油など川下製品のコストや、インフレ動向を通じた金融政策運営にも影響しうる。今後の焦点は、トランプ氏の発言が実際の軍事行動に発展するか、それとも交渉レバレッジとしての発言にとどまるかである(CNN.co.jp)。
4. 強気派 vs 弱気派
原油
- 強気: トランプ大統領の対イラン強硬発言により、ホルムズ海峡の事実上の封鎖継続という供給懸念が再燃したとの見方が広がった(新規、CNN.co.jp)。
- 弱気: 発言はあくまで外交上のレバレッジであり、実際の軍事行動に発展するかは不透明で、地政学リスクプレミアムは剥落しやすいとの慎重な見方も残る(新規)。
金・銀
- 弱気: Rio Timesは、ドル高とFRB高官(ムサレム氏・グールズビー氏)のタカ派発言が金・銀の重しになっていると指摘した(新規、Rio Times)。
- 強気: 前回既報の中国の記録的な金輸入という実需の強さは、下値を支える材料として引き続き意識されている(継続)。
銅
- 強気: Sprott Asset Managementは、世界の鉱山銅生産の構造的な減少見通しを根拠に、供給逼迫による高値圏の持続を指摘した(新規、MINING.COM)。
5. 地政学・物価関連ニュース
トランプ大統領の対イラン強硬発言による原油急反発は、エネルギーコストを通じた物価上昇圧力の再燃につながりうる。FRB高官のタカ派発言・米長期金利の高水準と合わせ、インフレと金融引き締めを巡る綱引きが一段と意識される展開となっている(詳細はecon_indicators・world_affairsカテゴリ参照)。今秋の高温予想による天然ガス需要増も、冬場に向けたエネルギーコストの動向として注視される(TradingEconomics)。
6. テクニカル分析
金: 4,307.63ドルまで下落し、前回の4,358.80ドルから調整した。ドル高・金利高という逆風が強まっており、短期的には上値の重い展開が意識される。具体的な移動平均線・RSIの最新数値は本レポート作成時点で確度の高い情報を確認できなかった(次回以降で補う)。
銀: 65.27ドルまで下落し、金よりも大きい下げ幅となった。金銀レシオはおよそ66.5倍に上昇しており、銀が相対的に割安との見方も一部にある。
WTI原油: 92.54ドルまで急反発し、心理的節目の90ドルを再び上回った。地政学リスクの再燃で短期的には上昇基調が意識されるが、発言の実行力次第で反落するリスクもはらむ。
銅: 高値圏でのわずかな調整にとどまっており、供給不安を背景とした上昇トレンドは崩れていない。
天然ガス: 7月8日以来の高値を更新しており、季節要因(今秋の高温予想)を背景とした上昇基調が続いている。
農産物: トウモロコシ・小麦が軟調、大豆はほぼ横ばいと、全体として方向感に乏しい展開が続いている。

