前日からの変化

変わったこと(変化・新規)

  • 米財務省のベセント長官が2026年8月24日、対イラン「エコノミックD-デー」と称する新たな経済制裁パッケージを発表。イラン側はホルムズ海峡の通航ルールに違反する船舶を拿捕・抑留する可能性があると警告し、地政学リスクが新たな局面に入った(CNBC、NPR)。
  • OPEC+が9月分の日量18.8万バレル増産を承認し、2023年以来の自主減産(約350万バレル/日相当)の巻き戻しを完了。年内は据え置き方針と伝えられ、原油の需給緩和材料として新たに明確化した(CNBC)。
  • トウモロコシが作柄懸念を背景に491.00セント/ブッシェル(前回比+1.50%)まで上昇し、17ヶ月ぶりの高値圏に接近(Trading Economics)。
  • カカオは前回終値6,034.00ドルから5,929.00ドルへ反落(-1.74%)。ただし直近1ヶ月では+16.25%と高値圏自体は継続している(Trading Economics)。
  • ドル指数(DXY)は8月22日につけた週間安値98.55から98.99へ反発し、ドル安の勢いがやや一服した(Vantage Markets、Trading Economics)。
  • 8月27日から29日にかけてジャクソンホール経済シンポジウムが開催され、ウォーシュFRB議長が就任後初めての基調講演(28日)を行う予定。相場の新たなカタリストとして意識され始めた(Bloomberg経由の報道、Babypips)。
  • 大豆は中国需要を背景にした直近の上昇から一転、1,217.00セント/ブッシェル(前回比-0.65%)へ反落した(Trading Economics)。

昨日と同じこと(継続)

  • 金・銀は高値圏、週間ベースでの上昇基調を維持。米財政懸念(国債バイバック拡大、累積債務40兆ドル接近)とドル安を背景にした資産逃避買いの構図は変わらない(Kitco)。
  • CFTCの金ネットロング(8月21日時点222.2千枚)は前回報告時点から更新なし(次回発表待ち)。投機筋の高水準ポジションは継続(FX.co)。
  • ホルムズ海峡の実質封鎖状態(平時比大幅な通航減)は継続中(Lloyd's List Intelligence)。
  • 小麦は黒海(ロシア・ウクライナ)の輸出インフラへの攻撃による供給不安を背景に堅調な推移が続く(Trading Economics)。
  • 砂糖はエルニーニョ懸念とICE建玉過去最高(230万契約超、8月14日時点)を背景に高値圏を維持(BNN Bloomberg)。
  • 天然ガスはレンジ相場が継続。

要因の連続性

  • 継続要因: ドル安・米財政懸念(国債バイバック拡大、累積債務40兆ドル接近)による金・銀の資産防衛買い / ホルムズ海峡の地政学プレミアム(原油) / 黒海攻撃による小麦の供給不安 / エルニーニョ懸念とICE建玉過去最高による砂糖の強含み / ICEカカオ在庫の高水準によるカカオの高値圏かつ上値抑制の構図
  • 新規要因: 米国の対イラン新制裁「エコノミックD-デー」とイランのホルムズ海峡船舶拿捕警告 / OPEC+の9月増産完了・自主減産巻き戻し終了という需給緩和材料の明確化 / 米トウモロコシの作柄懸念による上昇 / ジャクソンホールでのウォーシュ議長初講演という新たなイベントリスク
  • 解消した要因: ドル安の勢い(DXYが週安値98.55からやや反発し一服) / カカオの上昇モメンタム(前回比では反落に転じた。ただし高値圏自体は解消していない) / 大豆の中国需要主導の上げ(本日は反落に転じた)

1. 価格サマリー(2026年8月24日 NY市場時点、前回2026-08-24レポート比)

商品 価格 前回(8/24レポート)比
金(COMEX、オンス建て) 4,641.10 USD/oz +0.73%(+33.75ドル)
銀(COMEX、オンス建て) 68.63 USD/oz -0.46%(-0.32ドル)
WTI原油(期近) 85.12 USD/バレル -2.23%(-1.94ドル)
ブレント原油(期近) 92.17 USD/バレル -2.35%(-2.22ドル)
天然ガス(Henry Hub、期近) 2.771 USD/MMBtu -0.06%(-0.002ドル)
小麦(シカゴ期近) 682.50 セント/ブッシェル +0.15%(+1.00セント)
トウモロコシ(シカゴ期近) 491.00 セント/ブッシェル +1.50%(+7.25セント)
大豆(シカゴ期近) 1,217.00 セント/ブッシェル -0.65%(-8.00セント)
カカオ(ICE期近) 5,929.00 USD/トン -1.74%(-105.00ドル)
砂糖(ICE期近) 17.66 セント/ポンド +0.28%(+0.05セント)

参考: 銅(COMEX/LME参考建値)は6.58 USD/ポンドで前日比+0.05%。LME在庫の積み増し(8月20日時点238,575トン)で需給ひっ迫懸念が後退した(Trading Economics)。

出典: 金、銀、WTI・ブレント、天然ガス、小麦、トウモロコシ、大豆、カカオ、砂糖(いずれも2026年8月24日時点データ、取得日本時間2026年8月25日早朝)。

2. 商品別動向

金・銀

金は2026年8月24日15時36分(ニューヨーク時間)時点で4,641.10ドル/オンス、前日比+0.84%と、3ヶ月超ぶりの高値圏を維持している(Kitco)。背景は、米財務省が10年債から30年債の買戻し規模を1回あたり最低40億ドルへ倍増させると発表したことによる長期金利低下とドル軟化、および米公債残高が40兆ドルに接近していることへの財政懸念である(Kitco News)。銀は同日13時20分時点で68.63ドル/オンスと前日比でやや軟化したが、70ドルの節目を意識する高値圏を維持している(Kitco)。CFTCの投機筋による金ネットロングは8月21日時点で222.2千枚と高水準が続いている(FX.co)。

原油

WTIは85.12ドル/バレル、ブレントは92.17ドル/バレルといずれも前回比で2%超下落した(Trading Economics)。下落の背景として、米財務省が2026年8月24日に対イラン新制裁「エコノミックD-デー」を発表し、市場が供給混乱の長期化よりも米国の圧力強化とそれに伴う不確実性の高まりを織り込んだとみられること、加えてOPEC+が9月分の日量18.8万バレル増産を承認し自主減産の巻き戻しを完了したことが需給緩和観測につながったことが挙げられる(CNBC、CNBC OPEC+報道)。一方でイランはホルムズ海峡の通航ルール違反船舶の拿捕・抑留を警告しており、地政学リスクは払拭されていない(CNBC)。

天然ガス

Henry Hub天然ガスは2.771USD/MMBtuと、前回からほぼ横ばい(-0.06%)で推移している(Trading Economics)。米南部の熱波ドームが冷房需要を支えて在庫積み増しペースを鈍らせている一方、総需要への影響は限定的とされる。米主要LNG輸出基地向けのガス送出量は日量17.2Bcf前後で高水準を維持している(American Gas Association)。米エネルギー情報局(EIA)は2026年のHenry Hub予想価格を月報で3.44ドル/MMBtuへ下方修正した(EIA関連報道)。

農産物

小麦は682.50セント/ブッシェル(前回比+0.15%)。ロシア・ウクライナ双方が黒海の輸出インフラを攻撃し合う状況が続いており、ロシアのノボロシースク港の穀物ターミナルが操業停止に追い込まれ、ロシアの黒海・アゾフ海経由の穀物輸出能力の9割超が停止しているとの分析もある(CNBC、Moscow Times)。トウモロコシは491.00セント/ブッシェル(前回比+1.50%)で、米国産の作柄懸念から17ヶ月ぶりの高値圏に接近している(Trading Economics)。大豆は1,217.00セント/ブッシェル(前回比-0.65%)で、直近の中国需要主導の上昇から反落した(Trading Economics)。

3. 急変動の特集(前回特集のフォローアップ)

前回(8月24日付レポート)で特集したカカオと砂糖について、値動きと波及を継続してフォローする。単発の急変動そのものは本日は確認されなかったため、新規の特集は「特集なし」とし、以下はフォローアップ位置づけとする。

  • カカオ: 5,929.00ドル/トンと前回比-1.74%(-105.00ドル)で反落したが、直近1ヶ月では+16.25%の上昇を維持しており、依然として7月上旬以来の高値圏に近い(Trading Economics)。ICE在庫の高水準による上値抑制の構図に変化はなく、方向感を欠く高値圏でのもみ合いが続いている。食品業界への波及としては、チョコレート製品の値上げ圧力が引き続きくすぶっている状況に変わりはない。
  • 砂糖: 17.66セント/ポンドと前回比+0.28%で続伸。ICEの世界砂糖市場の建玉は8月14日時点で230万契約を超え、前年同期比43%増の過去最高を更新した。米気候予測センターは2026年後半から2027年前半にかけて非常に強いエルニーニョが発生する確率を90%、「歴史的規模」のエルニーニョとなる確率を69%と予測しており、投資家・食品会社によるヘッジ目的の建玉積み増しが記録的な水準の資金流入(直近週で25億ドル規模)を伴って続いている(BNN Bloomberg)。エルニーニョが主産地(インド・タイ・ブラジル等)の天候リスクとして意識される限り、砂糖・ひいては加工食品価格への波及圧力は継続するとみられる。

4. 強気派 vs 弱気派

金

  • 強気: Bannockburn Global ForexのMarc Chandler氏は、金が200日移動平均線を2ヶ月ぶりに上回り、3月の史上最高値からの下落分の38.2%戻しを上回ったとして、4,680ドル付近を次のターゲットに挙げている。Adrian Day Asset ManagementのAdrian Day氏は、財務省による長期債買戻し拡大がドル安をもたらし金にとってプラスと指摘。Asset Strategies InternationalのRich Checkan氏は、新規債務で既存債務を借り換える動き自体がインフレ的であり金価格上昇につながると述べている(Kitco News)。
  • 弱気(慎重): FXStreetの分析(2026年8月24日付)は、日足RSIが72前後まで上昇し「2026年1月以来最も買われすぎに近い水準」に達しているとして、短期的な利益確定売り・調整局面のリスクを指摘している。ただし過熱状態が直ちに下落を意味するわけではないとも付言している(FXStreet)。

銀

  • 強気: Blue Line FuturesのチーフストラテジストPhillip Streible氏(Kitco、8月21日付)は、銀が8月に約20%上昇し71ドル近辺まで上げたとして、年末までに100ドルに達するとの見方を継続して示している(IndexBox経由のKitco分析)。
  • 弱気: TD SecuritiesはLBMA調査の中でも弱気寄りの立場を取り、2026年の銀価格を平均44ドルと予想。JPMorganのアナリストMarko Kolanovic氏は、投機的なポジションが実需のファンダメンタルズより速く積み上がった場合、銀が50ドルまで下落しうると警告している(FXStreet)。

原油

  • 強気(地政学リスク重視): ING(調査部門)は、ホルムズ海峡の混乱が長期化するシナリオではブレントが第4四半期平均105ドルへ、より深刻な再エスカレーションのケースでは120ドルへ達しうるとの分析を示している(Exchange Rates UK経由のING分析紹介)。
  • 弱気(需給緩和重視): Goldman Sachsは、2026年は市場が供給過剰を消化する最後の年になるとの見方を示し、需給緩和を背景にWTI原油価格がさらに下押しされるとの弱気シナリオを提示している(OilPrice.com)。

5. 地政学・物価関連ニュース

  • 米財務省のベセント長官は2026年8月24日、対イラン「エコノミックD-デー」と称する新たな経済制裁パッケージの詳細を発表。イラン側はホルムズ海峡の通航規則に違反する船舶の拿捕・抑留を警告しており、緊張が新たな局面に入っている(CNBC、NPR)。
  • ホルムズ海峡は実質的な機能不全状態が継続しており、Lloyd's List Intelligenceの分析では平時比で大幅に少ない通航量が続いていると報告されている(Lloyd's List Intelligence)。原油価格への地政学プレミアムの主因であり、物価面ではガソリン・輸送コストを通じたインフレ圧力の経路になり得る。
  • OPEC+は9月分の日量18.8万バレル増産を承認し、2023年発表分の自主減産(約350万バレル/日相当)の巻き戻しを完了。年内は生産枠を据え置く方針と報じられている(CNBC)。
  • ロシア・ウクライナ双方による黒海の穀物輸出インフラへの攻撃が続き、ロシアのノボロシースク港の穀物ターミナルが操業停止に追い込まれた。アグリコンサルタンシーのSovEconは、ロシアの8月の小麦輸出量が過去5年平均(月500万トン)を大きく下回る300万〜340万トン程度にとどまると予測しており、小麦を中心とした食料インフレ圧力の経路になっている(CNBC、Moscow Times)。
  • 米気候予測センターの分析に基づき、2026年後半から2027年前半にかけて非常に強いエルニーニョが発生する確率が90%とされており、砂糖をはじめとする主産地(インド、タイ、ブラジルなど)の天候リスクとして意識されている(BNN Bloomberg)。
  • 8月27日から29日にかけてジャクソンホール経済シンポジウムが開催され、ウォーシュFRB議長が就任後初の基調講演(28日)を行う予定。金利観測を通じてドルと金の双方に影響しうるイベントとして注目されている(Babypips)。

6. テクニカル分析

  • 金: 50日移動平均線(4,627.80ドル)・200日移動平均線(4,556.70ドル)をいずれも上回って推移しており、短期・長期のトレンドがともに上向きであることを示唆する「強気配列」の状態にある。RSIは記事により55.9(ニュートラル圏)から72前後(買われすぎ水準に近い)まで幅があるが、直近の急速な上昇を反映して過熱感が意識されやすい局面とされる。過熱状態は直ちに反落を意味しないが、短期的な利益確定売りが出やすい水準ともされる(Vantage Markets、FXStreet)。
  • 銀: RSIは65前後で「強気だがやや買われすぎに近づいている」水準とされ、直近数営業日はボリンジャーバンド上限に沿った推移が続いている。レジスタンスは68.5〜70ドル近辺、その上に69.9ドル・71ドル・72.4ドルの水準が控える一方、下値サポートは64ドル台・61ドル台とされている(CMC Markets/Daily Forex経由の分析)。
  • WTI原油: 100日移動平均線が200日移動平均線を上回る配列を維持しており、中期的な上昇トレンド自体は崩れていないとされる。一方でRSIは直近まで70超の買われすぎ水準に達していたとの分析もあり、直近の下落はその調整とも解釈できる。当面のサポートは85.00ドル前後(フィボナッチ61.8%戻し水準)、レジスタンスは86〜87.6ドル近辺とされる(Investing.com経由の分析)。
  • 天然ガス: 100日移動平均線が200日移動平均線を上回る「ゴールデンクロス」的な配列に転じており、下落トレンドから上昇方向への転換が意識されている。RSIは月前半の弱気圏から、月後半にかけて買われすぎ方向へ上昇しているとされる。フィボナッチ水準では2.694ドル(38.2%)、2.716ドル(50%)、2.738ドル(61.8%)が節目とされる(Barchart経由の分析)。
  • 農産物(小麦・トウモロコシ): 小麦はシカゴ限月ベースでサポートが646・626・620セント、レジスタンスが686・711・718セント近辺とされる。トウモロコシはサポート436・427・421セント、レジスタンスが472・478・484セント近辺とされ、いずれも直近の上昇でレジスタンス方向を試す展開が続いている(Price Group Grains Report)。

7. 参考リンク