前回からの変化

前回(2026-10-12)との比較である。先週月曜の回から1週間の変化をまとめる。今回は専門機関の原文を直接読めたもの(ISW)と、検索結果の要約や報道を通じて確認したもの(ICG、チャタムハウス、ACLED)が混在する。後者は原文までは確認できていないため、「〜と評価している」の形にとどめる。

変わったこと(変化・新規)

  • ウクライナでは、前回のISWの評価(攻勢の失速、限定的な前進)が、数字で補強された。ISWは、ウクライナ軍が否定したゲラシモフ参謀総長の主張(9月1日以降に1,800平方キロ超と92集落を制圧)に対し、ロシア軍は9月1日以降に計122平方キロを失ったと評価している(ISW)
  • ISWは、トランプ米大統領が10月16日夜にロシア・イラン制裁法の主要な制裁と関税の規定を免除する大統領令に署名したことを、ロシアが戦争の資金を確保し長引かせる助けになると評価している(ISW)。前回はこの話題はなかった
  • ホルムズ海峡の攻撃が増えた。ICGの専門家は、イランの攻撃の急増を、原油の流れが戻りつつあり、同国の海峡への支配が弱まっていたことを示す動きへの対抗策と見ていると伝えられている(検索結果の要約による。ICGの原文は未確認)(ICG)
  • イエメンのフーシ派が、リヤド、アブハ、ダンマームの空港を攻撃し、少なくとも20人が死亡したとの整理が出た。チャタムハウスは、イエメン戦争はサウジだけでなく湾岸全体の問題だと位置づけた(検索結果の要約による)(チャタムハウス)

昨日と同じこと(継続)

  • ISWはロシア軍の攻勢が加速していないとの評価を保っている。前線ではウクライナ軍がクラマトルスク東方で前進し、ロシア軍がコスチャンチニウカ北方で前進した、との整理である(継続)(ISW)
  • スーダンでは、国軍の拠点エルオベイドをRSFがドローンで攻撃する構図が続く(継続)(Ahram Online)
  • ガザでは、停戦の第2段階が実施されない状態が続いている。今週、これを更新する新しい専門機関の報告は確認できなかった(継続)

要因の連続性

  • 継続要因: ロシア軍の攻勢の失速、スーダンの消耗戦、ガザの停戦第2段階をめぐる不信
  • 新規要因: 米国の対ロシア制裁の免除、ホルムズ海峡とイエメンで同時に進む湾岸の緊迫。ウクライナの戦況ではなく、外部の要因が目立つ週だった
  • 解消した要因: なし

1. 今週の概観

過去1週間(10月12日〜18日)は、ウクライナで戦況の基本線は変わらない一方、米国の制裁免除という外交面の変化が起きた。中東ではホルムズ海峡の船舶攻撃が10月に入って急増し、イエメンのフーシ派によるサウジの空港攻撃が重なった。スーダンでは北コルドファン州と青ナイル州でドローン攻撃が続く。大規模な新しい衝突というより、既存の紛争が地理的に広がっている週である。

2. 紛争別の週間動向

ウクライナ

事実として、ロシア軍は10月16日夜から17日にかけて、ドローン332機と、数が不明のミサイル、バンデロール/ダンT型の徘徊型弾薬でウクライナを攻撃した(ISWによる記録)。前線では、ウクライナ軍がクラマトルスク東方で、ロシア軍がコスチャンチニウカ北方で前進した(ISW)。

分析面では、ISWは、ゲラシモフ参謀総長が10月16日に示した「9月1日以降に1,800平方キロ超、92集落を制圧」という主張を誇張と評価した。ウクライナ軍の報道官も公式にこれを否定している。ISWは、同期間のロシア軍の領土収支を122平方キロの純減とみている(ISW)。UNITED24 Mediaも、プーチン氏が示した6,500平方キロの占領はその約45分の1が実態だと伝えるが、これはウクライナ寄りのメディアの試算である(UNITED24 Media)。ISWは米国のシンクタンクで、ウクライナを支援する国の機関の分析であり、数字は独立の機関による突き合わせができていない。

ISWはまた、ポーランド当局が冬の間にロシアが同国の物流インフラへの妨害工作を強める可能性を警告したこと、スペースXのスターリンクやスターシールド技術をウクライナ軍が、ジェット推進のロシア製ドローンの迎撃に使えるかが不明であることも挙げている(同上)。

ホルムズ海峡・イラン

事実として、英国の海上貿易運用機関(UKMTO)の集計を引いた報道では、10月初めから11隻の商船が海峡の内外で攻撃を受けた。1日に6隻が標的になった日もあり、戦争開始以来で最多とされる。海峡は商業航行にとって事実上閉じた状態にあるとの表現もあるが、米国は管理していると主張しており、評価が割れている(検索結果の要約による)。

分析面では、ICGの専門家が、イランの攻撃の急増は、原油の流れが戻り、イランの支配が弱まっていたことへの対抗だと見ていると伝えられている(検索結果の要約による。原文は未確認)(ICG)。ACLEDは中東の紛争モニターで、ホルムズ海峡の海運の安全を今月の主題の一つに挙げている(ACLED)。

イエメン・サウジアラビア

事実として、フーシ派の攻撃がリヤド、アブハ、ダンマームの空港に及び、少なくとも20人が死亡、数百人が負傷したと整理されている。バブ・エル・マンデブ海峡周辺でのフーシ派の攻勢を受けて、本格的な戦争に戻ったとの見方もある(検索結果の要約による)。

分析面では、チャタムハウスは、イエメン戦争はサウジアラビアだけの問題ではなく湾岸諸国全体の問題で、サウジの輸送インフラへの攻撃は湾岸の供給路を脅かすと位置づけている(チャタムハウス)。ICGも、イエメン戦争とサウジとイランの関係、湾岸での新たなエスカレーションを論じる音声番組を公開している(ICG)。

スーダン

事実として、10月初めに北コルドファン州の州都エルオベイドで、ドローンがコルドファン大学の寮と避難した家族の拠点を攻撃し、少なくとも10人が死亡した。10月9日には約10機の自爆型ドローンが飛来し、民間人6人以上が負傷した(報道)。青ナイル州ではRSFとスーダン人民解放運動北部(SPLM-N)の連合がドローン攻撃を広げ、国境の町ゲイサンの小学校などが被害を受けたが、死傷者の報告はないと伝えられている(検索結果の要約による)(Ahram Online)。

分析面では、ICGの専門家が、国軍の前進が国軍の勝利への自信を強める一方、RSFの攻勢の継続は同組織も戦況に好機を見ていることを示す、と指摘していると伝えられている(検索結果の要約による。原文は未確認)(ICG)。

ガザ/イスラエル・パレスチナ

今週、停戦の第2段階を更新する新しい専門機関の報告は確認できなかった。ICGが8月24日付で公表した30ページの報告書は、停戦が戦争終結への持続可能な道筋になっておらず、封鎖の固定化か戦闘の大規模な再開の前段階になる恐れがあると警告している。ACLEDのモニターは、イスラエルの選挙を前に、入植者による暴力が記録的な水準になっていると論じている(見出しの確認のみ)(ACLED)。

3. 緊張が高まっている地域

湾岸地域(ホルムズ海峡とサウジ・イエメン国境)である。海峡の攻撃とサウジの空港攻撃が同じ週に重なっており、供給路の途絶が広域に及ぶ懸念が専門機関から出ている(チャタムハウス)。

4. 和平・外交の動き

米国の大統領令によるロシア制裁の免除は、ISWが指摘するとおり、和平の圧力を弱める方向の動きと評価されている。ガザの停戦第2段階、ウクライナの和平交渉のいずれも、今週は具体的な進展を確認できなかった。