前回からの変化
変わったこと(変化・新規)
- 前回予定されていたイラン・GCC・イラクのオマーン会談は開催されず、土曜夜に延期されたことが新たに判明した。サウジアラビアがイラン・オマーン間の合意案に修正を求め、「新たな現状(ステータスクオ)を固定しかねない」との懸念から延期を要請したと報じられている。新たな開催日程は未定(Al Jazeera)。
- サウジアラビアが紅海向け輸出の要である東西パイプライン(能力日量最大700万バレル規模)を、イラク領内から発射されたドローン攻撃を受けて閉鎖したことが新たに判明した。トランプ大統領はテヘランが攻撃を主導した可能性を示唆している。さらに月曜にはイエメンのフーシ派がサウジ南部ハミス・ムシャイトの空軍基地をミサイル・ドローンで攻撃するなど、地域の緊張が一段と拡大した(NBCニュース)。
- これを受け原油が急伸し、ブレントは一時1バレル109ドル台、WTIも104〜105ドル台まで上昇し、いずれも4カ月(16週間)ぶりの高値をつけた(新規、CNBC、Business Recorder)。米ディーゼル全国平均価格は1ガロン6.23ドルと過去最高値を更新し、年初来でおよそ75%上昇したことも新たに判明した。米10年債利回りは2023年以来初めて一時5%を上回った(新規、NBCニュース)。
- FOMC(9/15-16)の利上げ確率が市場予想でおよそ87〜9割まで上昇したことが新たに判明した。原油高由来のインフレ懸念の高まりが背景で、ゴールドマン・サックスやHSBCも0.25%の利上げを予想している。金は9/14に4,285ドル前後まで下落(前営業日比およそ-1.5%)、銀も63.22ドルまで下落(同-2.14%)した(新規、FXリーダーズ)。
- 銅の関税観測停滞について、ロイター報道の詳細が新たに判明した。関税がメーカーの製造コストを押し上げるとの懸念から、精製銅への関税拡大案が棚上げされたと報じられている。LME3か月物銅は9/11時点で1トン14,233ドル、週間ではおよそ-1.2%と6月以来10週ぶりの週間下落となった(精緻化、Rio Times)。
昨日と同じこと(継続)
- 小麦は9/14時点で1ブッシェル7.22ドル前後と、前回報告の7.20ドル割れの水準からほぼ横ばいで推移し、8月28日の3年半ぶり高値7.67ドルからの調整局面が続いている(トレーディングエコノミクス)。
- 天然ガスは2.88ドル/MMBtu(前日比+1.78%)と、前回報告の2.83ドル近辺から大きな変化はない。
- 銅のAIデータセンター需要という構造的な需給逼迫の見方、新規鉱山開発のリードタイムの長さを根拠にした強気派の主張は変わっていない。
要因の連続性
- 継続要因: FOMC(9/15-16)を控えた利上げ観測とドル高、銅のAIデータセンター需要・構造的な供給不足、ロシア・ウクライナの黒海攻撃による穀物供給不安。
- 新規要因: (1) サウジの東西パイプライン攻撃とフーシ派によるサウジ空軍基地攻撃で地政学リスクが再燃、(2) 米10年債利回りの5%超え・ディーゼル最高値更新による物価上振れ懸念の顕在化、(3) FRB利上げ確率がおよそ87〜9割まで具体的に上昇し金・銀の重しとして明確化。
- 解消した要因: 前回材料だった「イラン・GCC・イラク会談による緊張緩和への期待」は会談延期により後退した(ただし地政学リスク自体は縮小ではなくむしろ拡大している点に注意)。
1. 価格サマリー(2026年9月14日(月)時点)
| 商品 | 価格(目安) | 変化 | 限月・指標 |
|---|---|---|---|
| 金 | 4,285 USD/oz前後 | 前日比およそ-1.5% | スポット目安 |
| 銀 | 63.22 USD/oz | 前日比-2.14% | 直近限月 |
| WTI原油 | 101〜105ドル(日中高安) | 前日比+1〜4%台(振れ幅大) | NYMEX期近 |
| ブレント原油 | 106〜109ドル(日中高安) | 前日比+3〜4%台 | ICE期近 |
| 天然ガス | 2.88 USD/MMBtu | 前日比+1.78% | Henry Hub期近 |
| 銅(LME) | 14,233 USD/トン(9/11時点) | 週間およそ-1.2%、10週ぶりの週間下落 | LME3か月物 |
| 小麦 | 7.22ドル/ブッシェル前後 | 前日比-0.45% | CBOT期近 |
原油は地政学リスクの急変を受けて日中の値動きが大きく、報道時点によって水準の記載に幅がある(CNBC、Business Recorder)。
2. 商品別動向
金・銀
金は9/14時点でおよそ4,285ドルまで下落し、前営業日(9/11)比でおよそ1.5%安となった。銀も63.22ドルまで下落し、同2.14%安となった。原油高を背景にしたインフレ懸念の高まりでFOMC(9/15-16)の利上げ確率がおよそ87〜9割まで上昇したことが直接の下落要因で、ゴールドマン・サックスやHSBCも0.25%の利上げを予想している(FXリーダーズ)。中東の地政学リスクは本来なら安全資産としての金買いを誘発するが、同じ地政学リスクが原油高・インフレ観測・利上げ観測を通じてかえって金の重しになるという「安全資産のパラドックス」が指摘されている。
原油
サウジアラビアが紅海向け輸出の要である東西パイプラインをイラク領内からのドローン攻撃を受けて閉鎖したことを受け、原油は急伸した。ブレントは一時1バレル109ドル台、WTIも104〜105ドル台まで上昇し、いずれも4カ月(16週間)ぶりの高値をつけた。イラン・GCC・イラクによるホルムズ海峡を巡る会談も延期となり、地政学リスクプレミアムを一段と押し上げた(CNBC、Business Recorder)。OPEC+は8月の会合で9月分の増産をもって計画していた減産の巻き戻しを完了しており、年末まで生産枠を据え置く方針を示していたが、中東情勢次第で見直す可能性もある。
天然ガス
天然ガスは2.88ドル/MMBtuまで上昇(前日比+1.78%)したが、金・原油ほど大きな材料は見当たらず、前回報告の水準からの緩やかな上昇にとどまっている。
農産物
CBOT小麦は9/14時点で1ブッシェル7.22ドル前後(前日比-0.45%)と、前回報告の7.20ドル割れの水準からほぼ横ばいで推移している。8月28日につけた3年半ぶり高値7.67ドルからの調整局面が続く一方、過去1カ月では7%高、前年同月比では37.52%高と、中期的な上昇トレンド自体は崩れていない(トレーディングエコノミクス)。ロシア・ウクライナの黒海輸出網の混乱という供給不安と、北半球の収穫期・南米(ブラジル・アルゼンチン)の潤沢な供給という緩和要因のせめぎ合いは前回から変わっていない。
3. 急変動の特集
特集は「原油」。サウジの東西パイプライン攻撃とホルムズ海峡会談の延期を受けた急伸。
何が起きたか: サウジアラビアは9/11、イラク領内から発射されたとみられるドローン攻撃を受け、紅海向け輸出の要である東西パイプライン(能力日量最大700万バレル規模、ホルムズ海峡を経由しない代替輸出路)を予防的に閉鎖した。さらに9/14には、イエメンのフーシ派がサウジ南部ハミス・ムシャイトの空軍基地をミサイル・ドローンで攻撃した。同じ9/14には、イラン・湾岸協力会議(GCC)・イラクによるホルムズ海峡の航行管理を巡る会談も延期となった。これらを受け、ブレントは一時1バレル109ドル台、WTIも104〜105ドル台まで急伸し、いずれも4カ月ぶりの高値をつけた(NBCニュース、Business Recorder)。
なぜ動いたか: パイプラインはホルムズ海峡を経由しない代替輸出路として機能してきたため、その閉鎖は湾岸産油国の実質的な輸出余力を直接的に削る。加えてホルムズ海峡の会談延期により、海峡経由の航行不安も解消の目処が立たなくなった。トランプ大統領はテヘランが一連の攻撃を主導した可能性を示唆しており、地政学リスクプレミアムが供給不安と一体化して価格に織り込まれた。
生活・産業への波及: 米ディーゼル全国平均価格は1ガロン6.23ドルと過去最高値を更新し、年初来でおよそ75%上昇した。物流・農業・製造業のコスト増を通じて幅広い物価への波及が警戒される。米10年債利回りは2023年以来初めて一時5%を上回り、30年債も5.37%台まで上昇するなど、原油高由来のインフレ懸念は金利市場にも波及している(NBCニュース)。
4. 強気派 vs 弱気派
金・銀
- 強気: Kitcoの調査ではウォール街の専門家14人中9人(64%)が来週の金価格上昇を予想し、根拠として4,300ドル近辺の技術的な支持線の堅さや、FOMC通過後の「出尽くし感」による反発余地を挙げている。個人投資家(Main Street)でも218票中115票(53%)が強気とわずかに上回った(Kitco News)。
- 弱気: ゴールドマン・サックスやHSBCが予想するFOMCの0.25%利上げ、米長期金利の上昇、ドル高が金・銀の上値を抑えるとの見方(FXリーダーズ)。
原油
- 強気: ホルムズ海峡を巡る会談が延期され、フーシ派によるサウジ空軍基地攻撃も重なったことで、地政学リスクプレミアムはむしろ拡大しているとの見方(NBCニュース)。
- 弱気: OPEC+は8月の会合で9月分の増産をもって計画していた減産の巻き戻しを完了しており、年末まで生産枠を据え置く方針(供給余力は確保済み)。パイプラインの復旧が進めば供給不安は後退するとの見方もある。
銅
- 強気: JPモルガンやモルガン・スタンレー、シティグループはAIデータセンター向け需要の拡大と新規鉱山開発のリードタイムの長さを根拠に、構造的な供給不足が続くと指摘し、一部は1トン15,000ドル超への上昇を見込む(既報・継続)。
- 弱気: ゴールドマン・サックスは世界的な製造業需要が鈍化すれば小幅な供給過剰(およそ16万トン)もあり得るとし、高値による銅からアルミへの代替(需要破壊)にも注意を促している。関税拡大案が製造コスト懸念から棚上げされたことも、関税プレミアムの剥落要因として弱気材料に働いている(Rio Times)。
小麦
- 強気: ロシア・ウクライナ間の黒海輸出網混乱による供給不安が続いているとの見方(既報)。
- 弱気: 北半球の収穫期に伴う供給増、ブラジル・アルゼンチンの潤沢な生産・輸出見通しが需給を緩和させているとの見方(既報)。
5. 地政学・物価関連ニュース
イラン・湾岸協力会議(GCC)・イラクによるホルムズ海峡の航行管理を巡る会談は、当初9/14にオマーン・サラーラで開催予定だったが、土曜夜に延期された。サウジアラビアがイラン・オマーン間の合意案に修正を求め、「新たな現状を固定しかねない」との懸念から延期を要請したと報じられている(Al Jazeera)。これと並行して、サウジアラビアは紅海向け輸出の要である東西パイプラインをドローン攻撃を受けて閉鎖し、イエメンのフーシ派もサウジ南部の空軍基地を攻撃するなど、地域の緊張は会談延期にもかかわらず一段と拡大している。
物価面では、原油高が米ディーゼル価格を過去最高値(1ガロン6.23ドル、年初来+75%)に押し上げ、物流・農業機械の燃料コストを通じて食品価格を含む幅広い物価に波及する経路が警戒される。米10年債利回りは一時5%を上回り、FOMC(9/15-16)の利上げ確率もおよそ87〜9割まで上昇するなど、原油高由来のインフレ懸念が金融市場全般に波及している(NBCニュース)。一方で、銅の関税拡大案の棚上げは住宅・電子機器コストの上振れ懸念をやや和らげる材料といえる。
6. テクニカル分析
金: 4,280〜4,300ドル帯が当面の支持、4,345〜4,375ドル帯が上値抵抗とされる。この抵抗帯を上回れなければ4,200〜4,220ドル方向への調整が視野に入るとの見方がある一方、FOMC通過後の「出尽くし感」から反発すれば4,600ドル台への上昇余地を指摘する分析もある(既報の分析を踏襲)。
銀: 前回示した弱気パターン(ヘッドアンドショルダーズのネックライン割れ)、62.55ドルを下回ると61.01ドル・60.00ドルが視野に入るとの分析は変わらず、9/14の63.22ドルへの下落はこのシナリオと整合的な値動きといえる。
WTI原油: 心理的節目の100ドルを上回って推移しており、次の節目は105ドル。ここを上抜ければ3月に付けた113.28ドル近辺が視野に入るとの見方がある一方、90〜92ドル帯が下値の支持として意識されている(既報の分析を踏襲)。本日以降もパイプラインの復旧状況やホルムズ会談の再設定次第で振れやすい地合いが続くとみられる。
天然ガス: 目立った材料が乏しく、明確なトレンドは出ていない。気象要因による短期的な振れが中心とみられる。
銅: 史上最高値14,875ドル(9/10)からの反落が続いており、この高値圏での「ダブルトップ」形成を指摘する分析もあり、上値の重さが意識されている。10週続いた上昇トレンドの終了が視野に入っており、関税方針の再決定時期が次の材料になる。
小麦: 3年半ぶり高値7.67ドル(8月28日)からの調整が続いているものの、7.20ドル近辺では下げ止まりの動きもみられる。黒海情勢の悪化と北半球・南米の潤沢な供給のどちらが優勢になるかが、引き続き値動きの手掛かりとなりそうだ。

