価格サマリー(表)
| 商品 |
価格(直近終値・8月7日時点) |
騰落率(前日比) |
限月・指標 |
| 金(スポット) |
1オンス およそ4,341ドル30セント |
プラス2.41パーセント |
ロンドン・スポット(Kitco) |
| 銀(スポット) |
1オンス およそ63ドル35セント〜64ドル10セント |
プラス3.19〜4.16パーセント |
ロンドン・スポット(Kitco/USAGOLD) |
| WTI原油 |
1バレル 78ドル18セント |
プラス1.15パーセント |
NYMEX 期近限月(CL) |
| ブレント原油 |
1バレル 83ドル55セント |
プラス1.29パーセント |
ICE 期近限月 |
| 天然ガス(ヘンリーハブ) |
100万BTU あたり 2ドル66セント |
プラス0.83パーセント |
NYMEX 期近限月(NG) |
| トウモロコシ |
1ブッシェル 439セント(9月限) |
ー |
CBOT 9月限 |
| 大豆 |
1ブッシェル およそ11ドル57セント(1,157.25セント) |
ー |
CBOT 8月限(8月6日時点) |
| 小麦(シカゴ) |
1ブッシェル 631セント(9月限) |
ー |
CBOT 9月限 |
| カカオ |
1トン およそ5,782〜5,800ドル |
ー(1カ月ぶり高値圏) |
ICE 期近限月 |
| コーヒー(アラビカ) |
1ポンド 3ドル27セント前後 |
プラス1.2パーセント |
ICE 期近限月 |
| 砂糖(粗糖) |
1ポンド 14ドル66セント〜15ドル16セント(セント表記) |
プラス0.8〜1.6パーセント |
ICE 期近限月 |
※ 8月8日・9日は週末で主要商品市場が休場のため、上表の「直近終値」はいずれも8月7日(金)時点のデータ。米国市場では8月10日(月)の取引開始前(日本時間早朝)にあたるため、本レポートは週末に出た地政学・需給関連ニュースを中心に更新している。
商品別動向(金・銀 / 原油 / 天然ガス / 農産物)
金・銀
金は8月7日、Kitco基準で1オンス4,341ドル30セント(前日比プラス2.41パーセント、102ドル高)まで上昇し、直近2カ月で最高値圏に達した(Kitco Gold and Silver PM Report)。銀もKitco基準で63ドル35セント(プラス3.19パーセント)、USAGOLD基準では64ドル10セント(プラス4.16パーセント)まで急伸し、6週間ぶりの高値をつけた(USAGOLD)。
背景は7月の米雇用統計の大幅な下振れ(非農業部門雇用者数23,000人減、失業率は4.1パーセント近辺で高止まり)で、市場は9月のFRB追加利上げ観測を大きく後退させた。ドル指数(DXY)は週を通じて99台後半で推移し、7週間ぶりの安値圏にとどまっている(TradingEconomics DXY)。実質金利低下とドル安が、利息を生まない資産である金・銀への資金流入を支えている。
ゴールドマン・サックスは2026年末の金価格見通しを1オンス5,400ドルから4,900ドルへ下方修正しつつも強気姿勢は維持し、各国中央銀行の外貨準備多様化を根拠に挙げている。UBSも同様に見通しをやや引き下げつつ、今後12カ月で1オンス5,200ドルへの到達を予想している(goldsilver.com)。
原油(WTI・ブレント)
WTIは1バレル78ドル18セント(プラス1.15パーセント)、ブレントは83ドル55セント(プラス1.29パーセント)で8月7日の取引を終えた(TradingEconomics WTI、TradingEconomics ブレント)。
最大の材料は需給両面。供給サイドではOPEC+が8月2日、サウジアラビア・ロシア・イラク・クウェート・カザフスタン・アルジェリア・オマーンなど参加国により、9月の生産枠を日量18万8000バレル追加増産することで合意したと正式発表した。これにより2023年から続けてきた自主減産(合計約165万バレル)の巻き戻しが完了する形となった(World Oil、Forbes)。
ホルムズ海峡情勢は依然として価格の下支え要因。イランは8月8日時点でオマーンとの交渉が「最終段階」にあるとしつつ、米国・イスラエル関連船舶の扱いなどで米国側からの譲歩を条件に掲げており、完全な正常化には至っていない(CNN、Al Jazeera)。
一方でモルガン・スタンレーは、供給増・需要減速・地政学プレミアムの縮小という3つの弱気材料が重なるとして、2026年第3四半期のブレント予想レンジを従来の1バレル72〜78ドルから65〜70ドルへ下方修正した(Kavout Market Lens)。
天然ガス
ヘンリーハブは8月7日時点で100万BTUあたり2ドル66セント(前日比プラス0.83パーセント)。7月は月間でおよそ15パーセント下落しており、記録的な生産量とLNG(液化天然ガス)向けフィードガス需要の伸び悩みが上値を抑えている(AGA)。
米エネルギー情報局(EIA)は2026年の年間平均価格見通しを前年比2パーセント減とし、供給の伸びが需要の伸びをわずかに上回るとの見方を示している(EIA)。
農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)
CBOTのトウモロコシは9月限が1ブッシェル439セント、シカゴ小麦は同631セント、大豆は8月限が1,157セント25分の1(11ドル57セント)前後で推移している(USDA/AMS 8月6日データ)。
USDAの作柄報告(8月2日時点)では、トウモロコシの「良〜非常に良い」評価が61パーセント、大豆が63パーセントとなり、いずれも前週(63パーセント)からわずかに悪化した。コーンベルトは局地的な降雨があった一方、南部平原地帯とミシシッピデルタでは乾燥が続いている(DTN Progressive Farmer)。
黒海方面では、ロシアによるオデーサ港周辺への攻撃を受け、ウクライナの2026-27年度穀物輸出見通しが当初予想の6,440万トンから2,960万トンへ、実に54パーセントの下方修正となった。小麦輸出も830万トンへ半減以上の下方修正となっている(Bloomberg)。8月8日にもオデーサ近郊で船舶への攻撃があったと報じられており、供給不安はなお続いている(Pravda Ukraine)。
急変動の特集
特集なし。カカオ・コーヒー・砂糖といったソフトコモディティは西アフリカの減産懸念(カカオ)やブラジルの収穫遅延(コーヒー)を背景に約1カ月ぶりの高値圏で底堅く推移しているが、直近1営業日・数週間で新たに突出した値動き(目安の±3パーセント超、または数十パーセント規模の急変動)を示した銘柄は今回の調査では確認できなかった。カカオは1トン5,782〜5,800ドル前後で、前回report時点(8月7日時点で6,000ドル超と報じられた水準)からはやや落ち着いている(Business Recorder)。
強気派 vs 弱気派
金:強気
ゴールドマン・サックスは2026年末の金価格見通しを1オンス5,400ドルから4,900ドルへ引き下げたものの強気姿勢は維持しており、共同コモディティ調査責任者のサマンサ・ダート氏は各国中央銀行による外貨準備の多様化(ソブリン需要)を主な根拠に挙げている。UBSも見通しをやや引き下げつつ、今後12カ月で1オンス5,200ドルへの到達を予想し、年間750〜1,000トン規模の中央銀行買いが続くとの見方を維持している(goldsilver.com)。
銀:弱気
CPMグループは8月4日付のKitco寄稿で、銀の50日移動平均線が下向きトレンドを維持していることを理由に「8月中に一時60ドルを割り込み56ドルを下回る場面があっても驚かない」と指摘している(この見方は8月7日の雇用統計ショック前の分析である点に留意)(Kitco)。
銀:強気
カナディアン・マイニング・レポートは、5日移動平均線が20日移動平均線を上抜けたことをモメンタム好転のシグナルとし、主要レジスタンス突破後は上昇が加速し得ると指摘している(Canadian Mining Report)。
原油:弱気
モルガン・スタンレーは、OPEC+の増産・中国を含む世界需要の伸び悩み・地政学プレミアムの縮小という3つの弱気材料が重なっているとし、「価格にとって弱気相場となる完璧な組み合わせ」と表現。2026年第3四半期のブレント予想を1バレル72〜78ドルから65〜70ドルへ下方修正した(Kavout Market Lens)。
原油:強気
一方で、ホルムズ海峡の完全な正常化には至っていない点を強気材料とする見方もある。イランが米国・イスラエル関連船舶の扱いなどで譲歩を求め続けている限り、供給リスクプレミアムが完全には剥落しないとの指摘がある(CNN)。
地政学・物価関連ニュース
- ホルムズ海峡(中東情勢): イランは8月8日、オマーンとの交渉が「最終段階」にあるとしつつ、海峡が「戦争前の状態」には戻らないと強調し、米国側に譲歩を求めている。合意案では、商船がイラン管理下のルートから湾内に入り、オマーン管理下のルートから出るという新たな航行方式が検討されている。米国のバンス副大統領は「ホルムズ海峡から可能な限り多くの石油・ガスを流通させたい」と述べ、早期の正常化を促している(CNN、Al Jazeera)。合意が実現すれば供給リスクプレミアムの縮小を通じて原油価格の下押し要因となる可能性がある。
- OPEC+の増産完了: 8月2日、OPEC+が9月の生産枠を日量18万8000バレル追加増産することで正式合意し、2023年以来の自主減産の巻き戻しが完了した。次回会合は9月6日を予定しており、当面は現行方針が維持される見通し(World Oil)。
- 黒海・穀物輸出: ロシアによるウクライナ・オデーサ港周辺への攻撃を受け、ウクライナの2026-27年度穀物輸出見通しが54パーセント下方修正された。8月8日にもオデーサ近郊の船舶が攻撃を受けたと報じられており、供給不安は継続している。パン・飼料経由での食品価格上昇圧力につながる可能性がある(Bloomberg、Pravda Ukraine)。
- 米国の作柄と乾燥傾向: USDA作柄報告(8月2日時点)でトウモロコシ・大豆の「良〜非常に良い」評価がいずれもわずかに悪化。南部平原地帯・ミシシッピデルタでの乾燥継続が背景で、秋以降の収量見通しに影響し得る(DTN Progressive Farmer)。
- 米雇用統計とFRB政策: 7月の米雇用統計の大幅悪化がFRBの利上げ観測後退・ドル安を招き、金銀を中心に商品市場全般のドル建て価格を押し上げる方向に作用した。ドル指数は7週間ぶりの安値圏で推移している(TradingEconomics DXY)。
テクニカル分析
金
RSI(相対力指数)は69程度まで上昇し、「買われすぎ」とされる70の水準に接近している。20日・50日の指数移動平均線(それぞれ4,140ドル前後・4,147ドル前後)は現在値を大きく下回ったままで、直近の上昇の勢いの強さを裏付けている一方、過熱感への警戒も出ている(Investing.com Gold Technical)。
銀
50日移動平均線は依然として下向きだが、直近では5日移動平均線が20日移動平均線を上抜けるなど短期的な反転の兆しが出ている。主要レジスタンスは59〜60ドル台、サポートは56〜57ドル台とされる。銀は金に比べて値動きが大きい(高ベータ)傾向があり、方向感が出ればその分値幅も大きくなりやすい点に留意が必要とされる(Kitco、Canadian Mining Report)。
原油(WTI)
サポート帯は77ドル前後、心理的節目の75ドルが次の主要サポートとされ、これを割り込むと70ドル方向への下落が加速するとの見方がある。レジスタンスは80ドル前後で、50日・200日移動平均線はそれぞれ82ドル・78ドル付近に位置する(Intellectia.ai)。
天然ガス
テクニカル上のチャネル下限は100万BTUあたり3ドル付近にあり、この水準を明確に下回ると2ドル方向への下落リスクが意識されるが、通常はその可能性は低いとの見方が多い。チャネル中心は4ドル付近で、2026-27年冬に向けた最も可能性の高い到達水準とされる(Naga)。
農産物(トウモロコシ・小麦)
トウモロコシ(CBOT9月限)はサポートが1ブッシェル439セント(50日移動平均線)、レジスタンスが453セント台(10日移動平均線)。カンザスシティ小麦(9月限)はサポートが673セント台(100日移動平均線)、レジスタンスが716セント程度(10日移動平均線)とされ、いずれも方向感に乏しいもみ合いが続いている(AgMarket.Net)。
投機筋のポジション(CFTC)・ドル指数との関係
CFTC(米商品先物取引委員会)の建玉明細によると、7月28日時点でマネー・マネージャー(投機筋)の金の買い越しは119,795枚、銀の買い越しは9,182枚で、値動きに比べて投機筋の買い増しペースは限定的にとどまっている(StoneX COTレポート分析)。ドル指数(DXY)は99台後半で7週間ぶりの安値圏にあり、ドル安がドル建て資産である金・銀・原油など商品全般の相対的な割安感を強めている(TradingEconomics DXY)。
参考リンク