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コモディティ

コモディティ 2026-08-09

3行まとめ

  • 直近営業日(8月7日)は7月の米雇用統計の大幅悪化(非農業部門雇用者数23,000人減)を受けてドルが下落し、金は1オンス4,340ドル台(前日比プラス2.39パーセント)、銀は63ドル台(同プラス3.19パーセント)まで急伸した。
  • 原油はホルムズ海峡の航行再開に向けたイランとオマーンの合意進展が供給リスク後退材料となる一方、OPEC+の増産・米シェール高水準・世界的な供給過剰見通しという弱気材料も根強く、WTIは78ドル台、ブレントは83ドル台で綱引き相場が続く。
  • 特集はカカオ(西アフリカの減産懸念でトン当たり6,000ドル超)。穀物はウクライナ産穀物の輸出減少観測とロシア産穀物のケルチ海峡経由輸出停止が小麦相場の下支え要因として注目される。

価格サマリー(表)

商品 価格(直近終値・8月7日時点) 騰落率(前日比) 限月・指標
金(スポット) 1オンス およそ4,340ドル60セント プラス2.39パーセント ロンドン・スポット
金(先物) 12月限 4,298ドル30セント始値、日中4,411ドル70セントまで上昇 COMEX 12月限(GC)
銀(スポット) 1オンス およそ63ドル35セント〜64ドル10セント プラス3.19〜4.16パーセント ロンドン・スポット
銀(先物) 9月限 61ドル85セント始値、日中65ドル05セントまで上昇 プラス0.4パーセント(始値比) COMEX 9月限(SI)
WTI原油 1バレル 78ドル18セント プラス1.15パーセント NYMEX 9月限(CL)
ブレント原油 1バレル 83ドル55セント プラス1.29パーセント ICE 期近限月
天然ガス(ヘンリーハブ) 100万BTU あたり 2ドル66セント プラス0.83パーセント NYMEX 期近限月(NG)
トウモロコシ 1ブッシェル 439セント(9月限) CBOT 9月限
大豆 1ブッシェル およそ11ドル59セント(1,159セント) プラス0.16パーセント CBOT 期近限月
小麦(シカゴ) 1ブッシェル 631セント(9月限) CBOT 9月限
カカオ 1トン 6,000ドル超 ー(3週間ぶり高値) ICE 期近限月
コーヒー(アラビカ) 1ポンド 3ドル27セント前後 プラス1.2パーセント ICE 期近限月
砂糖(粗糖) 1ポンド 15セント台 プラス2パーセント前後 ICE 期近限月

※ 取得時点はいずれも2026年8月7日(米国市場、日本時間では8月7日夜〜8日早朝に相当)。日中値動きにより情報源ごとに数値が異なる場合があるため幅を併記した。

商品別動向(金・銀 / 原油 / 天然ガス / 農産物)

金・銀

7月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が23,000人減少し、市場予想(プラス8万人前後)を大幅に下回った。過去2カ月分の統計も下方修正され、労働市場の弱さが鮮明になったことで、9月のFRB(連邦準備制度理事会)会合での追加利上げ観測が大きく後退した(Kitco)。 FOMC(連邦公開市場委員会)は7月29日の会合で政策金利を3.50〜3.75パーセントで据え置き(賛成9反対3)、ウォーシュ議長は「インフレ目標を最優先する」と発言してタカ派姿勢を強調していたが、弱い雇用統計はこれを覆す形となった。米10年国債利回りは4.67パーセントから4.64パーセント(日中安値4.60パーセント)へ低下し、ドル指数(DXY)は0.5パーセント下落して99.4付近、2カ月ぶり安値圏まで沈んだ(KitcoTradingEconomics)。 実質金利低下とドル安が、利息を生まない資産である金・銀への資金流入を後押しした。加えてホルムズ海峡を巡るイラン・オマーンの航行再開交渉進展で地政学リスクがやや後退しつつも、金は「悪いニュースが良いニュース」的にFRBの緩和期待を材料に買われる展開となった。 BCAリサーチのチーフ・コモディティ・ストラテジスト、ロウカヤ・イブラヒム氏は「実質金利上昇という金相場への最大の逆風はすでに過ぎ去った可能性が高い」とし、利下げがなくても金の上昇再燃はあり得ると指摘した(Kitco)。 銀は工業需要と金銀比価の縮小(金に対する出遅れ修正)を材料に金以上の上昇率となり、金銀比価は低下(銀の相対的な出遅れ修正)が進んだ。

原油(WTI・ブレント)

WTIは前日比プラス1.15パーセントの78ドル18セント、ブレントは同プラス1.29パーセントの83ドル55セントで取引された(TradingEconomicsTradingEconomics)。 最大の材料はホルムズ海峡情勢。イランとオマーンは同海峡での商船航行ルートに関する合意に近づいており、8月5日にはイラン側が「オマーンとの合意に達した」と表明した。合意案には米国・イスラエル関連船舶の締め出しや、敵対国船舶への補償要求といった条件も含まれるとされ、完全な緊張緩和には至っていない(BloombergBloomberg)。 一方で構造的な弱気材料も根強い。OPEC+は自主減産の縮小(増産)を進めており、米シェール生産は日量1,360万バレル前後と過去最高水準にある。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーはいずれも2027年に日量480万バレル規模の供給過剰に至ると警告しており、需給ファンダメンタルズは弱気に傾いている(Benzinga)。 足元の78ドル前後の水準には、ホルムズ海峡の機能低下と再エスカレーションの可能性を織り込んだ「プレミアム」が上乗せされているとの見方もある。

天然ガス

ヘンリーハブは前日比プラス0.83パーセントの100万BTUあたり2ドル66セント。7月は月間で15パーセント近く下落(7月1日の3ドル22セントから7月31日の2ドル75セントへ)しており、8月に入っても記録的な生産量とLNG(液化天然ガス)向けフィードガス需要の伸び悩みが価格を圧迫している(AGA)。 中長期的には米LNG輸出能力の拡大(4月にゴールデンパスLNGが1系列目の初出荷を実施し、米国9基目の稼働ターミナルとなった)やAI(人工知能)関連のデータセンター向け電力需要増が構造的な強気材料とされるが、目先は温暖な天候と潤沢な在庫が上値を抑えている状態。

農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)

トウモロコシはCBOT9月限が1ブッシェル439セント、小麦(シカゴ)は同631セント、大豆は期近限月が1ブッシェル1,159セント(11ドル59セント)前後で推移。大豆は中国需要の回復期待と原油高を支えに5週間ぶり安値からの反発を試している(TradingEconomics)。 米国内では8月4日時点で国土の70.9パーセントが異常乾燥または干ばつ状態にあり、トウモロコシ作付面積の28パーセント、大豆の26パーセント、春小麦の58パーセントが干ばつ(D1〜D4)の影響下にある。春小麦の干ばつ面積は前月比39パーセント増と急拡大した。全米のトウモロコシ生育状況は「良〜非常に良い」が55パーセントで推移している(DTN Progressive Farmer)。 黒海方面では、ウクライナがロシアによるオデーサ港への攻撃を受けて2026-27年度の穀物輸出見通しを大幅下方修正(当初6,440万トンから2,960万トンへ、うち小麦は830万トンへ半減以上の下方修正)。一方ロシアも、アゾフ海での船舶へのドローン攻撃を受けてケルチ海峡経由の穀物船通航申請受付を7月11日に停止しており、双方の輸出に下押し圧力がかかっている(BloombergEuromaidan Press)。

急変動の特集

カカオ(該当あり) カカオ価格は1トン6,000ドルを超え、3週間ぶりの高値をつけた。ガーナのココア規制当局(COCOBOD)が、天候不順・病害・老朽化した農園・違法採掘・作物の自然な収量サイクルなどを理由に、2026/27年度の生産量が少なくとも16パーセント減少すると予測したことが材料となった(Barchart)。 西アフリカ(ガーナ・コートジボワール)は世界のカカオ供給の6割以上を担うとされ、供給不安が続けばチョコレートなど加工食品の原材料コスト上昇を通じて、消費者向け食品価格への波及が見込まれる。コーヒー(ブラジルの収穫遅延を背景に上昇)や砂糖(需給ひっ迫観測で年末にかけ現行水準から4パーセント程度の上乗せ予想)もあわせて底堅く推移しており、ソフトコモディティ(嗜好品系農産物)全般で供給不安主導の値動きが続いている(Business Recorder)。 なお銅については、UBSが2026年9月までに1トン14,000ドル到達を見込むなど強気予想が相次いでいるが、直近1日・数週間で急変動と呼べるほどの値動きは今回の調査では確認できなかったため、特集の対象外とした。

強気派 vs 弱気派

金:強気 BCAリサーチのチーフ・コモディティ・ストラテジスト、ロウカヤ・イブラヒム氏は、実質金利上昇という金相場への最大の逆風は「すでに過ぎ去った可能性が高い」とし、FRBの利下げがなくても金相場の上昇再燃はあり得ると主張している(Kitco)。JPモルガンは2026年第4四半期の金の平均価格見通しを1オンス6,000ドル近辺に置いており、年間を通じた強気シナリオを示している(出典元記事内での言及、Discovery Alert)。

金:弱気 アナリストのアビ・ギルバート氏は「2026年は金・銀の長期サイクルの終着点となり、複数年に及ぶ弱気相場の始まりになる可能性が高い」と指摘。50日移動平均線・20日移動平均線がともに下向きで、価格が長期トレンドラインを下回っていることを弱気の根拠として挙げている(Kitco)。

原油:強気 一部アナリストは、供給余力の大半がホルムズ海峡の封鎖リスクの「向こう側」に存在する点を強気材料として指摘する。海峡が機能不全に陥っている限り、統計上の余剰生産能力は「絵に描いた餅」となり、需給が逼迫しているのと同じ効果を市場価格に与えるとの見方である(LiteFinance系記事の分析)。バークレイズは2026年のブレント予想を1バレル85ドル前後に上方修正した。

原油:弱気 ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは、OPEC+の増産継続と中国需要の伸び悩みを背景に、世界の原油市場が急速に供給過剰へ向かっていると警告。ゴールドマンは強気シナリオでも2026年第4四半期のブレント予想を1バレル90ドルに設定する一方、世界景気減速とOPEC+減産の全面解除が重なる弱気シナリオでは、2026年末までにブレントが1バレル40ドルを割り込む可能性にも言及している(Benzinga)。JPモルガンも2026年通年のブレント平均を1バレル60ドル程度とする構造的弱気シナリオを併記している。

銅:強気 UBSは銅価格が2026年9月までに1トン14,000ドル、2027年6月までに15,500ドルに達すると予想。ゴールドマン・サックスとシティグループはいずれも長期目標として1トン15,000ドルを掲げる。チリの生産停滞やコンゴ民主共和国カモアカクラ鉱山の洪水被害など供給側の混乱が強気見通しの根拠とされる(Discovery AlertMining.com)。銅の弱気派の明確な主張は今回の調査では見つからなかった。

地政学・物価関連ニュース

  • ホルムズ海峡(中東情勢): イランとオマーンが商船航行ルートについて合意に近づいており、寄港・出港ルート、安全保障、共同調整センター設置などで大筋合意したと報じられている。ただしイラン側は米国・イスラエル関連船舶の締め出しや敵対国への補償要求を条件に含めるとされ、完全な正常化には不透明感が残る。合意が実現すれば供給リスクプレミアムの縮小を通じて原油価格の下押し要因となる可能性がある(Al JazeeraNPR)。
  • 黒海・穀物輸出: ロシアによるウクライナ・オデーサ港への攻撃で、ウクライナの2026-27年度穀物輸出見通しが大幅下方修正された。一方ロシアもアゾフ海でのドローン攻撃を受けケルチ海峡の通航申請受付を停止しており、双方の輸出減少が世界の小麦・穀物需給を引き締め、食品価格(パン・飼料経由の畜産物価格など)への波及が懸念される(Bloomberg)。
  • 米干ばつと穀物: 米国内の広範な乾燥・干ばつ(国土の70.9パーセント)が春小麦を中心に作柄悪化懸念を招いており、天候次第では秋以降の小麦価格を押し上げる可能性がある(DTN Progressive Farmer)。
  • 米雇用統計とFRB政策: 7月の米雇用統計の大幅悪化はFRBの利上げ観測後退・ドル安を招き、金銀だけでなく商品市場全般のドル建て価格を押し上げる方向に作用した。今後の追加の経済指標やFOMC会合での発言次第で、商品市場のボラティリティが高まる可能性がある(TradingEconomics)。
  • ガーナのカカオ減産: 西アフリカの天候不順・病害・違法採掘等を背景とした生産減少見通しが、チョコレート等加工食品のコスト上昇を通じて物価に波及する経路として注目される(Barchart)。

テクニカル分析

50日移動平均線(4,152ドル前後)を上回って推移しており、次の節目である100日移動平均線(4,390ドル前後)に接近している。RSI(相対力指数)は上昇基調で「買われすぎ」に近い水準まで達しており、モメンタムは強いが過熱感への警戒も出ている。上抜けた場合の次の目標は4,450ドル、その先は4,500ドル。下方のサポートは4,300ドル、さらに4,200〜4,180ドル帯とされる(Vantage Markets系分析)。

50日移動平均線(62ドル前後)を上抜けて63ドル台を回復し、直近抵抗の63ドル28セント突破を試す展開。RSIは70台の「買われすぎ」水準に達しており、上昇モメンタムは強いものの過熱感がある。上抜け後の次の壁は65ドル、その先は100日移動平均線の69ドル付近、200日移動平均線は71ドル台。下落した場合のサポートは60ドル、さらに8月3日安値の56ドル台とされる(FXStreet)。

原油(WTI) RSIは中立ラインをやや下回る水準からじわりと切り返しており、強気モメンタムは「弱め」ながら形成されつつある。サポート帯は73〜76ドル、その下は67〜68ドル、60ドル前後。レジスタンス帯は79〜81ドル。ホルムズ海峡交渉の進展状況とFRBの金利見通しの両方に敏感な地合いが続いている(One Up Trader分析)。

天然ガス 100日単純移動平均線が200日単純移動平均線を下回る「弱気配列」が続いており、方向性としては下向きの圧力が残る。直近ではディセンディングウェッジ(下降ウェッジ)を下放れ、2ドル66セント近辺で下げ止まりを試す動き。戻りの節目はフィボナッチ38.2パーセント水準の2ドル73セント、50パーセント水準の2ドル75セント。天候予報とLNG需要動向次第で、上下どちらにも大きく振れる可能性がある値固め局面(FXEmpire)。

農産物(トウモロコシ・小麦) トウモロコシ(CBOT9月限)はサポートが435・427・421セント、レジスタンスが472・478・484セント。小麦(シカゴ9月限)はサポートが629・626・620セント、レジスタンスが658・670・686セントとされ、いずれも方向感に乏しい「もみ合い」的な値動きが続いている(Price Group Grains Report)。

投機筋のポジション(CFTC)・ドル指数との関係 CFTC(米商品先物取引委員会)の建玉明細によると、7月28日時点でマネー・マネージャー(投機筋)の金の買い越しは119,795枚、銀の買い越しは9,182枚。金銀が史上高値圏で推移する一方、投機筋の買い越し積み増しは限定的で、値動きに投機筋のポジションが必ずしも追随していない乖離が見られる。原油についても、長期にわたる持ち高解消(ロング減少)局面から持ち高が静かに改善しつつある兆候が指摘されている(StoneX COTレポート分析)。 ドル指数(DXY)は雇用統計を受けて0.5パーセント下落し99.4付近、2カ月ぶり安値圏まで下落した。ドル安はドル建て資産である金・銀・原油など商品全般の相対的な割安感を強め、価格を押し上げる方向に作用している(TradingEconomics)。

参考リンク