前日からの変化
変わったこと(変化・新規)
- ロシア・ウクライナ双方の黒海穀物輸出能力の97%超が、相互のドローン・ミサイル攻撃で停止している実態が明らかになった。調査会社ルスアグロトランスはロシアの8月小麦輸出を180万トンと推計し、これは月間ベースで2010年以来の低水準(Arab News PK)。ウクライナ側も穀物輸出業界団体が2026/27年度の穀物輸出見通しを従来の6,440万トンから2,960万トンへ、54%下方修正した。前回レポートで報じた「ウクライナ小麦輸出53%減・830万トン」という小麦単体の下方修正よりさらに広範囲(穀物全体)かつ深刻な悪化が確認された。
- アイボリーコーストの2026/27年産(9月開始のメインクロップ)カカオについて、複数のポッドカウンター・大手輸出業者が正式に「前年の推定160万トンから135万〜145万トン、1割超(場合により2割規模)の減産」との見通しを示した。多雨による黒莢病(ブラックポッド)の蔓延が主因(CNBC Africa)。EUの森林破壊規制(年末施行)を控えた輸出前倒しの動きも、収穫開始の遅れと重なり港湾混雑リスクとして新たに指摘されている(Business Recorder)。
- ホルムズ海峡情勢について、イラン副外相カゼム・ガリババディ(Gharibabadi)氏が「海峡は依然閉鎖されており、通過する船舶はすべてイランとの調整の下で行われている」と改めて明言。英国海事当局(UKMTO)は脅威レベルを最高水準の「深刻(SEVERE)」に据え置き、開戦(2月28日)以降で船舶82隻が航路変更を強いられたとの集計が新たに示された(Fox News)。前回までの「発言レベルの緊張再燃」という評価に対し、実際の海峡封鎖が半年続く構造的な問題であることを示す新しい数値が加わった形。
- 米国東部の3分の2の地域で8月31日から9月4日にかけ平年を大きく上回る気温が続く見通しとなり、天然ガスの冷房需要を下支えする新たな材料が加わった(記録的な生産水準・日量111.4bcfとの綱引きは継続)。
- ブラジルでは向こう2週間も降雨が続く予報が示され、サトウキビの搾汁率(ショ糖含有率)低下を通じた砂糖の強気材料が新たに加わった。一方でエタノール価格の低迷を背景に、製糖業者が採算の良い砂糖生産へ製造比率をシフトする動きも指摘されており、方向感の異なる新規材料が併存する(Business Recorder)。
昨日と同じこと(継続)
- 金(4,454.40ドル)・銀(66.25ドル)は、ウォーシュFRB議長のタカ派講演を受けた8月28日(金)の急落水準のまま。月曜のアジア・ロンドン時間で取引そのものは再開しているが、本稿作成時点(日本時間8月31日早朝)で確定した新規清算値はまだ発表されておらず、直近確定値としては金曜終値が生きている。
- WTI(83.40ドル)・ブレント(88.29ドル)も金曜終値のまま。ペルシャ湾からの輸出回復(戦前比約15〜16百万バレル/日、戦前22〜24百万バレル/日から改善も依然下回る)という需給緩和方向の材料と、ホルムズ海峡の事実上の封鎖状態という綱引きの構図は継続している。
- 天然ガス(2.88ドル)・銅(6.5433ドル)・小麦(766.00セント)・トウモロコシ(511.00セント)・大豆(1,277.75セント)・カカオ(6,634.61ドル)・砂糖(17.55セント)もいずれも金曜終値のまま横ばい圏。
- IEAが示す2026年の世界石油需給見通し(供給超過が拡大方向)という原油の弱気材料は継続。
要因の連続性
- 継続要因: ウォーシュFRB議長のタカ派スタンス(インフレ抑制優先)は継続しており、9月FOMCの利上げ観測(講演前の3割台後半から5〜6割程度へ切り上がった水準)も維持されている/ 黒海供給網の混乱(ロシア・ウクライナ双方)は継続、むしろ深刻化/ アイボリーコースト・ガーナのカカオ減産観測(多雨・病害)は継続/ ペルシャ湾供給回復とホルムズ海峡事実上の封鎖という原油の綱引き構図は継続/ IEAの供給過剰見通しという原油の弱気材料は継続。
- 新規要因: ロシアの8月小麦輸出が2010年以来の低水準(180万トン)という具体的な悪化数値が確定した/ ウクライナの2026/27年度穀物輸出見通しが6,440万トンから2,960万トンへ54%下方修正された/ アイボリーコーストの2026/27年産カカオが正式に1〜2割規模の減産見通しとされ、EU森林破壊規制を控えた港湾混雑リスクも指摘された/ 米国東部の熱波(8/31〜9/4)が天然ガスの新たな下支え材料として加わった/ ブラジルの向こう2週間の降雨予報が砂糖の強気材料として加わった一方、エタノール安を背景にした製糖シフトという弱気材料も同時に加わった/ ホルムズ海峡について「82隻が航路変更」「UKMTOが脅威レベルSEVERE据え置き」という、封鎖の実態を示す具体的な数値が加わった。
- 解消した要因: なし。市場再開直後で、地政学面(中東・黒海とも)・供給面とも緊張緩和や供給正常化と呼べる新規材料は確認できなかった。
1. 価格サマリー(2026年8月28日(金) NY市場終値時点。月曜取引は再開も、本稿作成時点で確定した新規清算値は未発表のため直近確定値を掲載)
| 商品 | 価格 | 前日(8/30付レポート)比 |
|---|---|---|
| 金(COMEX、オンス建て) | 4,454.40 USD/oz | 変わらず(取引再開も新規清算値未確定) |
| 銀(COMEX、オンス建て) | 66.25 USD/oz | 変わらず(同上) |
| WTI原油(期近) | 83.40 USD/バレル | 変わらず(同上) |
| ブレント原油(期近) | 88.29 USD/バレル | 変わらず(同上) |
| 天然ガス(Henry Hub、期近) | 2.88 USD/MMBtu | 変わらず(同上) |
| 小麦(シカゴ期近) | 766.00 セント/ブッシェル | 変わらず(同上) |
| トウモロコシ(シカゴ期近) | 511.00 セント/ブッシェル | 変わらず(同上) |
| 大豆(シカゴ期近) | 1,277.75 セント/ブッシェル | 変わらず(同上) |
| カカオ(ICE期近) | 6,634.61 USD/トン | 変わらず(同上) |
| 砂糖(ICE期近) | 17.55 セント/ポンド | 変わらず(同上) |
参考: 銅は6.5433 USD/ポンド、ドル指数(DXY)はおよそ99.67でいずれも金曜終値と同水準(Trading Economics)。COMEX・NYMEX・ICEとも週末は休場で、日本時間8月31日早朝の本稿作成時点はアジア・ロンドン勢による取引再開直後にあたり、確定した新規清算値はまだ出ていない。
2. 商品別動向
金・銀
金(4,454.40ドル)・銀(66.25ドル)とも、8月28日(金)のウォーシュFRB議長講演を受けた急落水準から動いていない。週末を通じ、金の週間値幅は高値4,697.66ドル・安値4,445.45ドルと荒い展開だったことが専門家調査で確認されている(Kitco News)。9月FOMCの利上げ確率は、講演前の3割台後半からおよそ5〜6割まで切り上がっており、CME FedWatchベースでも同様の水準が示されている(CNBC)。月曜のアジア・ロンドン時間で取引そのものは再開しているが、本稿作成時点でこの織り込みがどう反映されたかを示す確定値はまだ出ていない。
原油
WTI(83.40ドル)・ブレント(88.29ドル)とも金曜終値のまま。ペルシャ湾からの輸出は戦前比15〜16百万バレル/日まで回復したとの推計がある一方、戦前の22〜24百万バレル/日には届いていない(Fox News)。IEAは2026年の世界石油需給について、供給超過幅がおよそ日量4百万バレル(世界需要の4%規模)まで拡大するとの見方を維持しており、非OPEC+勢(米国・ブラジル・カナダ・ガイアナ・アルゼンチン)の増産が需要の伸び(日量77万バレル)を大きく上回るとしている(Argus Media)。OPEC+は9月分として日量18.8万バレルの増産を決定し、2023年からの自主減産の巻き戻しを完了させたうえで、年内は据え置き方針との観測が伝えられている(前回までの報道)。
天然ガス
Henry Hub(2.88ドル)は金曜終値のまま。米国内生産は記録的な日量111.4bcf(8月平均)を維持しており、直近の週間在庫積み増しが予想・平年を下回るペースにとどまる構図は継続している(前回レポート既報)。加えて、米国東部の3分の2の地域で8月31日から9月4日にかけて平年を大きく上回る気温が予想され、冷房需要を通じた新たな下支え材料が加わった。
農産物
小麦(766.00セント)は高値圏で週末入りしたまま。ロシア産穀物輸出の混乱は一段と深刻化しており、調査会社ルスアグロトランスはロシアの8月小麦輸出を180万トンと推計、月間ベースで2010年以来の低水準になるとみている(Arab News PK)。ウクライナ側も穀物輸出業界団体が2026/27年度の穀物輸出見通しを6,440万トンから2,960万トンへ54%引き下げた。トウモロコシ(511.00セント)・大豆(1,277.75セント)も金曜終値のまま週明けを迎えている。
3. 急変動の特集
前回特集した金・銀・カカオ・小麦・砂糖の5品目について、フォローアップする。
- 金・銀: 価格自体は金曜終値(4,454.40ドル・66.25ドル)のまま動いていないが、専門家調査では強気派48%・弱気派29%・中立派24%と、なお強気優勢ながら弱気派も一定の勢力を保っている(Kitco News)。9月FOMCの利上げ確率上昇という重し材料が解消しない限り、週明けの取引再開後も上値の重さが意識されやすい。
- カカオ: 期近価格は6,634.61ドルで据え置きだが、アイボリーコーストの2026/27年産(9月開始)メインクロップについて、複数のポッドカウンター・輸出業者が前年の推定160万トンから135万〜145万トンへ、1割超(見方によっては2割規模)の減産になるとの見通しを正式に示した(CNBC Africa)。多雨による黒莢病の蔓延が主因で、チョコレート製品への値上げ圧力は前回よりさらに強まる方向にある。
- 小麦: 766.00セントのまま高値圏で週明けを迎えた。ロシア・ウクライナ双方の黒海穀物輸出能力の97%超が停止しているとの分析が示され、ロシアの8月小麦輸出は2010年以来の低水準、ウクライナの2026/27年度穀物輸出見通しも54%下方修正と、前回報告した混乱がさらに深刻化・広範囲化していることが確認された(Arab News PK)。
- 砂糖: 17.55セント(期近)のまま据え置き。ブラジルでは向こう2週間も降雨が続く予報が示され、サトウキビの搾汁率低下という強気材料が新たに加わった一方、エタノール価格低迷を受けて製糖業者が砂糖生産にシフトする動きも指摘されており、前回のインド発下押し材料に加えて方向感の異なる材料が併存する展開になっている(Business Recorder)。
4. 強気派 vs 弱気派
金・銀
- 強気: フォレックス・ドット・コムのシニア戦略アナリスト、ジェームズ・スタンリー氏は「長期的にはなお上向き」とし、財政赤字削減の見込みが乏しいことを根拠に挙げる。アセット・ストラテジーズ・インターナショナルのリッチ・チェッカン氏(COO)は、FRBが高水準の債務ゆえに大幅な利上げには踏み込みにくいと分析。エイドリアン・デイ・アセット・マネジメントのエイドリアン・デイ氏も、世界的な財政赤字と債務返済コストの問題が金を「唯一の答え」として機能させると指摘している(Kitco News)。
- 弱気: バノックバーン・グローバル・フォレックスのマーク・チャンドラー氏は、ウォーシュ講演後に下値目標を4,440ドル、さらに4,360ドルへ引き下げた。ストーンエックス・グループのシニアコモディティブローカー、ダニエル・パビロニス氏は、金利上昇・ドル高・12月利上げ観測が金属相場の重しになるとの見方を示している(同上)。
原油
- 強気: イラン副外相ガリババディ氏の「ホルムズ海峡は依然閉鎖」との発言や、英国海事当局(UKMTO)による脅威レベル「深刻(SEVERE)」の据え置きは、海峡封鎖が半年続く構造的リスクとして地政学プレミアムの根拠となっている(Fox News)。
- 弱気: IEAは2026年の世界石油需給について、供給超過幅がおよそ日量4百万バレルまで拡大するとの見通しを示しており、米国・ブラジル・カナダなど非OPEC+勢の増産が需要の伸びを大きく上回るとの分析が弱気派の根拠になっている(Argus Media)。
小麦
- 強気: ルスアグロトランスの分析では、ロシアの8月小麦輸出は月間ベースで2010年以来の低水準にとどまる見通しで、ウクライナの2026/27年度穀物輸出見通しも54%下方修正されるなど、黒海供給網の混乱の深刻さが供給不安の根拠になっている(Arab News PK)。
- 弱気: 供給不安が高まる一方、黒海以外の主要輸出国(米国・オーストラリアなど)への需要シフトが進めば、価格上昇圧力は輸出国間で分散されうるとの見方もできる(前回レポート参照)。今回、出典付きで弱気材料を新たに確認することはできなかった。
5. 地政学・物価関連ニュース
- ホルムズ海峡情勢は、発言レベルの緊張にとどまらない構造的な封鎖状態にあることが改めて確認された。イラン副外相ガリババディ氏は「海峡は依然閉鎖されており、通過する船舶はすべてイランとの調整の下で行われている」と明言し、革命防衛隊(IRGC)海軍も「海峡を完全に支配している」と主張。英国海事当局(UKMTO)は脅威レベルを最高水準の「深刻(SEVERE)」に据え置き、開戦(2月28日)以降で船舶82隻が航路変更を強いられたと集計している。ペルシャ湾岸に足止めされた船員は少なくとも6,000人に上るとの国連海事機関の集計もある(Fox News)。エネルギー価格を通じた物価波及リスクは、海峡封鎖が長期化するほど高まる構図にある。
- 黒海の穀物輸出能力の97%超が、ロシア・ウクライナ双方への攻撃の応酬で停止している。ロシアの8月小麦輸出は2010年以来の低水準(180万トン)にとどまる見通しで、ウクライナの穀物輸出業界団体も2026/27年度の輸出見通しを6,440万トンから2,960万トンへ54%引き下げた(Arab News PK)。パン・麺類など小麦を原料とする食品への価格転嫁圧力は、供給網の混乱が広範囲化するほど強まる方向にある。
- アイボリーコーストの2026/27年産カカオが1〜2割規模の減産見通しとなり、チョコレート製品の原料コストを通じた物価波及圧力が一段と強まる方向にある。EUの森林破壊規制(年末施行)を控えた輸出前倒しの動きが、収穫開始の遅れと重なり港湾混雑を招くリスクも新たに指摘されている(CNBC Africa、Business Recorder)。
- 天然ガスは、記録的な国内生産水準(日量111.4bcf)と、8月31日から9月4日にかけての米国東部の熱波という需要側の新材料が併存しており、電気代など消費者物価への影響は方向感が定まらない(前回レポート既報の在庫統計と合わせて評価する必要がある)。
- ブラジルの向こう2週間の降雨予報は、サトウキビの搾汁率低下を通じた砂糖の供給減少要因である一方、エタノール安を背景にした製糖シフトという逆方向の材料も同時に存在し、加工食品向け砂糖価格への波及は方向感が定まりにくい状況にある(Business Recorder)。
6. テクニカル分析
- 金: 8月28日の急落で、講演前に意識されていたサポート・レジスタンス水準を下抜けた状態が続く(前回レポート参照)。CFTCの建玉明細(8月25日時点、8月28日発表)では、投機筋(マネーマネージャー)のネットロングが144,747枚と、2025年9月以来の高水準に達しており、なお強気ポジションが積み上がっていたことが確認された(Investing.com)。この分だけ、講演後の急落で見切り売りが出やすい地合いだったことがうかがえる。目先は4,441ドル近辺が新たなサポート帯、4,761ドル近辺がレジスタンス帯として意識されているが、月曜取引再開後の確定値での検証はまだできていない。
- 銀: 前回の急落で67.00ドルの一次サポートを下抜けており、63ドル台のサポート試しが視野に入る展開が続く(前回レポート参照)。管理型建玉(マネーマネージャー)のネットロングは11,695枚(直近確認できる数値)。
- WTI原油: フィボナッチ・リトレースメントの38.2%(82.69ドル)・50%(83.62ドル)・61.8%(84.55ドル)が節目とされる構図が続く。100日移動平均線が200日線を上回る差が縮小しつつあり、ゴールデンクロスの持続力が試される局面が続く(前回レポート参照)。
- 天然ガス: 総じて「強い売り」シグナルとされる状況が続く一方、記録的な生産水準と在庫増加ペース鈍化・熱波という綱引きが続く。下値の節目は3ドル近辺(前回レポート参照)。
- 農産物(小麦・大豆): 小麦(9月限)はレジスタンス760・772・784セント、直近の766.00セントはレジスタンス帯に接近した水準を維持。大豆(9月限)もレジスタンス1,268・1,280・1,292セントに接近した水準を維持している(前回レポート参照)。これらの水準は売買を推奨するものではなく、あくまで目安として意識される節目である。

