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世界の紛争ウォッチ 2026-08-24

3行まとめ

  • ウクライナでは前線に大きな変化はないものの、ロシアが北朝鮮の無人機操縦要員を含む増派に依存を強めており、和平交渉は領土問題を巡り膠着している(ISW/Critical Threats、モスクワ・タイムズ)。
  • スーダンのコルドファン戦線でRSFとSAFの攻防が激化し、国連によれば今週だけで20万人超が新たに避難した(国連/OCHA報道、Critical Threats Africa File)。
  • コンゴ民主共和国とM23はドーハ・プロセスの実施ロードマップに合意し、今週数少ない外交上の前進となった一方、ガザではハマスの武装解除合意にもかかわらずイスラエルの実効支配地域が拡大している(米国務省、チャタムハウス)。

前日からの変化(前週レポートとの比較)

前回レポートなし(比較対象なし)。本カテゴリの初回レポートのため、継続要因・新規要因・解消した要因の仕分けは次回以降に行う。

今週の概観

過去1週間(8月17日〜23日)、主要紛争のいずれにも決定的な転換点はなかったが、既存の膠着状態がそれぞれ別の方向へじわりと動いた週だった。ウクライナでは戦線の膠着が続く一方、ロシア側は北朝鮮からの増派に依存を強め、和平交渉は領土問題で行き詰まったままである。ガザでは7月末のハマス武装解除合意にもかかわらず履行が進まず、イスラエルの実効支配地域はむしろ拡大している。スーダンのコルドファン戦線は「決戦場」化し、大規模な避難民が発生した。レバノン南部ではイスラエルの越境攻撃が続き、停戦の実効性に疑問符が付く。他方でコンゴ民主共和国とM23の間ではドーハ・プロセスのロードマップ合意という外交上の前進があった。

紛争別の週間動向

ウクライナ

前線では8月22日時点で、ウクライナ軍がコスチャンティニウカ中心部、オレクサンドリウカ北東、オリーヒウ西方で前進したとISWは報告しているが、奪還地域の範囲や実効支配の程度については情報源により見解が分かれるとしている(出典: ISW/Critical Threats - Russian Offensive Campaign Assessment, August 22, 2026)。

ウクライナ国防省情報総局によれば、ロシアはクルスク州に北朝鮮兵士およそ8500人(うち無人機操縦要員400人を含む)を派遣したと8月21日までに明らかにした。これら北朝鮮部隊はウクライナ領内での直接戦闘には投入されず、後方地域の防衛や無人機運用に充てられ、ロシア側人員を前線へ振り向ける狙いがあるとみられる(出典: CNN - North Korea boosts support for Russia to include drone operators, Ukraine says)。ISWは、ロシアがジェット推進型「ゲラン」無人機による夜間攻撃を、ウクライナ側が有効な対抗手段を確立するまで続ける可能性が高いと分析している(出典: ISW/Critical Threats - Russian Offensive Campaign Assessment, August 21, 2026)。なお、ISWは米国を拠点としウクライナ支援を掲げる政府に助言してきた経緯があり、ロシア側の意図に関する評価は一定の視点を伴う可能性がある点に留意が必要である。

和平交渉については、ジュネーブでの協議が進展のないまま終了し、ロシア側はドンバス全域の支配を要求する一方、ウクライナ側は領土譲歩を拒否する姿勢を崩していない。モスクワ・タイムズに寄稿した専門家は、交渉が非公開で進められていることが説明責任の欠如と双方の主張の食い違いを招いていると指摘し、米国による選択的な情報開示を提言している(出典: The Moscow Times - Tear Down the Wall of Silence Around Negotiations To End Russia-Ukraine War)。キーウ・インディペンデントによれば、米国とウクライナは、ウクライナの迎撃能力不足とロシアの長距離攻撃への脆弱性を踏まえ、限定的な「空の停戦」をロシア側に受け入れさせる新たな交渉枠組みを模索している(出典: Kyiv Independent - Ukraine, US align on new peace push as officials hope Russia accepts air truce)。

ガザ/イスラエル・パレスチナ

事実関係として、8月18日にガザ市でのイスラエルによる攻撃で少なくとも6人が死亡、8月19日には2件の攻撃で少なくとも10人が死亡したと地元病院とパレスチナ赤新月社が伝えている(集計期間・出典は各報道時点)。ワシントン・ポストは、クシュナー氏のイスラエル訪問直後にもかかわらず攻撃が続いたことがガザ停戦の履行に疑問を投げかけていると報じた(出典: The Washington Post - Israel's deadly Gaza strikes cast doubt on ceasefire progress days after Kushner visitAl Jazeera - Israeli strike reported to kill at least six in Gaza City)。

分析面では、チャタムハウスは8月上旬の分析で、7月末にハマスが受け入れた武装解除ロードマップについて「ハマスがイスラエルの本気度を試す賭けに出た」と評価し、これがイスラエルに履行圧力をかける可能性がある一方、双方とも実質的な譲歩を先送りし続ける公算が大きいと指摘している。同分析によれば、停戦発効時の10月時点でイスラエルはガザの約53パーセントを実効支配していたが、8月時点ではその範囲が約70パーセントまで拡大しているという(出典: Chatham House - By agreeing to disarm, Hamas is trying to call Israel's bluff in Gaza)。この分析は8月上旬時点のものであり、今週(8月17日〜23日)の最新動向そのものを扱ったものではない点に留意されたい。国際安定化部隊(ISF)については、米国が約70か国に部隊派遣を打診し、年内に1万人規模での展開を目指しているが、実際の展開はいまだ進んでいない。

レバノン・イスラエル(ヒズボラ)

イスラエル軍は8月21日未明、レバノン南部ナバティーヤ近郊のカフル・ルンマーンおよびアリー・アッタヘル高地に対する新たな空爆・砲撃を実施したと現地報道が伝えている。同高地はナバティーヤ市街とアクセス道路を見下ろす要衝で、イスラエル側はヒズボラの地下インフラが残存していると主張し、この数週間で繰り返し攻撃対象としている。6月に成立した米国仲介の停戦枠組みは、イスラエルの段階的撤退とヒズボラの武装解除を組み合わせる内容だが、どちらを先行させるかを巡って履行が停滞している(出典: Asharq Al-Awsat - Lebanon: Israeli Airstrikes, Artillery Fire Hit Ali al-Taher, Explosions Reported in South)。

シンクタンクのスティムソン・センターに所属するランダ・スリム氏は、レバノン側がヒズボラを交渉から排除した結果、「イスラエルはヒズボラが武装解除するまで撤退せず、ヒズボラはイスラエルが撤退するまで武装解除を拒む」という膠着に陥っていると分析している(出典: Al Jazeera - Why has Israel escalated attacks in southern Lebanon despite ceasefire?)。

スーダン(コルドファン戦線)

国連(UN)/国際移住機関(IOM)の集計として、8月20日時点でスーダン・コルドファン地方において戦闘激化に伴い20万人超が新たに避難したと報じられている。北コルドファン州ウンム・アラダ周辺での戦闘では、金曜日(8月14日)の衝突で十数人の民間人が死亡し、IOMによれば同地域から4200人以上が週末にかけて避難したという(集計期間: 2026年8月14日〜20日前後、出典: Al Jazeera - Over 200,000 people newly displaced in Sudan's Kordofan as fighting rages)。

Critical Threats(ISWと連携するアフリカ分析プロジェクト)の8月20日付分析「Africa File」によれば、RSF(即応支援部隊)はSAF(スーダン国軍)の最近の戦果に対抗する動きを見せており、同時にRSFの中央スーダン担当「知事」を含む幹部と部隊約300人がRSFから離反する動きも生じているという(出典: Critical Threats - RSF Counters Recent SAF Gains in Sudan: Africa File, August 20, 2026)。ACLEDは2025年12月の分析で、戦闘の重心がハルツームからコルドファンへ移ったことは、SAFが東部を、RSFが西部をそれぞれ実効支配する「東西分断」の固定化を象徴すると評価しており、コルドファンは中央スーダンとダルフールを結ぶ補給路の要衝であるためSAFにとって死活的な位置づけにあると指摘している(出典: ACLED - Fighting moves to Kordofan as Sudan's east-west divide solidifies)。この分析は2025年12月時点のものだが、今週の戦況はこの構図が継続・深化していることを示している。

緊張が高まっている地域

パキスタンとアフガニスタンの国境地帯(デュランド・ラインおよびクルラム、バジョール周辺)では、2025年10月以降、パキスタン軍によるパキスタン・ターリバーン運動(TTP)拠点への越境空爆と、アフガニスタン・ターリバーン政権による報復攻撃の応酬が断続的に続いている。チャタムハウスは今年3月の時点で「事実上の全面戦争に向かいかねない」と警告しており、両国は米国防総省系シンクタンクなどが指摘する通り、カタール・トルコ・サウジアラビア・中国が繰り返し仲介を試みても停戦合意が長続きしない状態にある(出典: Chatham House - Afghanistan and Pakistan are facing 'open war'. De-escalation is needed)。今週(8月17日〜23日)に新たな大規模衝突が専門機関から特に報告された形跡はないが、根本的な対立要因(TTPの越境拠点問題)は未解決のままであり、CFR(米外交問題評議会)のグローバル紛争トラッカーも南アジアの過激主義動向として継続監視対象に位置づけている(出典: CFR - Violent Extremism in South Asia, Global Conflict Tracker)。

和平・外交の動き

コンゴ民主共和国(DRC)政府と反政府武装組織「コンゴ川同盟/M23」(AFC/M23)は、8月17日から21日にかけてスイスで5日間の協議を行い、ドーハ・プロセスに基づく包括的和平合意の実施ロードマップに合意したと8月23日に発表された。協議には米国・カタール・トーゴ・スイス・アフリカ連合委員会の代表も参加し、履行状況を検証する専用メカニズムの設置や、停戦違反を報告する標準化された手法の導入で合意したという。もっとも、M23への制裁措置や拘束者の解放、政治改革の時期を巡る対立は依然として残っている(出典: 米国務省 - Joint Statement Between the Representatives of the Government of the Democratic Republic of the Congo and the Representatives of the Alliance Fleuve Congo/March 23 Movement (AFC/M23) on the Doha ProcessAl Jazeera - DR Congo, M23 rebels agree on roadmap for peace talks)。

ウクライナを巡る和平交渉については前述の通り、ジュネーブ協議が進展なく終了し、領土問題を巡る対立が交渉全体の停滞要因となっている。ガザについても、ハマスの武装解除ロードマップの詳細策定は7月末の合意から数週間が経過してもなお履行段階に至っていない。

参考リンク